デフォルト名:『小日向舞陽(こひなた まひる)』
「チカ君いる?」
聞き慣れない声に声が聞こえた方を見ると、見慣れない女性が扉から顔を覗かせていた。
女性の名前と彼女が呼び掛けた人物を考えながら声をかけようと立ち上がるのと同時に狡噛の声が彼が立ち上がる音と共に部屋に響く。
「ギノなら後でそっちに顔を出すっつってまだ戻ってないぞ」
「えー、なら行き違っちゃうかな。折角持ってきたのに」
そう言って顔を落とす女性の手元には何枚かのディスクと何冊かの紙の本。自然な動作で女性から荷物を受け取った狡噛は空いている椅子へと誘導する。
部屋の中を見渡すと、他の執行官達は二人の様子を伺うことなく仕事を続けている。誰なのだろうか。
様子を伺う朱に気付いたのか初めからそのつもりだったのか狡噛は振り返ると女性を紹介するように腕で指し示した。
「常森監視官、こいつは小日向舞陽。舞陽、噂の新任監視官の常森朱監視官だ」
女性、小日向舞陽は綺麗な動作で礼をすると微笑みを浮かべた。どこか親しみの沸く温かな笑みにつられて笑みを浮かべると慌てて礼を返した。
「常森朱です! よろしくお願い致します!」
思った以上に部屋に響き渡った声に自分で恥ずかしがりながら顔をあげると小日向は手に残っていたディスクを差し出す。
「刑事課庶務係の小日向です。備品関係や他に困ったことがあったらご連絡下さい。チカ君や慎也君で困ったことがあったら言ってくださいね。とっちめてあげますので」
しっかりと握手を交わしながら小声でぼそりと付け加えられた言葉に思わず笑みが浮かぶ。
「はい!」
「そこは返事をするところじゃないだろうが」
「元気があっていい返事じゃない」
「やはり来ていたか」
突如声と共に宜野座が部屋に戻ってきた。姿を認めると狡噛は彼をちらりと振り返り、小日向を顎で示す。
「ああ、ついさっき来たぜ」
「慎也君に渡すものもあったからついでに来ちゃった。行き違っちゃったね」
椅子から立ち上がろうとする彼女を手で制すると宜野座は小日向の前に立つとディスクを受け取り、それらのものに付随して渡された書類に目を通した。
「すまないな。先にそちらへ向かえば良かった」
「大丈夫だよ、ありがとうチカ君」
「悪いんだが俺は送っていけないから……」
「ああ、俺が行ってくる」
無言で狡噛を睨む宜野座と悪い笑みを浮かべている狡噛を見て困ったように笑うと小日向はゆっくりと立ち上がると朱へと顔を向け
「お邪魔しました。チカ君に苛められたら言ってね。叱っておくから。悪い子じゃないってことだけしっておいてね」
「……舞陽、俺はとっくの昔に子供ではないんだが。狡噛でいいから送らせるからさっさと帰れ」
犬を追い払うかのような動作にむっとした顔をすると先導する狡噛の後をついて最後に一礼すると部屋を出ていく。そんな姿を見送るとため息をつく宜野座を思わず注視する。
「相変わらず仲良いねー」
「茶化すな。さっさと報告書をまとめろ」
「恐い恐い」
「お友達、ですか?」
思わず口をついて出た質問にちらりと視線をやった宜野座は眼鏡をついと指で持ち上げると彼女と狡噛が去った扉を見やると、独り言のような小さな声で応えた。
「腐れ縁だ。幼馴染みで、同期でもある」
****
前回の劇場版の前に急遽はまってオンデマンドなどで一気に一期、二期と観た勢いで書いていました。
ぷらいべったーより再掲です。
[2回]
PR