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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

彩雲国七 夕

 庭の片隅に笹を準備され、華美でなく質素でもなくただ見る者の目を奪う華やかさがそこにはあった。

 毎年のように、気づけば頼む前に誰かが準備を始めてくれた一夜の行事。温かな家人達に囲まれて、有紀は星空に託す想いを短冊に綴った。




「うう、思いつかぬ……」

 彩雲国今上帝の紫劉輝は机案の前で頭を抱えていた。山積みにされた本や書簡に頭を悩ませているかのように見えるその姿に、側近である藍楸瑛は片眉を上げる。

「主上、今はその様に大袈裟に考えられる案件はなかったと記憶していますが?」
「違う……。そっちは後で……」

 楸瑛を見上げるために小さく上げられた頭に対して視線は横に逸れていた。跡を辿らなくともその先に誰が居るかは分かりきっていた。
 怜悧な眼差しは手元の書簡に注がれている為に成りを潜め、ただただデキル官吏の姿がそこにはあった。李絳攸である。
 徐に顔が上げられると彼は眉間に皺を寄せて自分を見つめる視線をにらみ返した。

「何でもありません」
「書き上がりましたか」

 何をだ。楸瑛は思わず心のなかで突っ込みを入れた。
 楸瑛の知る限りでは絳攸から劉輝に対して課題だとかの類いは今日は出されていない筈であり、近日が期日にされているものもない筈である。

「楸瑛なら何を書く?」
「……何に対してどういったことを書くとしたら、なのかをお伺いしても?」
「願い事を書くとしたら何を書く?」

 唐突すぎて答えに窮してしまった楸瑛は助けを求めるように絳攸を見た。

「今日は願い事を短冊に託して笹に吊るす日だ。主上から預かってこいと言われてる」

 有紀から言付かったのだろう。絳攸がこのような物言いをするときは幼馴染みの女官黄有紀柄みであることは間違いないということを楸瑛は最近覚えた。

「願い事を? 笹に?」
「楸瑛はまだ書いていないのか? 短冊ならまだ余っているから分けてやろう」

 劉輝は仲間を得たと言わんばかりの笑みを浮かべて楸瑛に何枚かの短冊を手渡した。
 事情が飲み込めないままに手渡された短冊に言われるがままに無難な言葉を綴った楸瑛は最後まで短冊の意味が分からないままであった。




 有紀は絳攸から渡された短冊の枚数に目元を和らげた。

「藍将軍も書いてくださったの?」
「いや、主上が押し付けていた」

 答が予想通りだったのか、有紀は笑いが堪えきれずにくすくすと声をたてて笑っていた。その姿に心の片隅で安堵を覚えながら絳攸は家人の先導で庭の片隅に置かれた笹へと向かう。

 星空の下、五色の短冊が揺れる。


***


スランプの中でちまっと書くとこんな感じになりました。

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薄桜鬼現 代パロ 019 :きょうだい


※薄桜鬼現代パロディで永倉と義兄妹設定の家族夢になります。

デフォルト名:皆川 恵実(みながわ えみ)





 突然ですが、お兄ちゃんが出来ました。



 母は女手一つで私を育ててくれた。暮らしは楽ではなかったけれど、たくさん愛情も注いで貰ったし、たくさんの幸せもくれた。たくさんの思い出も。

 私ももうすぐ中学を卒業するからお母さんももっと自由に生きて欲しい。卒業後の進路を相談した時にそのことをしっかりきっぱり伝えた。


 そんなことがあった春からひとつ季節が移ろった、高校受験を控えた夏休みの直前。



「恵実。お母さん、再婚しようと思うんだ」

 母から突然カミングアウトされた。しかも相手の人には私よりも年が上の男の子がいるらしい。

 私の返答にドキドキしているらしい母親の仕草に微笑みながら、私は小さく頷いた。

「お母さんが幸せになれる人なら」
「恵実ちゃんも一緒に幸せになれる人よ」
「なら、私は反対しないよ」

 ほんわりと嬉しそうな笑みを浮かべた母は、今からとても幸せそうで。苦労を表に出さないで頑張っていた母のその笑顔を浮かばせてくれた『お父さん』にとても会ってみたくなった。




「君が恵実ちゃんかな? はじめまして、永倉です。こちらが息子の新八」

 よろしくね、と握手をした『お父さん』はとてもハンサムで、母は面食いだったことが新たに発覚した。物腰も優しくて、とても気を使ってくれる人で何より母と微笑み合う姿がとても優しくて。




 そして夏休み前のテストが終わった日に新しい家に引っ越した。

 引っ越しといっても私も母も荷物はそこまで多くない。お父さん達もそこまで多くないからすぐに片付いてしまう量だった。
 ただ私は学校の教科書とかが入っている段ボールが重たくて二階に運ぶ為に階段の前で気合いをいれていた。

「よし!」

 腕捲りをして準備万端な体勢を整えて段ボールを担ぐ。若干重心がぐらついてふらつくけれど耐えられない程ではないからゆっくりと一歩一歩歩いていく。
 階段は短くはないけれど長くもない。だから一段ずつゆっくりと登れば踏み外す心配はない、筈。


「あ、おいおい。俺を呼べって言ったろ?」


 一段登ろうとした時、簡単に段ボールを持ち上げられた。私には頑張らないと持ち上がらないものが軽々と持ち上げられるのは彼しかいない。

「新八さん。えっとその……」
「遠慮はいらねぇって。これは部屋でいいんだな」

 私の答えをきかずに彼は段ボールを持っているとは思えない足取りで階段を登っていく。慌てて着いていくと彼は部屋の中で既に待っていた。早い。

「ここでいいか?」

「はい、ありがとうございます」
「いいっていいって。また重てぇ荷物があったら遠慮しねぇで言うんだぞ? 俺がちょちょいのちょいで運んでやるからな」

 にっと歯を見せて笑う姿は格好いいけど何故か爽やか系ではない。そのことが少し面白い。笑いを堪えながら頷くと満足そうにして彼は部屋を出ていった。

 彼は、私のお兄ちゃん、永倉新八は今年の春から高校の先生で働いているらしい。新社会人というやつだ。
 お仕事で忙しいと思われるのに、貴重な休日を使わせるのはとても申し訳なかったけど、体力は有り余っているとの自己申告により肉体労働を主に担当するということで合意されている。

 一人っ子だったからずっと兄とか姉が羨ましかった。
 だから突然出来たお兄ちゃんが凄く嬉しい。しかも格好いいし。
 『お兄ちゃん』って呼びたいけど、まだ少し勇気が足りないようで無難に『新八さん』としか呼べていない。

 急ぐつもりはないけど、いつか身構えないで自然とお兄ちゃんって呼べるようになりたいな、と思う。

 とりあえず、片付けをするにもまだ部屋に収納があまりないからお昼を食べ終えたら皆でお買い物に行く予定。お父さんとお母さんは書類とかの何かでまだ戻ってきていない。

 時計を見ると単短針が12時に近くなってた。
 お昼ご飯を作らないと、お昼なしになってしまう。だがしかし、台所用品は準備があっただろうか……。
 両親に電話で聞けば分かる筈だが、それより先に自分で見た方が早い気もする。分からなければ、兄に聞けばいいだろう。

 結論付けて一階に降りると、台所に既に人影があった。
 今家のなかにいる人物は自分と兄しかいない。

「新八さん……?」

 声をかけると彼は手に巨大なフライパン(中華鍋?)を握り締めて振り返った。

「おう、恵実ちゃん。今から昼飯作るんだけどよ、何か好き嫌いあるか?」
「大丈夫です」
「よし、好き嫌いがないことはいいことだ! ちょっと待ってくれな」

 にかっと笑うと手際よく何かを切り始める。

 誰かが台所に立つ姿を見るのはとても久しぶりな気がする。
 母と二人で住んでいた時は私がいつも食事を作っていたから、何だか新鮮だ。

 静かに弾む心に少し浮かれながら何か手伝うことはないかと、台所に回り込む。
 置いてあるのは、焼きそばの麺と、お肉と調味料。

 ……野菜は?

 鼻唄混じりにお肉を切っていく背中を見て、くすりと笑ってしまった。

「お兄ちゃん、野菜は?」
「おっとすまねぇ! えっと……ん? い、今恵実ちゃん……?!」
「キャベツと、人参と、んーと……」

 中身があまり入っていない冷蔵庫から適当に野菜を出していく。条件反射なのか、素直に受け取っていく兄はとりあえず野菜をざくざく切っていく。

 それにしても二人分にしては多くて、四人分にしてはちょっと少ない分量だけど、何人分作るのだろうか。でもお兄ちゃんはたくさん食べそうだからいいのかもしれない。

「っと恵実ちゃん、皿を出してもらっていいかい?」
「はい。二枚でいいですか?」
「おう。頼むな!」

 お肉を焼き始める音がして、食欲をそそる臭いもし始めた。
 台所から料理を作る音が聞こえるのが、こんなにも心が弾むのだということをはじめて知った。

 机の上を食事が出来るように片付けながら準備を整えていく。
 鼻唄が聞こえてくる台所を振り返ると私が出したお皿の上につけ分けていた。片方は山盛、もう片方は特大な山盛。もしかしなくても山盛は私の分だろうか。

「恵実ちゃん、これぐらいで足りるか?」
「……それの半分で」
「えっマジか! たくさん食べねぇとでっかくなれねえぞ?」

 心底不思議そうにしている姿はとても面白くて、片手に中華鍋で悩んでいくのがなんだか可愛かった。私の分の山盛を自分の分のお皿に乗せているけれど、あんなに食べれるのかと感心してしまう。

「美味しそう!」
「だろう? 俺の腕もなかなかなもんだぜ?」
「ねえ、新八さん」
「ん? やっぱり大盛にするかい?」

「お兄ちゃんって呼んでもいいですか?」

 目をぱちぱちと何度も瞬き、そして彼はにかっと満面の笑みを浮かべた。

「おう!」



 私、皆川恵実は今日から永倉恵実になります!



***


ツイッターでお世話になっているにあさんとスカイプでお話している最中にお聞きした、薄桜鬼の永倉との義兄妹話です。

引っ越し当日のお話書きたいなぁと思ってたら、なんだかネタが降ってきたので、勝手に設定をお借りしてしまいました。

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期間限定企画 『花は散れども』

デフォルト名:立花眞里





 吹きすさぶ風から痛さが取れると、雨が多くなった。それは春が運ばれてくる前兆である。
 花が咲き綻び、順々に様々な花が彩りを楽しませてくれる。

 一日を終えて、自主稽古をしていた眞里は呼び掛ける声に手を止めた。

「……暫しお待ち下さい」
「いや、出かける支度をしたら部屋まで来い」

 眞里の返事を聞く前に去る背中を見送り、暫し考えに立ち尽くす。
 しかし、考えても外出の用事なのだろうということしか思い当たらず、部屋に足を向けた。




 何故、こうなったのだろうか。
 眞里は疑問に思いながら促されるままに縁側に腰を下ろす。

 目前には月の光を浴びて、風に揺らぐ桜の枝。
 まるで、雪が舞い降りているようにはらはらと花弁が数枚風にさらわれていく。

「何だ、遠慮すんなよ? 土方さんの秘蔵の酒なんだ」
「……はい」
「ったく他の奴等も付き合い悪ぃな。……こんなにいい花見酒日和なのにな」
を飲み干すと、徳利に手を伸ばす。それを見た眞里は静かに徳利を持ち上げると、酌をする意を告げる。
 目を瞬くも、すぐに穏やかな笑みを浮かべた原田は盃をぐっと差し出した。

「もうひとつあるんだ。お前も呑むだろ?」
「頂きます」

 渡されるまま盃を受けとると、なみなみと酒を注がれる。香りを楽しむと、一口。
 感心したように目を瞬く眞里に原田はにっと笑みを浮かべた。

「だろ?」
「土方殿は何故に……」
「まあ、たまには花見酒でもしてろってことだろ」

 眞里は知らされていないが、永倉と斎藤、藤堂も土方から声をかけられていたが、何故か挙って用事があると断られた。原田が三人の行動にばつが悪そうな顔をしたのは眞里には秘密である。


「そういや、眞里は酒に酔ったことはないのか?」
「ありますよ」

 事も無げに答えると、ちらりと酒を舐めながら、昔を思い出す。
 酔うと手がつけられない、というほどでもないし記憶もある。だが、人様に迷惑をかけるのは分かりきっているために、江戸に来た時から酔うほど呑んではいない。
 才蔵と佐助と幸村はこの場合人様に含まれないので、心置きなく迷惑をかけることは告げる必要はないだろう。
 眞里の返答に原田はにっと口角を上げると、空になった眞里の盃に酒を注いだ。

「見てみたいもんだな」
「……辟易すると思いますよ」





***

ほ、ほのぼの……?

前々から、眞里が酔っぱらったらどうなるのかな、というのは考えてます。中々分かりません。

①才蔵に絡む。ゆえに、現在酔っぱらうと才蔵を探す
②御館様ー!! 叫ぶ。幸村と叫び合う。
③愚痴る。内容は才蔵と佐助のこと
④寝る

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薄桜鬼

※アニメ十八話より



連載では書けないのでこちらで。



 眞里は力が抜けそうになる身体を叱咤し、槍を振るった。


「我は武田が兵(もののふ)が一人、立花眞里なるぞ!! 我こそはと思わん者よ、尋常に勝負せよ!!!」

 たとえ相手が物言わぬ化け物であっても、述べる口上は変えるつもりはなかった。
 迸る熱気を刀身に乗せ、戦極ドライブを発動した。





 鳥羽伏見の戦いに敗れた幕府軍に従い、新選組は江戸へと舞い戻った。
 その後、朝廷を味方につけた薩長軍に追いつめられる幕府軍に代わり新選組は甲陽鎮撫隊と名を改め甲府城を守護に向かった。

 しかし甲府城は既に官軍の手にあり、新選組は圧倒的不利で奪還に臨んだ。けれど新政府軍は羅刹を多く従え、新選組を出迎えた。

 新政府軍の羅刹隊は新選組の羅刹隊と異なり、陽の下でも夜間の場合と遜色ない働きをした。即ちそれは、首を落とすか心の臓を貫かなければ倒れぬ不死身の軍隊であった。


 既に鳥羽伏見の戦いで多くの隊士を亡くし、新たに募った隊士は稚児にも等しく。

 惨敗を期し、撤退した。




 その後、永倉及び原田が離隊し、新選組は旧幕府軍が抵抗を続ける会津へと向かった。


 会津へ向かう途中、宇都宮城攻略戦前に、精供隊にて進行していた永倉と原田と再会した眞里は、翌日の宇都宮城攻略戦に参加した後、一人離隊し江戸へと戻った。



『新政府軍の羅刹隊の吸血行動のため、惨殺が起こるかもしれない』


 そんな話を原田に聞いた為であった。
 宇都宮城攻略には原田の姿は無く、彼はその話を眞里にだけに話すと一人江戸へと戻ったようだった。

 自分が持つ槍や刀は羅刹に効果があることを知っていた眞里は、原田やおそらくその場に居るであろう不知火の助太刀に戻ったのだった。




 多勢に無勢というべき状況に、眞里は久しぶりに戦場の迸りを覚えた。
 陽は落ち月明かりの下、羅刹隊と対峙する不知火と原田の姿を見つけると、眞里は羅刹の中に切り込んでいった。


「誰だ?!」
「助太刀致します……!」
「てめ、立花か?!」
「眞里、お前っなんで来た!!」

 羅刹の胸を貫き、刀で首を落とし原田と不知火の間に飛び込む。驚愕を露わにする二人に一瞥することなく、油断なく構える。

「私の刀と槍は羅刹に有効です」
「土方さんと行ったんじゃ……!」
「……江戸は、千鶴の故郷。蹂躙を許すわけにもいきません!」

 ぴたりと槍を綱道へと向ける。彼は苦虫を噛み潰したような顔で眞里を見ていた。

「貴方のその行いは千鶴を悲しませる。……私の士道に悖る行いは許さない。……いざ、推して参る!」

 綱道への道を塞ぐ羅刹を無情に切り捨てる。返り血で手が滑りそうになるのを確と握りしめる。

 理性を感情を無くした彼らは、どんな気持ちでいるかは知らない。望んで羅刹になったのか、羅刹にさせられたかも知らない。知りたくもない。
 眞里に出来ることは、殺戮によって彼らを眠りにつかせることだけ。

 だから、眞里は槍と刀を振るう。





「は、ハハハ……! このままでは済まさんぞ!!!」

 おぞましいほど居た羅刹の数も減り、視野も拓けていた。だからこそ気づけた眞里はそれを目にして瞠目した。そしてそのまま無意識のまま身体が動いた。


 疲労から動きが鈍っていた原田の背後、倒れていた羅刹が月夜に光る何かを手に微かに動いていた。


「左之助殿……!!!!」

 気付けば、呼ぶことを躊躇っていた筈の彼の名を呼び飛び出していた。


 眞里の声に振り返った琥珀色の瞳が驚愕に見開かれ、次の瞬間悲壮に染まったのを見て眞里は腹部を激痛が走ったのを確認し、同時に懐刀を投げつけた。

「っ眞里ーーっ!!」


 じわりじわりと染み出す赤を片手で抑えながら、槍を払う。眞里の腹部から滲み出る血に反応する羅刹を凪払うと、がくりと膝が地に着いた。

 こみ上げてくる血を吐き捨てて、腹部に巻けそうな布を引きちぎる。
 冷静に巻いていく手を誰かの手が上から止めた。

「貸せっ! 俺がやる!」
「原田、早くしやがれ!! 爺が逃げやがるぜ!」

 見上げると、原田が顔を歪めて眞里の止血を行っていた。
 その苦しみに歪められた顔を見て、ああ無事だったのかと心から安堵して眞里は微笑んだ。
 しかし原田はその笑みを見て焦りに手の力を込めて布を巻いていく。

「無事、でしたか。左之助どの」
「ああ……っ、お前はここで待ってろ」
「嫌です」
「いいから言うことを聞きやがれ! 血が止まらねぇんだよ!!」

 琥珀色が怒りと焦りに揺れるのを見て眞里は、やはり安堵しか浮かばなかった。
 布を巻き終え、眞里の肩を強く掴む原田の手に手を重ねると、眞里は原田の肩に額をついた。

「左之助殿」
「っなんだ」
「……お慕いしております」

 囁くような、状況に合わない穏やかな声で場違いなことを告げた眞里の言葉に原田の体が固まる。

 その間にするりと腕をすり抜けて、眞里は静かに立ち上がり不知火に追い詰められている綱道へと詰め寄る。

「っ眞里!!」
「綱道、覚悟!!」


 綱道が苦し紛れに放った砲弾が爆発し、辺りが煙にまかれたのを見たのを最後に眞里の意識は途絶えた。





 目を開けたとき、最初に目に映ったのは木目が粗く、汚れが目立つ天井板だった。


 指先はぴくりとも動かず、身体には重石でも乗っているかのような圧力を感じていた。思考もぼうっとしたまま働こうとする意欲が沸き起こらない。
 だが、鈍った頭で考えるのは意識を失う直前のことだった。

 無我夢中だった。
 がむしゃらに槍を刀を振るったのは久方ぶりで、どうなってもいいという想いを抱いたのも久方ぶりだった。

 そう、どうなってもよかった。

 眞里は鈍った頭で想う。

 自分は異なる時代を生きる者。
 町の女子のような生き方は知っていても出来ない。

 普通の町娘が願う幸福の夢と、彼が抱く幸福の夢は同じでも自分が抱く幸福の夢は違う。

 自分では彼が願う幸福を叶えることは出来ない。だから、彼が願う幸福の為に身を使うのに躊躇はなかった。


 躊躇はなかったというのに。

 再び木目の天井を見ているということは。


「私は……また死に損なったのか」

 敬する主君の元に行ければ、と願わなかったと言えば嘘になる。
 呟きを耳が拾い、その響きに安堵が滲んでいることに眞里自身が驚いていた。


「……お前は、死んでも良かったって言いてえのか」

 がらりと襖が開き、聞き慣れた声が落ちる。

 掠れている声の中に潜む怒りに眞里は疑問を抱く。
 なぜ彼が怒っているのか分からない。

 そう思っている間に彼はドスドスと畳を踏み、眞里の枕元に腰を下ろす。ついで何かを置く音が響き、水音がした。

 ひたり、と額に触れた冷たい感触に目を細める。

「気分はどうだ」
「……身体が重いです」
「当たり前だ。四日間眠ったままだったからな。……なあ、眞里」
「はい」
「何故、俺を庇った」
「…………」

 強張った声に考え込む。
 なぜ庇ったのか。それは無意識でもあった。だが、眞里の行動は眞里にとっては当然のもの。
 無言の返答に答えを見たのか原田は苛立たしげに髪をかきむしると荒々しい息を吐いた。そして、眞里の名を呼んだ。

 原田を見上げようと顔の向きを変える眞里の片手を取ると、きつく握りしめてその手を口元へと寄せた。強張るのを感じ取りながら拒否を許さない力強さで眞里の手を握り締める。

「眞里、お前は言ったよな」
「……何を、ですか」
「俺の夢を叶えるのに、助力するって言ったよな。……覚えてるか」


 掠れかけた荒い声に、京に居た頃を思い出す。
『惚れた女と所帯を持つのが夢』だと照れくさそうに笑う原田の話に、微力ながら助力すると答えた。
 京の娘との仲を取り持つのに、新選組の仕事で手伝えるものがあれば手伝い、時間を作るのを助力すると、そう言った意味で言ったつもりだった。

「ええ、覚えています」
「……なら、あのときの約束を今果たしてくれ」
「……今、ですか」
「ああ」

 ちくりと胸が痛む。
 彼は好い人が出来たのか。
 だが、助力すると誓ったのは眞里だ。誓った約束は違えない、それが眞里の誠である。

 こくりと小さく頷くと、原田は眞里の手を放し、眞里の両肩を掴んだ。

「原田殿……?」

 彼の綱道の意味が分からず、動きをじっと見つめる。
 整った顔が真剣な眼差しで近付き、目前に琥珀の瞳が見えたと思った次の瞬間、原田の目が伏せられ、唇に唇が重ねられた。


 驚きに目を見開き、身体が硬直している間に、原田は少し距離を離し、琥珀の瞳に眞里を映した。彼の顔は熱を孕み、しかし苦しげに歪められていた。互いの息がかかる距離に知らないうちに息を殺していた。

「俺の夢を叶えるには、お前がいないと駄目なんだよ。……頼むから、俺の夢を叶えると言ったお前が、違えるな。……もう、無茶だけはヤメろ」

 肩に押しつけられた、彼の悲痛な叫びに、眞里は思考を止めた。



**

つ、続きません。

最初は、原田さんを救済!!
みたいなノリで書き始めたら、逆に眞里が死んでしまい、境目で、と試行錯誤したらこんな感じに。

書き逃げ!!

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薄桜鬼 015 :遠く離れた

デフォルト:立花眞里



※連載終章後の設定で原田×眞里、沖田×千鶴描写があります。
※連載のネタバレになります。ご注意を。








 ふと、衣が舞う合間の空を見上げた。
 白妙の衣が映える青空で、雲一つない。

 幼い頃は空など見上げず、刃を握り前ばかり見据えていた。御館様の御為に。打倒佐助を掲げ、幸村と切磋琢磨した日々。

 ちらつく太陽の眩しさに目を細め、乾いた風に髪が靡く。

 こうして空を眺めるようになったのは、江戸に来てからである。それまでは空を見上げることはしなかった。

 気づけば、二百年先の世に居て。違和感ばかりの時代。

 けれど、眞里は武士として時代の移り変わりを駆け抜けた。ただ、それだけで満たされた。

 刃をふるうことが存在意義になっていた。何故、刀を振るうのかを忘れそうになっていた。そんな時に千鶴と出会い、年を挟んで新選組と出逢った。

 何故、刀を振るうのか。

 何かを守るために振るうのだということ。
 それは、民の命であり、平穏であり、誇りでもある。


「……御館様、眞里は今。刀を置いております」

 武士であることを捨てられない眞里が、愛おしいのだと言ってくれる人がいた。
 刀をおいても眞里であり、それは変わらないと。

「御館様はいつも私を案じてくださっていましたね……。ご安心ください」


 眞里が生まれた場所の先の世ではないが、空は同じだと思ったら眺めずにはいられなかった。がむしゃらにかけぬけた大地の上にあった空と、江戸の上に浮かぶ空は同じだと。

「おーい、眞里?」
「はい」

 呼ばれた名に振り返れば、室内から彼が顔を出す。下駄のままであるから縁側の傍まで寄れば彼も縁側まで出て目線を合わせるように屈む。

「どうかされましたか、左之助殿」
「ああ、そろそろ総司達が来るんだが俺は何を手伝えばいいのかと思ってな」

 どこか擽ったそうな笑みを浮かべる左之助に眞里は少し考える。


 幕末の動乱を生き抜いた眞里と左之助は、祝言を上げ夫婦となった。東北の街中に道場を構え、眞里は刀を置き奥方として振る舞っていた。だがたまに(たまにというが三日に一度)木刀を手に、左之助の門下生を叩きのめすときもある。

 そんな二人の元に文が届いたのは数日前で、差出人は千鶴であった。


「支度は整えてありますから、あとは迎えるだけです。お気遣いありがとうございます、左之助殿」
「……やっぱいいよな」
「左之助殿?」

 幸せそうな笑みに手招きされ首を傾げながら身を乗り出すと、力強い腕にすくいあげられあぐらをかいた彼の腕の中にいた。

「左之助殿?」
「……俺は、お前にそう呼ばれるのが好きだな」
「そうですか?」

 好きも何も、そう呼ばなければ返事をしてもらえなくなった為に必然的にそうなったのだが。
 抱え込まれた体制のまま目線を上げて左之助を見上げる。
 夕焼けのように見事な赤毛は、どこか懐かしさがこみ上げる。
 眞里の目が優しげに細められるのを見て、左之助は彼女が武田を思い出していることを知る。

 京で新選組として活動しているときから、時折寂しげに瞳を揺らしてどこかを見つめる眞里を見てきた。不自由な身であることに浮かべた色だと、そのときは思っていた。
 しかし、眞里の過去を知り。もっとたくさん知りたくなって、彼女を少しずつ知っていくうちに哀惜や郷愁であることを知った。
 奇跡が起こらない限りもう見(まみ)えることのない人々、踏むことない大地、交わることのない視線、交わすことのない刃。

 それらを贈ることは出来ないけれど、新しい幸せの形を彼女と築くことが出来ればと願った。


 願って、願って。そして諦めて。でも諦めきれずに願って。

 そうして手に入れたこの幸せ。この、眼差し。呼ぶ声も左之助のもの。


「……来年は、伊予の桜を見に行かないか」
「はい」

 優しさと幸せを浮かべた瞳に映るのが自分だということに幸福を感じる。



***


左之さんとのんびりほのぼのしてるのを書きたいなぁと最近思っていて。
本編はプロットを組み立てても中々左之さんが動かなくて……。というより左之さんが動かないと眞里は土方さんと一緒に蝦夷まで行って果てるか、斉藤さんと一緒に会津に残って果てるかしてしまうので。ようはキャラクターがそれぞれ動かないと薄桜鬼のノーマルルートを辿ってしまいます。

ほのぼの甘はかなり先まで行かないとかけないことに気づいたので、そんなときの小ネタ日記。とりあえず沖ちづです。
ただ千鶴ちゃんは斉藤さんルートでも良い気がします。

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