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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

真田さん家 バレンタイン話

 毎年恒例ながら、真田家はこの時期になると甘い匂いが漂う。


「麻都、助けてくれないかっ!!」

 この一言から、幸村は姉をかすがにとられてしまうために若干不機嫌になった。

 料理が基本的に苦手なかすがは、例によって菓子づくりも壊滅的に苦手なのである。
 意中の相手、真田家のご近所である上杉謙信はご近所の奥様に大人気なお料理教室を開いているほどの料理の腕前。
 「謙信様に恥ずかしくないものをお渡ししたい!!」という恋するお姉さんの頼みを無碍にできない真田家の主婦、麻都は二つ返事で頷いた。それもまた毎年の恒例となりつつある。

 毎日毎日特訓と称して数々のチョコレート菓子を作るが、かすがは何故か失敗の連続で、成功する麻都は何度も励まし続けながら新たに作り続ける。

 作られたお菓子はすべて幸村と佐助の胃に収まるが、麻都の作った菓子が好きな幸村は珍しく不機嫌顔で食べ続けていた。

「麻ちゃんのお菓子飽きちゃった?」

 チョコクッキーを一口で食べてしまうと佐助は幸村の口周りを拭ってやった。大人しく拭われる幸村は、何か気に入らないのかむすっとした顔をしてぽつりと呟いた。

「あねうえが……それがしとあそんでくれぬ」
「でもお菓子は作ってくれるよ?」
「……いっしょにだんごをつくるやくそくをしておったのだ」

 じと目は台所で落ち込むかすがを慰める麻都へと向けられた。
 麻都の周りを日頃ちょろちょろとうろついている幸村が、麻都に張り付いていられないことへの不満を募らせているようだった。

 当日になりようやくかすがはチョコクッキーを完成させ、麻都に感謝を尽くすと足取り軽く上杉邸へと向かっていった。

 ようやく姉にかまってもらえると思ったのか、幸村が麻都にまとわりつくのをどこか寂しげに見る佐助は楽しそうな笑い声に苦笑を浮かべた。


 かすがを見送り、大学から持ち帰った資料整理や家事をこなした佐助が昼過ぎに居間へと足を運ぶと幸村が目をきらきらと輝かせて座って佐助を待っていた。

 目の前にある机の上には少し崩れたデコレーションのされたチョコレートケーキが一つ。

「それがしがつくったでござる!!」
「へー、上手にできてるじゃん」
「あねうえにもほめられたでござる」

 ここ数日の不機嫌顔はどこへやら。幸村はご機嫌で台所に麻都が着席するのを待っていた。

「あれ? 片倉の旦那とか、ちか君には渡しに行かなくていいの?」

 本日は土曜日であり、麻都の通う高校は休みであり、朝から一度も家を出ていないので疑問に思った佐助はお茶を淹れながら振り返った。

「片倉さんとか、政宗君や、ちか君にもなり君にも、浅井君とか、市ちゃんにも昨日渡したよ?」
「さっすが、麻ちゃん。ぬかりないね! ……ところで浅井君って誰?」

 きらりと光る兄の瞳をきょとんと見返し、ケーキを切り分けるために持っていたナイフを机の上に置いた。

「市ちゃんは分かるよね?」
「分かるよ」
「市ちゃんの彼氏で生徒会長してるの。浅井長政君だよ」

 合い言葉は「正義の名の下に悪を削除する!!」である。部の予算案等で、悪と見なされた部活は部費がカットされるとか、されないとか。

「市ちゃんに彼氏かぁ……よく織田の旦那が許したね」
「彼氏っていうよりも許婚らしいけどね。詳しく訊かれるのが面倒だから彼氏ってことになってるみたい」
「おいなりさんでござるか?」

 キラキラと目を輝かせて訊いてくる幸村に一瞬黙ると、佐助はわしゃわしゃと弟の髪をかき混ぜた。

「さて、麻ちゃんと幸のケーキを食べましょうか」
「食べるでござる!」



***


こんなような話をヴァレンタインにアップしたかったんです
構成がうまくできません…
しばらくは思うように書けないかも

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真田さん家 君と見上げる空

 いくつか浮いた白いふわふわとした雲。

 一生懸命に手を伸ばす弟を微笑ましく思いながら麻都は広げたレジャーシートの上でお昼の支度を始める。

「あにうえ――! あちらはなんでござるか!」
「あれは、大きな滑り台みたいなもんだよ。乗りたい?」
「それがし、ひとりでもよい!」

 大きな目を力強く輝かせた幸村から、立て看板の注意書きに目を走らせた佐助はにやりと笑うと弟の脇下に手を入れて持ち上げると、肩に乗せて滑り台へと向かう。

「ざーんねんでした!大人と一緒に遊ばないと駄目だってさ」
「む……」

 兄の髪を無造作に掴むと、幸村は暫し考えて、後ろを振り返って麻都に手を振った。

「それがしあねうえがよいでござる!!」

 大きな岩が頭上に落ちてきたように、佐助はショックを受けた顔をした。がそのまま歩き続け、滑り台の頂上まで登ると自分の足の上に幸村を下ろした。

「麻ちゃんはお昼の準備してくれてるんだからダーメ」
「……む」
「それに幸は麻ちゃんには重いの」

 不満そうに膨らむ頬をつつくと佐助は滑り台を滑り降りた。
 佐助に対して機嫌を悪くしていた幸村だが、風を切る楽しさに不満を忘れたのか、続けて5回もねだり、流石の兄もつき合いきれず、「そろそろお昼だよね!!麻ちゃんとこ戻ろうか!!」と誤魔化すように、滑り台攻めから逃れた。


「流石の俺様も滑り台連続は疲れるわ」
「お疲れさま。でも兄さんも楽しそうだったけど」
「んーまあ楽しいかっていや楽しかったけどねぇ。それにしても限度ってもんがあるでしょう」
「まあそうだけど」

 お茶の注がれたコップを手渡すと、蝶を追いかけている弟を見た。


 桜が見頃だから、ピクニックがてら自然公園に行こう。
 そう言い出した兄に幸村が楽しそうに「行きたい!!」と同意し、「じゃあお弁当作ろうか」と麻都も乗り気になった昨日の夜。

 到着してからはしゃぎ通しの幸村はお昼を食べた後も全力で遊んでいる。
 そろそろ遊び疲れるかと思っても、止まることなく遊び続ける底なしの体力には兄姉揃って感嘆の声しか零れない。

「元気だねぇ、ゆっきー」
「帰りは爆睡だねぇ」
「久しぶりに三人揃って嬉しいのかな?」

 頷いて、芝生に勢いよく寝ころぶと佐助は空を仰いだ。思い切り伸びをすると、なんだか解放された気分になる。

「さーて、休憩したら3人で遊ぼうか」
「そうだね。明日筋肉痛になっても気にしない!!」
「そうそう。……って麻ちゃんは筋肉痛にはならないでしょう?」
「うん」
「え、ってことは兄さんのこと言ってる?え、俺様明日筋肉痛?!もう年ってこと?」

 がばりと身体を起こして、若干必死な形相な佐助から一歩離れると、麻都は「ゆっきー、ジャングルジム行こう!!」と声を上げて走り出した。

「え、ちょっ、麻ちゃん?!」




***

久しぶりすぎて書き方があれですが……真田さん家はネタがぽんぽん出てきます。
ハイジを見ていて、「真田さん家のゆっきーとハイジの年って同じだな」と思いました。

さあ、明日はバトルヒーローズが届く日!!!

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BASARA遙か 世界の中心にある泉

遙か3クロス戦国BASARA設定



 時折、たまらなく逃げたくなるときがある。
 なにから逃げたいのか分からないけれど、無性に逃げたい。でも対象が分からないためになにをどうすればいいのか分からなくて立ち尽くしていた。

「今思えば、『四神の神子』の役目から逃げたかったのかもしれない」
「何故に?」

 言葉に詰まり湯呑みの中を覗く。日本茶特有の淡い緑色に、渋い顔をした自分が映る。
 自分ごと呑み込むようにずずっと嚥下すると、言葉が蘇ってきた。

「大した役割を持っているわけではなかったんです。龍神の神子に四神の力を与えるには、四神が龍神を認めなければならなかった。だから私は横から補助でしか役に立てませんでした」

 だから逃げたかった。名前だけ大層なものを背負い、あまり役に立てなかった自分の役目から逃げたかったのだ。
 ぽつぽつと雨が降るように言葉を呟いた華織をじっと見ていた幸村は、ふと視線を天井へと向けた。
 規則正しい板目が広がっているのだけを見ると、再び華織へと視線を移す。

「華織殿は、忍を……佐助をどう思われますか」
「佐助さんを?」
「はい。真田では、忍隊は其たち侍の補助を受け持っております。陰ながら支えるだけの忍隊をどう思われまするか」

 ちらりと気を感じる所へ視線を遣る。そこで忍の誰か――おそらく佐助が聞いていようと華織の答えは一つ。

「忍だからと分けるのではなくて、忍隊も合わせて真田隊なのでは」
「といいますると?」
「上手くいえませんけど……、佐助さんたちが頑張っているからお侍の皆さんは安心して闘えるのでしょう? お侍の皆さんが頑張られるから忍の方々が補助に徹することが出来るのだと思います」

 華織の答えに幸村は満足した笑みを浮かべた。数度頷くと、残りの団子を頬張る。

「華織殿のご友人もそのように思っていらっしゃったのではないですか? 戦に直接携わらずとも、居るだけで心の支えになると言うこともございます」
「……そう、思っていてくれたんでしょうか」

 優しく微笑む幸村にふと、親友の言葉がよぎった。

 華織がいるから、私は安心して跳べる。

 疲れた微笑と、縋りつくような抱擁にいつも心を痛めてきた。だが、言葉通りだとすれば、幸村が今言った言葉でもある。

 今、堪らなく親友に会いたく思った。


(不思議な言葉でいくつかのお題2)

帰れない設定です。

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戦国BASARA  遙か3クロス3

 何度時空を辿ったのだろう。
 何度人がたくさん犠牲になったのだろう。

 問いつめても答えは出なくて、いつも華織は望美と共に悩んでいた。
 何度も悩み、何度も苦しみ、涙して二人がたどり着いたのは北国での平穏。

 ようやく元の時代に帰ることができると安堵した時だった。

『何とかなるって思わないと何とかならないんだってすごく思うよ。華織がいるとなんとかなるなって思ってた』

「のぞっ……」

 とっさに名前を呼び手を伸ばすが、届かない。
 清らかな救いを与える白龍の神子らしく、暖かな光に包まれて彼女は消えていった。


「っ……!」

 飛び起きると、板の目が美しい天井が目に入った。
 パサリと冷たい何かが手に落ちて思わずつかむ。冷たくはなく、むしろなま暖かい濡れ布巾。

 痛いほどの静寂に包まれた室内は、控え目に美しい調度品で飾られていた。
 聞こえないはずの声が耳の中で響いて消えない。

「……諦めたら、運命は変わらない。……か」

 手のひらの布巾がじんわりと温まっていく。感覚がなかった気がした四肢に血が巡っていく気がした。

「……そういえば」

 ここはどこだ。
 昨日まで寝起きをしていた平泉の屋敷ではない。
 布団で何故寝かされていたのか。よくよく見ると寝間着用の浴衣が着せられている自分の身体。

 ようやく意識を失うまでの記憶が蘇る。


 五行が滞った空気。あまりにも変わった格好をした人たち。(角のついた兜とか赤のジャケットを素肌の上に羽織っていたりとか迷彩柄とか大胆なレオタードとか)

 多数の怨霊達。

 そこまで思い起こした華織は膝を立てて顔を埋めた。思い出すと疲労を感じてしまう。

 八葉や神子がいない状態で浄化を行ったのははじめてだったが何とか成功したのは四神が札を通じて力を貸してくれたからだろう。
 ふと無意識に懐に手をやるが、当たり前のように札はない。

 さあっと血の気が引いていく。

 慌てて立ち上がるが思うように力が入らずに、くらりと座り込む。
 龍神の守護を受けぬ自分に加護を与えてくれた神々。
 時空を越えても札が繋いでくれると言われ、無理を言って譲って貰った四神の札。

「……っあれがないと」

 膝と肘を突いて畳を摺り歩き襖を目指す。
 とりあえず今いる場所だけでも把握すればいい。この土地と気が馴染めば札は気配を辿っていけば見つけることができる。

 あまり力の入らない身体に舌打ちをしながら襖に指をかけゆっくりと横に引く。

目の前に赤い着物が突然現れ、驚いて身体が硬直した。

 赤い着物をまとった人物も襖が開けられるとは思わなかったのか、手を伸ばした形のまま呆けた顔で華織をのぞき込んでいた。

 目が合うこと暫し。
 先に我に返ったのは華織であった。
 じりじりとにじりさがり身体の力を抜き畳に手を突く。なんだかどっと疲れた。

「っい、あ……。その……」

 動揺の滲んだ声がかけられ華織はゆっくりと顔を上げた。
 ばちりと再び目があった。

 端整な顔立ちに、茶の髪がひょこひょこと飛び跳ねている。襟足の髪だけが長く伸ばされ、尻尾のように揺れている。
 よくよく見れば整っている顔立ちは、某少年グループ(?)に所属していてもおかしくないほどだ。

 その整った顔を真っ赤に染めた彼は、はくはくと口を開閉させるが何も言葉を発しない。
 何かを言いたそうにしているのだが、初対面の人の言いたいことは残念ながら華織には読み説くことはできなかった。


「っも、……もうっ……」
「(…牛?)」

 彼は顔をこれ以上ないほど赤く染めるとかっと目を見開いた。

「申し訳ござらぬぅぅぅぅううう!!!」

 ドダドダドダドダと足音をたてて彼は走り去っていった。

 後に残された華織は、ぽかんとしたままその場に立ち尽くした。





 暫くの後、華織は着替えさせられて広い間に通されていた。
 当然詰問されると思っていたから別段不思議ではないものの、にこにこと笑みを浮かべる女中に優しく世話を焼かれ、今も温かいお茶とお茶請けを出され困惑中である。

「あの……」
「あら、こちらのお茶請けはお気に召しませんか?」
「あ、いえ大丈夫です」

 華織の答えに満足に笑うと、腰掛けた座布団の隣に掛け布を置いて最後に笑みを残して下がっていった。

「……ふう」

 ため息をつくと、とりあえずお茶だけ頂く。こういう時に不用意に飲むものではないと思いつつも、少し自棄が入っているために疑いもせずに飲む。
 目を閉じて精神を統一しても、五行は僅かにしか感じられない。

 元々流れる量が微弱なのかもしれないが、それにしても滞りすぎである。
 微かに穢れが混ざっているようでもある。

 龍神の神子のように穢れに敏感なわけではないが、強いわけでもないしむしろ弱い。
 奥州にいた頃、望美が倒れたのに華織がぴんぴんしていたのは四神の加護のおかげであった。
 けれど今は、加護を繋ぐ札がない。


 札は今、どこにあるのか。
 考えるまもなく札の気配が近付いてくる。

 同時に、堂々とした足音が複数近づいてきた。
 それに纏われている覇気に、龍脈の邪気が洗われていく。

 成る程と納得がいった。
 龍脈が穢れているのに穏やかな空気が流れている理由。


 襖を開いて現れたのは壮年の坊主なおじさまだった。
 後ろから赤い着物を纏った先ほど絶叫した青年が立っている。



「病人に無理を強いて悪かったの。だが、女人の寝間に近づくのはもってのほかと言われてな」

 呵々と笑いながら男性は、真っ赤になっている青年を見た。
 つられて華織が彼を見ると、彼の赤面は増した。既に茹で蛸のようである。何をそんなに真っ赤になる要素があるのかときょとんとして見つめていると、彼は突然膝に手を突いて勢いよく頭を下げた。ごんっという痛々しい音を立てて頭が床にぶつかって華織がぎょっとするも彼は気にしないようで、どでかい声量で叫んだ。

「先ほどは真、失礼いたした!!!!」
「え、私の方こそすみません?」

 自分でも何に対しての謝罪か分からず疑問系である。だが彼は気にしないのかそのまま続ける。

「佐助から目を覚まされたと聞いて、ご様子を見に行こうとしたのだが、あのように失礼を致して!!!」
「あ、あの。私は別に気にしていないので……」
「申し訳ござらん!!!」

 話が進まない。

 どうしたら頭を上げてもらえるのかと助けを求めるように上座に座る男に視線を向けると、彼はにやりと笑いゆっくりと立ち上がった。

「幸村!!」
「はっ」

 呼びかけに顔を上げた青年と見つめ合うこと暫し。
 男の腕が大きく振りあげられたことに再びぎょっとする。

「この馬鹿者がぁぁぁぁあああ!!!!」

 盛大に頬にめり込んだ拳によって青年は、閉じられた襖。庭に面している方へと景気よく吹っ飛び、室内から消えていった。

 言葉が出ないまま座り呆然としていると、笑顔を浮かべた男が再び上座に腰を下ろした。

「騒がせてしもうたな」
「いいえ……」
「まあ、まずは互いに名乗りを上げるとしよう」

 にこりと微笑まれた華織はその言葉に背筋を伸ばすと三つ指をついてそっと頭を垂れる。

「天河華織ともうします」
「ほう……。儂は武田信玄じゃ。この甲斐を治めておる」
「え……?」
「ん? おお、先ほどの若造は」
「お館様ぁ! 其、自分で名乗りを上げとうございます!!!!」

 聞き覚えのある名前に思わず声を漏らすも、青年の声に掻き消えた。

「其、真田源二郎幸村と申しまする。お見知りおきを」
「はい、よろしくお願いします」

 とりあえず名前が分かっただけでなんとかなるだろうか。
 日本史が望美ほどでないとしても苦手な華織でも、武田信玄は名前を知っている。戦国時代の武将である。ただ戦国時代のどの辺りかは分からない。
 本能寺の変が起こるよりも前に活躍した武将ということしか分からない。

「見ず知らずの私に、手厚い看病をありがとうございました」
「よい。聞けばそこの幸村を救ってもらったとか。恩人に礼をせずに放り出すような男ではない」
「はい。其、天河殿に窮地を救っていただいた恩を忘れませぬ」

 華織の記憶の中では、別に窮地を救った覚えはないのだが武士(?)というのはやはりそういうものか、と仲間を思い出して納得する。

「おお、そうじゃ」

 にこにこと懐に手を入れた信玄は四枚の札を手にして、目の前に置いた。華織の加護を受けている四神の札に違いない。

「札がそなたの元に帰りたがっておっての」
「札が…でございまするか?」

 どきりとした。まさか札に神の力が宿っていると知られてしまったのか。
 膝の上で握った手が、裾に皺を強く作った。

「そうじゃ。この札は、儂にではなく華織という娘に授けた尊き導。愛しき神子と神を繋ぐ大切な標故、娘の意識が戻り次第返してやって欲しいと」
「なんと! 札が言葉を話したのでございまするか?!」
「いや、佐助の烏が口をきいての」

 幸村が不思議そうに首を捻るが思わず華織も同じように捻ってしまった。
 なぜ烏の身体を借りて話すことができるのか。というよりも平然と受け入れてにこにことしている信玄の器量の大きさにも感服する。

「濡れておらぬ。曲がりはせぬで皆かなり怪しんでおったが神の力が宿るならば道理。元の持ち主に帰さねばならぬと」

 説得してくれたのだろう。ふつう、優秀な部下ほどそういったものは手元に置くか遠ざけるか進言するはず。
 それを押しのけて初対面の娘の持ち物を返した。もちろん弓は返ってこないだろうが、それでも一番大切な札が手元に戻ってきた。

 優しい視線に促され、華織は札を手にした。柔らかな気が指を通して身体に流れ込み、あたたかさに包まれた。

 指先の隅々まで浸透したとき、ようやく欠けていた一部が収まった。そんな安堵に包まれた。

「……有り難き配慮に感謝いたします」
「よい。では、おぬしの話を聞こうか」

 話とは、何から話せばいいのだろうか。
 現代から龍神に呼ばれたこと? 二つの時代に行ったこと? それとも己の役割のこと?
 ふつう、すべてを話しても信じては貰えないだろう。けれど、上座から笑みを浮かべて華織を見る信玄を見て思った。
 この人なら受け入れてくれるのではないか。大した根拠があるわけではないが、何故だろうかそう思える。

「私はこの時より約500年後のこの国で生まれました」
「ごひゃっ?!」
「よい、幸村よ話を遮るでない」
「はっ」

 視線で続きを促され、華織は口元に笑みを浮かべた。
 洗いざらい話せる部分だけ話してしまえ。そんな決意とともに口を開いた。

「17まで平穏に育ちました。けれど、冬の雨の日友人達とともに白龍……白き龍の神に喚ばれ、今より400年前の京に降り立ちました」

 ぽかんとした顔で華織を見る幸村に苦笑を浮かべ、動くままに言葉を連ねた。

**



細かい設定の説明話はカットします。

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真田さん家

 幸村は大きな目をこれ以上ないほど開き、不自然な動作のまま硬直していた。瞬きすることさえ忘れたようで瞠目したままである。

 いま、なにがおこったのだろうか。あまりの事態に幸村は、目の前のことが受け入れられなかった。

「Ah...Sorry.ゆきむら」

 一方、目の前に立つ少年――幸村の好敵手である伊達政宗という――彼は、幸村とは違い非常に罰が悪そうにして手元を見ていた。幸村とは賢明に目を合わせないようにしている。

「……ど」
「ど?」


 自分の手にあるものは、最初にきれいな赤い色をして嬉しさを一杯に貰ったものではなく、破れてしまい巾着袋としての機能を果たさなくなった、先ほどまで巾着袋だったもの。

「どうすればいいのでござろうか……」
「どうって……」

 どうすればいいのだろうか。

 そもそも、原因は政宗にある。そのために彼は何も言えなかった。

 あやまればいい。
 けれど、それは自分がすべきことで幸村がすることじゃない。

 そうこうしているうちに、幸村と政宗を呼ぶ声が聞こえた。 ビクリと肩を震わせると、おどおどとしながら帰り支度を始める。


 靴に履き替え、ノロノロと迎えが待っている場所へと向かう足取りは、二人揃って遅い。
 いつもならば我先にと駆けていく道のりであるが、足がゆっくりとしか動きたくないと言っているようで。


「ゆっきー?」
「政宗様、どうなされた」

 迎え二人の声がかかり、二人はまたも肩をビクリと過剰に反応させた。
 それだけで何かがあったと知らせるには十分で、お迎え二人……麻都と小十郎は顔を見合わせた。

「ゆっきー、おかえり」
「た、ただいまでこざる……」

 普段とは違う様子に首を傾げるが、隣の小十郎も同じような感じである。
 おどおどとしている幸村は、麻都のスカートの端を掴んで視線を下げている。その様子から察するに何か、『わるいこと』をしたのだろう。
 けれどぱっと見た限り、洋服を破いたとか、鞄を壊したとかではないのだろう。
 別に洋服を汚す程度では怒らないし、現に今も汚している。小さい子供は洋服を汚すのが仕事だと思っているので、何とも思わないのは兄と同じ見解である。

 じっと見られているのが分かるのか、幸村の体が硬直している。


 暫し考えるも、答えが見つからない麻都は幸村の視界に右手を差し出す。何を意図しているのか分かっている幸村も、おずおずと手を重ねる。

「じゃあ帰ろっか」
「うむ……」
「じゃあまた明日~」

 手を振った相手の小十郎と政宗もが手を振り替えす。けれど小十郎は怪訝な顔を露骨にしたままで、政宗は幸村同様に、かちこちに顔が強ばっていた。


 帰り道。いつもならば、毎日通る道なのにいろいろなものに関心を示して、寄り道ばかりするのだが。

「ゆっきー、公園行く?」

 首を横に振って否定される。

「あ、わんちゃん触ってく?」

 やはり首を横に振られる。
 首の振り方がちぎれそうなほど勢いがあるのではなくて、そっと悲しげに振られる。

 一体何をしたのだろうかと思うも、こういう場合は聞き出すべきなのか、それとも言い出すのを待つべきなのか。


(……まあ兄さんに任せよう。うん、そうしよう)

 こういった細かな部分は兄の方が適任だろう。
 いつも、家事の大部分を引き受けているのだからそれぐらい、いいか。
 なんて普段は思わないことを自分に納得させて、スーパーへの道を歩いた。




 そう大した量を買わなかったために早めに帰宅したのだが、幸村は一目散に自分の部屋(兄・佐助と共有)に駆けだしていった。
 いつもならば、玄関に荷物をおいて一目散にお隣さんに行こうとするのを麻都が止めるのだが。
 まるで麻都に荷物を触られると困ると言わんばかりに。

「……なに壊したんだろう?」

 まあ、いっか。と自己完結させると野菜やら果物やらを冷蔵庫にしまい始める。





 部屋に無事閉じこもった幸村は、廊下をじっと覗きながら麻都が追いかけてこないことにほっと息をついた。そして少し残念に思った。

 追いかけてきてもらえれば、勢いで謝れるからだ。

「……どうすればよいのだろうか」

 こんなことおやかたさまにそうだんできぬ。
 謝ってこい!と追い出されること確実だ。

 赤い巾着袋は、麻都が幸村に初めて作ってくれたものだった。
 大事に大事に使っていたのだが……。

 破れてしまったという事実に幸村は落ち込むと巾着を手に着かんで、兄のベッドに潜り込んだ。




「たっだいま~」
「あ、お帰り兄さん」

 コンロの火を消すと、コップに水を入れて佐助に渡す。受け取った佐助も、何事かと目を瞬くが小さく礼を言って飲み干す。

「なんかあった?」
「うん。なんかゆっきーの様子がおかしいから見てきて貰いたいの」
「幸が?」
「うん」

 そういえば、と辺りを見渡すが珍しく家の中が静かだ。
 毎日のこの時間は、庭で元気に遊び回っているか、お隣さんか、麻都のお手伝いに燃えているかしているのだが。

 水を打ったように静まり返った室内を見ながら、そういえば玄関に靴はあったな、と思いだし、そのまま視線は上を見据える。

「たぶん、何か壊したかしたんだと思うんだけど」
「んー了解。風呂洗ったら聞き出してくるわ」
「うん、お願いしまーす。お風呂は私が」
「俺様がやるからやっちゃだめだからね?」

 有無を言わさぬ笑顔で念押ししてくる兄に不承不承頷くと、キッチンに戻る。

「んじゃ、籠城戦攻略してきまーす」
「あ、夕飯はハンバーグです」
「了解」

 スチャッと手を挙げてそのまま風呂場へと向かう兄を見送る。そういえば最近は風呂洗いは幸村がやるお手伝いの一つだった。

 一体なにを壊したのやら。そんなことを思いながらミンチと繋ぎを軽快にこねた。デザートはなにがいいだろうか。罰と称して柿だけでもいいだろうか。そうしよう。
 とびきり甘い柿を剥こう。
 ハンバーグの形になったのを見てふうと息をつく。

「折角一緒に作ろうと思ったのになぁ」

 まあ、それはまたの機会でもいいだろう。
 フライパンが温まったのを見て、手を洗い拭うと油を敷くべくサラダ油を取り出した。





 一仕事終えた佐助が部屋の扉を開けると、幸村の姿はどこにもなかった。室内灯の灯っていない室内は薄暗く、足先に小さな何かがぶつかった。

 幸村の鞄だ。

 荷物を机の上に載せながら室内を見渡すと、自分のベッドがちんまりと膨らんでいた。
 すぐに正体が判明する。

 この小さな年の離れた弟は、何か悲しいこと。それも麻都に言えないことがあると佐助のベッドに潜り込むのだ。

 ベッドの空いたスペースに腰掛けると、ぎしりとスプリングが軋む音がした。

「幸?」

 もぞりと動き布が擦れる音がするが、返答はない。

「何やらかしたの? 麻ちゃんが心配してたぜ?」

 返答はない。

「なんか怒られることしたの?」
「………ね…が」
「ん?」

 もぞもぞと布団が動き、器用に頭だけを飛び出した弟の頭をくしゃりと撫でる。
 少し堅い髪質は、麻都とお揃いだ。

「……それがし…」
「うん」
「あにうぇー……」

 大きな目を悲しく滲ませた弟に、いったい何をやらかしたのだろうとぼんやり思いながら途切れ途切れに話される内容に耳を傾けた。

 なんとまあくだらない。と思ってしまいそうだが、本人にとってはとても重大なことなのだからそんなことは言ってはいけない。

「まあ、ようするに。ちょっと前に麻ちゃんが作ってくれた巾着袋に小さな穴が空いていて、思わず指をつっこんでみたら、政宗クンが引っ張っちゃって大きく破れちまったと」
「……そうでござる」
「で怒られると思って?」

 縦に振られると思われた首はゆっくりと横に振られる。
 そのことに思わず首をこてんと傾げる。

 ぼそりと呟かれた言葉に佐助の瞳が見開かれ、そして優しい笑みを浮かべて幸村の頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。
 小さな身体の脇に手を入れて持ち上げて腕に乗せると幸村の鞄も拾い上げてそのまま廊下へと出る。

「さっさと正直に話して、麻ちゃんに新しいの作ってもらいな」
「……む」
「ほら、行こう?」

 行こう。と問いかけてはいるがすでに佐助の足は階段に差し掛かっている。そのことに抗議するでもなく、幸村は小さな力で佐助の首筋にしがみついた。


 下に降りるとちょうど手伝い時であった。いつもならば我先にと駆けだしてお手伝いを言い出す幸村が、居心地悪そうに椅子に腰掛けてじっとしている姿は珍しいものだった。

「ほーら、幸。麻ちゃんに言わなくていいの?」
「……」

 もぞもぞとしたかと思うと麻都と目が合うとピシリと固まって下を向いてしまう。
 そんな反応を取られると、少し傷つくものだ。
 スープを注ぐ手はそのままに苦笑いを浮かべると、兄の手が伸びて注ぎ終わった食器が浚われていく。

「まーこればっかりは俺様からは何も言えないなぁ」
「ふーん?」
「まあ、食べ終わった頃ぐらいには言い出すんでない?」

 生返事をしながら、洗い場に溜まった器具を水につける。洗おうとスポンジをしごき始めると横からストップの声が掛けられる。

「洗い物は後でやるから置いといて」
「でも先に洗っといた方が後が楽だし」
「だーかーらー、俺がやるっての。麻ちゃんにはやってもらいたいことがあるから」

 暫く言われた意味が分からなかったが、何となく合点がいって渋々スポンジから手を離す。

 佐助に背中を押されて腰を下ろすと、テーブルの上にはすでにご飯もサラダも並べられていた。流石兄、いつの間に。

「ほいっ、じゃあいただきます!」
「いただきます」
「い、いただくでござる」

 ゆっくりと咀嚼しながら佐助の話に相槌を打つ。横目で幸村の様子を見るがやはり元気がない。
 いつも元気で溢れ返っているためなんだか物足りない夕飯だった。

 深くため息を吐くと、びくりと肩を震わせ目が零れ落ちそうな程に目を見開いた幸村ががばりと顔を上げた。そして立ち上がると、麻都の背中に抱きついてきた。最早タックルと呼ぶに相応しい勢いのそれに喉を詰まらせて噎せる。

「あねうぇぇええ!!」
「ちょ、幸。麻ちゃんが……!」
「げほっ、ごほっだ、だいじょぶ」

 幾度か咳をして喉の調子を整えて、机から一歩にじり下がると背中に張り付く幸村を剥がして膝に乗せる。
 泣きそうなほど目を濡らした幸村が、ひしっと首に抱きついてきて、えぐえぐとかみながら喋り出す。

 聞いているうちに、なんだか笑いそうになるのを必死に堪えて幸村の小さな背中をリズムよく叩く。

「ゆっきー」
「……はい」
「いつもなら『物壊すな』って怒るけど、反省してるみたいだから怒ることはしないよ」
「まことでござるか?」
「怒ってほしい?」

 ぶんぶんと勢いよく首が横に振られる。

「ならいいよ。ご飯食べ終わったら直してあげるか新しいの作ってあげるから」
「……うむ」

 にっかりと、先程まで泣きそうだったのが嘘のように明るく笑う。いそいそと膝の上から降りて自分の席に着くと元気よくごはんを かき込んでいく。

「よかったねぇ幸、ちゃんと言えて」
「よかったでござる」
「あ、でも今日のデザートは柿だけだから」
「そ、それがし、しょうじんするでござる!」


**
途中から完全にやる気がないです。

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