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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

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007:十字架 まるマ

デフォルト名:テリアーヌス卿セレスティア(愛称セレス)




 魔族というのは、有利が思うに美的感覚が少し一般よりもずれている。魔族というか、この世界一般にも言えることでもあるが。
 有利が「美形だ」と思うものも、彼らにとっても「美形だ」というが、有利が自分自身を「周りに劣る」と当たり前のように言うと「貴方が一番美しい」というのだ。


「だから、『おかしい』ではなくて、『少しずれている』になるのかしら?」
「そうそう。だって、……そう!ギュンターとかさ、あいつちょっと壊れ気味だけど、めっちゃすごい美形でしょ? 眞魔国でも美形ランキング一位みたいだし」
「今は『眞魔国一変態な美形』って噂らしいですよ?」

 あまり知りたくなかった王佐の呼び名に有利の顔が崩れた。
 くすくすと笑う相手、テリアーヌス卿セレスティアの揺れる銀色の髪をぼうっと見つめる。

「でも、俺は女性ではセレスさんが一、二を争うと思うんだけどなぁ」
「あら、ありがとうございます。有利。でも私はランキング外ですから」

 楽しげに細まる紫色の瞳に苦笑う。
 彼女がランキングに出ると、注目がいってしまう。それを厭う、彼女の恋人や幼なじみや兄が妨害しているためにランキングに載らないということを彼女は知らない。

 セレスティアに対して過保護すぎる、ゴットファーザー愛のテーマが似合う恋人は本日赤い悪魔に連れ去られている。なので、有利がセレスティアとテラスでお茶をする権利を得ていたりする。

 空になった有利のカップにセレスティアが静かにお茶のお変わりを注ぐ。小さく例を告げると、彼女の指で小さく何かが光った。

「あれ、セレスさんって指輪してたっけ? ネックレスにしてるのは知ってるけど」

 小指にはめられているのは小さな指輪。
 セレスティアは、有利と出逢ったときから少し大きな指輪をネックレスにしていつも首から下げている。今も、彼女の胸元を飾るのはそれだ。
 小指の指輪をそっと指先で撫でて、セレスティアは優しく微笑みを浮かべる。

「グウェンに貰ったんです」
「……あれ? でも、それも…」
「はい。これは、交換しているだけなのできちんと嵌められるものをと。グウェンが選んだそうですよ。想像すると楽しくて」

 確かに、あのグウェンダルがどのような顔をして恋人に贈る小さな指輪を選んだのだろうかと想像するのは楽しいかもしれない。だが、有利にとっては全く想像がつかず、何か見てはいけないものを見た気分になりそうで、想像できない。
 それを分かって言っているセレスティアに苦笑しか思い浮かばない。

 交換ということは、首から下げられているものは本来はグウェンダルの指に嵌められるものなのだろう。
 ならば、なぜ交換しているのか。

 不思議そうに指輪を見つめる有利の視線に気づいたのか、セレスティアはそっと手のひらに指輪を掬う。
 小さな手のひらに乗ると、指輪の大きさの不釣り合いさが目立つ。何の変哲もない、飾りがないシンプルな銀色の指輪。裏側に何か彫ってあるようだが、有利からは読み取れない。

「誓いなんです。二人の」

 そう言って浮かべられた微笑みは、どこか神聖さを纏っていて(魔族なのに)。有利は笑みを浮かべて「そっか」と言った。

「叶うといいね」




***

甘いのが書きたかったのにほのぼのとしたことに。グウェンもどこに……。

久しぶりに彼女です。
テリアーヌス・セレスティア
グウェンとアニシナの幼なじみでグウェンの婚約者。
結婚まで秒読みだったが、魔王の退位とか即位のごちゃごちゃで流れたまま。
現在はグウェンのあまりの忙しさに、セレスティアが落ち着いてからゆっくり。と言っているため、まったりとした婚約期中。

実は剣の腕と魔術の腕は眞魔国でもトップクラス。


描写する100のお題(追憶の苑)

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まるマ 七日目の真実

デフォルト名:テリアーヌス卿セレスティア(愛称:セレス)


 第二十七代、当代魔王陛下は今混乱の渦の中にあった。

 渋谷有利原宿不利……ではなく渋谷有利は、目の前の光景から目が離せなかった。

 心の声を代弁するならば『え、これってドッキリ?! ドッキリだよね! じゃなかったらあれって何?!!』

 である。ちなみに彼はトレードマークになってしまった眞魔国仕様の学ランを来たまま、垣根に体を一生懸命隠し、とあるところを凝視していた。

 はたからみれば不振人物極まりないが、有利を見つけた城の者達は皆が皆『陛下がまた何か新しいことをしていらっしゃる』と微笑ましい視線を投げかけて、見て見ぬ振りをしてくれている。ちなみに有利本人は全く気づいていない。

「ドッキリじゃないとしたら、あれか。家政婦は見た! みたいな?」
「それなら『有利陛下はみた!』ですね。陛下は家政婦ではないですから」
「あ、確かに。そうですよねーってコンラッド?!」

 突然増えた声に驚き尻餅をつく。
 声の主は「おや」といわんばかりに目をぱちくりとさせて有利を見ていた。

「どうかなさいましたか?」
「いや、その。何でいんの?」
「陛下が面白そうなことをしていらっしゃると聞いたので」

 その一言で自分が何人にも目撃されていたことを悟った。そして苦し紛れにいつもの一言。

「……陛下って呼ぶな名付け親」
「すみません、ユーリ。何をしているんで?」

 何か悔しさを感じながら有利は、しゃがみ込みながらコンラートを手招きした。
 言われるがままに有利と同じ姿勢になると、指された方向を見る。
 そこにあるものを見つけてコンラートは驚きに目を見張った。

「グウェンと女の人が一緒にいるんだけどさ、コンラッド知ってる人?」
「ええ、よく知ってますよ。…珍しいな、彼女が城に来るなんて」
「誰々? グウェンと仲良いんだよね?」

 銀色の髪を高い位置で結い垂らしている。グウェンダルとの身長差は相当なものだろう。
 生憎と有利の位置からはグウェンダルの表情は見えないが一緒にいる女性の表情から察するに和やかな空気ではあるのだろう。

「そうですね……。セレスティア・テリアーヌス。セレス、と俺たちは呼ぶのですが…。後何年かしたら義姉と呼ぶ人ですね」
「へー。……え?」
「さあ、覗いているとばれたら怒られますよ」
「え、ちょっ。ちょっと?! コンラッド!?」


(不思議な言葉でいくつかのお題2)

出歯亀隊です。

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まるマ(ギュンター)  砂漠の宝石

 それは、奇跡にも等しい巡り合わせ。





 眞魔国一美しいと評判の、現魔王陛下の王佐、フォンクライスト卿ギュンターを翻弄できる人物は多くない。


 真っ先に名が上がるのはもちろん彼が骨抜きの魔王陛下、渋谷有利陛下である。
 次に名が上がるのは前魔王陛下たるフォンシュピッツヴェーグ卿ツェツィーリエと赤の悪魔こと毒女ことフォンカーベルニコフ卿アニシナである。
 前述の陛下には頬ずりする勢いの王佐もこの二人からは裸足で逃げ出すとか。



 そして、三人に比べ知名度は低いが、彼をよく知る人物は皆揃って首を縦に振る者がいる。


 シャルロッテ・ティンダーリア……。
 現王佐補佐である。



「でもさ、俺会ったことないんだよな」

 どこで聞いてきたのか有利は、側近兼護衛役のコンラートにこぼした。
 美形ばかりいる眞魔国でも、人に優しい美男子である。

「そうですね、彼女はこの間から血盟城にはいないので」
「え、じゃあちょっと前なら居たの? 俺、会ったことある? ってかコンラッド知り合いなの?!」

 徐々に身を乗り出す彼を抑えてコンラートは柔和な笑みを浮かべた。

「落ち着いて下さい陛下」
「ヘーカって呼ぶなよ名付け親」
「はいはいユーリ。シャルロッテ……だいたいはシャールと呼んでいますが、彼女は俺の幼なじみなのでよく知っていますよ」
「ふーん……ってことは、ヴォルフラムも知ってんのか?」
「いいえ、ヴォルフラムはあまり面識はないはずです。むしろグウェンダルの方がよく知っていますよ」
「ぅええ?! その……なんとかさんって顔広いんだなぁ…」
「シャルロッテですよユーリ。彼女は貴族だろうと誰だろうと自分の名前を間違われることを何よりも嫌いますから」

 決闘申し込まれますよ。と朗らかに恐ろしいことを言うコンラートに有利は口の中で何度もシャルロッテ、シャルロッテと呟きはじめた。


「…よしっ。でそのシャルロッテさんは何でいないの?」
「ああ、使いものにならないギュンターに愛想を尽かして忙しいグウェンダルの補佐に行っています」

 それって、俺のせい?という有利の呟きに微笑むにとどめたコンラートだが、むしろその行動によって肯定していた。

「彼女は武人ですが、俺なんかよりよっぽど事務補佐に役に立つんですよ」
「……だからグウェンダルとお知り合いなのかー」

 まあ、他にも事情はあるんですけどね。というコンラートの呟きは有利の耳には入らなかった。

「……で、俺他にも何か訊いたっけ?」
「ええ。彼女とユーリは面識はまだ無いはずですよ」
「ちぇっ」


 がっかりしたように有利は机につっぷすと、傍らに山のように積まれた書類の一枚をめくった。
 ひらひらと振るとがっくりとうなだれ、恨みがましい視線をコンラートに向けた。

「はぁー。ギュンターはどこに行ってるわけ?」
「どうでしょう。いつもならシャールがうまく仕事をさせるのですが、今居ませんし……。ちょっと俺には」

 わからないですね、というコンラートの苦笑とともに告げられた言葉は、廊下の奥から聞こえた荒い足音と奇声にかきけされた。


 それを耳にした二人は有利はげっそりとし、コンラートは苦笑いを強めお互いに視線を交わした。

 同時に、有利の執務室の扉が勢いよく開かれた。

 同時刻に有利は予想される大声をふさぐために耳を両手で覆った。


「シャルロッテ!?」

 けれど、聞こえたのは「陛下!!」という聞き慣れたものではなくて、声は同じでも呼ぶ名が違った。

 そのことに気づいた有利は耳を覆っていた手を外しながら、つかつかと優美にけれど荒々しくコンラートに近づく王佐をみた。

「コ、コンラート! か、か、かか彼女を見ませんでしたか?!」
「いや、俺もここ数日見ていないよ」

 掴みかからんばかりの勢いのギュンターから後退することなくコンラートは爽やかに笑って見せた。

 全く彼らのやりとりの意味が分からなかった有利は、麗しい王佐が額に手をやり憂いの表情を帯びさせつぶやいた言葉で事態を察知した。


「気づいたらシャルロッテが居なかったのです。いつもならば、遠出するなら数日前に私に知らせて下さるのに今回は何も……っ」

「あれ、コンラッド。シャルロッテさんって……」

 先ほどコンラートから聞いた情報を尋ねようとすると彼は有無を言わせない笑顔で有利の言葉を遮った。


「ええ、だから俺もここ数日はシャールを見ていませんよ」


 黒い! 笑顔が黒い! 有利は思わず鳥肌が立った腕をさすった。

「ああ、シャルロッテ……。どこに行ってしまったのでしょうか……」

 嘆くギュンターはまるで恋人を捜す男のようで思わず有利は視線をそらした。




 一方、ヴォルテール城では一向に減らない書類仕事に城主の血管ははちきれる寸前だった。

「閣下、そろそろお休みになって下さい」
「……あの馬鹿が仕事をしないせいで私は領地の仕事ができないではないか!」

 どうなっていると怒鳴らんばかりにかっと目を見開くとグウェンダルは苦笑いを浮かべて書類を整えるシャルロッテをみた。

「だいたいお前があの王佐をだな」
「ええ、たしなめても仕事をして下さらないので国のために閣下のお手伝いに参りました」

 おじゃまでしたか、と笑うシャルロッテにグウェンダルは思わず口を噤む。
 魔王が代替わりしてからはバリバリと王佐として手腕を発揮するはずのギュンターは使えず、なぜかグウェンダルに仕事が回されてきていた。
 王佐を支えるはずだったシャルロッテはギュンターを見捨ててよくグウェンダルを手伝いに訪れていた。


 休憩に、とお茶を入れるシャルロッテを見ながらグウェンダルは今頃血盟城で大騒ぎをしているだろう王佐を思い浮かべた。
 今は全く使いものにならないが、だが埋もれていたシャルロッテを見つけだし、文人としての能力を磨いたのは彼である。

 グウェンダルの弟、コンラートに剣の指導を施したのもギュンター。
 シャルロッテに書類整理の能力など、補佐としての能力をつけたのもギュンターである。


 砂粒から砂金を見つけるのは得意なのに、なぜそれを帳消しにしてしまうほどのだめっぷりなのだろう。


 シャルロッテの頭を撫でたい衝動をこらえながらグウェンダルはお茶を礼を言って受け取った。




(不思議な言葉でいくつかのお題)


ようするにギュンター→シャルロッテみたく

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まるマ 懐に感じるぬくもり

グウェンダル夢?



 時は26代魔王、フォンシュピッツヴェーグ卿ツェツィーリエの時代。
 戦火は広がり、ついにテリアーヌス卿セレスティア率いる隊にも出動命令が下った。

 そのことに何よりも最後まで反対していた者は魔王陛下たるツェリとその息子達とアニシナだった。
 だが決定事項とされたその命令を苦しむツェリから承けた時、セレスティアの心は穏やかだった。



 出陣の挨拶に赴いたセレスティアにツェリは涙ながらに謝った。


「許して頂戴。いいえ、そんな甘いことを言えないことはわかってはいるわ。でも、でも……っ」
「陛下……」
「んもうっツェリって呼んで頂戴!」
「ツェリ様、よくお聞き下さい」

 ツェリと対して変わらない背丈のセレスティアは肩に顔を埋めていたツェリを真っ正面から見据えた。

「私は誰も恨んでいませんし、憎んでもいません。私は軍人です。軍人である以上、国を守るために全力を尽くします。大切な人の住む国を守るためには命も惜しくない」
「セレス!」
「ですが私は命を粗末にするために赴くわけではありません。だからこそツェリ様にお願いがあります」

 美しい翡翠の瞳に涙をためるツェリにセレスティアは穏やかに微笑んだ。

「祈って下さい。戦が終わるよう、無駄な犠牲が出ることのないように」




 泣き崩れてしまったツェリを付き人に任せるとセレスティアはその場を去った。


 厳かな空気漂う血盟城の廊下を静かに歩き続ける。
 忙しなく人が行き交う公の場と、魔王とその家族の住まう私的の場の区切りにさしかかるとその足を止めた。

 ツェツィーリエの次男、ウェラー卿コンラートは今、ウィンコット領にて剣術指南をしている。
 三男フォンビーレフェルト卿ヴォルフラムも今はビーレフェルトに居る。
 そして、長男フォンヴォルテール卿グウェンダルはこの奥にいるはずだった。
 十貴族の長の一人として、軍事会議に出席しているからである。

 明日には戦地に赴く準備が始まるために挨拶しておきたい人物ではあったが、幼い頃共に過ごしたときとは違い彼にはセレスティアが理解することのできない大きな責任と重圧を背負っている。
 そんな彼に一軍人でしかすぎないセレスティアが挨拶に行ってもいいのだろうかと戸惑いが生まれていた。

 アニシナにも肉親にも友人にも挨拶は済ませた。あとは彼だけ。

 石畳を右に行けば、彼の私室へと。左に行けば、ぐるりと城を回り入り口に。

 誰も通らない廊下の真ん中でセレスティアは石畳を見つめていた。


 だが、結局彼女の足は左へと向かった。


 忙しいグウェンダルの時間を自分のようなただの幼なじみに裂くのは忍びないし、迷惑だろうと結論づけたためだ。

(グウェンから見れば、ただの幼なじみだもの……)


 自嘲し、心の内でぼやくとほんのりと胸の奥がつんとした。


 誰とも会うことなく城の入り口に着いた。
 血盟城内に部屋を賜ってはいたが、どうしても行く気になれなかったために夜まで城下で過ごすつもりだった。

 明日は朝早い。
 もう懐かしい人と会うこともないのだろう。そう思うと少し寂しかった。



(……グウェンに、会っておきたかったな)

 また自嘲した時、廊下の奥から荒々しい足音が聞こえた。
 同時に、大好きな低音の叫び声が聞こえた。


「セレス!! セレスティア!!」

 思わず足が止まった。

 立ち止まったセレスティアを見て声の持ち主は足を止めることなく走り続けた。
 もう一度、今度は静かに名を呼ばれセレスティアは後ろをゆっくりと振り返った。

「閣下……」

 視界に入ったのは深緑色の軍服に剣とベルト。
 ゆっくりと見上げれば、黒に近い濃灰色の長い髪と深い海のような青い瞳。
 冷たい印象を与える彫りの深い顔の眉間にはこれ以上ないくらい深い皺が寄っていた。

 同い年で幼なじみのフォンヴォルテール卿グウェンダルである。魔王陛下の長男である王太子たる彼はヴォルテールを治める長でもある。

「閣下と呼ぶなと何度言えばわかる」

 眉間のしわはそれが原因らしい。

「……ごめんなさい、グウェンダル」

 曖昧に笑うこともできずに俯くと大きな手がセレスティアの顔に添えられクイと上を向かされた。
 見上げると悲しさと、怒りが混ざった青い瞳が目に入った。

「……どうして私には会っていかいないのだ」
「……忙しいと思って」
「私はっ!……私は一言おまえに言わなければいけないことが」

 言葉を遮るようにセレスティアは背伸びをするとグウェンダルの唇に人差し指をあてた。

「あなたが謝る必要はないわ。私が出陣してはいけない理由があるわけではないのだから」
「……」

 何か言いたそうなグウェンダルの視線を無視してセレスティアはしゃべり続ける。
 見た目と反比例するグウェンダルはセレスティア知る限り誰よりも優しく、誰よりも国の安寧を願っている。
 そんなグウェンダルに自分のために悲しい思いを、つらい思いをさせたくなかった。

「私は争いは嫌いよ。だから戦いに行くわ。あなたは、無駄な犠牲を出さないように采配を」
「……っだが」
「このまま酷くなれば、“彼ら”はいらない誹謗中傷を?%E:221%#ッて絶望的な場所に送られてしまう。あなたの大切な弟がよ?それでもいいの?私はいやよ」

 優しくもあり不器用な彼は、すぐ下の弟を血など関係なく愛していることを知っているからこそ。

「ありがとうグウェン。最期に会えて良かったわ」

 背伸びをやめて、そっとグウェンダルから離れたセレスティアは穏やかに微笑んだ。
 それがなぜか最期の別れのように見えたグウェンダルは思わず腕を伸ばした。

 優しくではなく痛いほど抱きしめられたセレスティアは彼が泣いているように感じた。

「……必ず帰ってこい。生きて帰ってくるんだ」
「……ええ」



(不思議な言葉でいくつかのお題)

気づいたらすごく長くなりました。愛故ということにしておいて下さい。
原作>マ王!ではありますが、話の展開的にマ王!の方が書いていて平和になりそうです。
断然原作派ですが、書くならマニメ……。

原作っぽくつけるならグウェンダル夢が「マのつく風と共に」で、ギュンター夢は「あなたとマのつくワルツを」
的な副題です。本題にすると面倒そうなので。

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まるマ(ギュンター) 世界に色がつく

 戦い抜くには、長い髪なんかいらない。
 昨日の敵は今日の友。そんな言葉なんか通用しない。


 あの戦争が終わるまでは、ずっとそう思っていた。




 ヒョコヒョコとゆれる橙色の髪を見つけて、シャルロッテはため息をついた。人物にではない。勿論、その髪の持ち主である彼とは幼馴染で、かつての戦友でこれ以上ないくらいの親友だ。
 ただ、彼には問題点が一つだけあった。


 声をかけようかと戸惑っていたシャルロッテの気配に気づいたのか、前方を歩いていた“彼”は振り向き、そして満面の笑みをその顔へと広げていった。

「いやだ~、シャールじゃないのぉ。居たんなら声かけてよねぇ~?」
「・・・ヨザ」

 しなを作ってかけられた声。ジャジーな声で、普通にしゃべれば結構かっこいいのにと思っているのに、その口調でしゃべられると脱力してしまう。

(いつものこといつものこと・・・!!)

 シャルロッテは心の中で暗示をかけて、力の抜けた肩に再び力を入れようとした。ゆっくりと顔を上げると見ないように努力していたソレが目に入り、完全に力が抜けた。

 思わず地面に座り込むシャルロッテにあわせるようにヨザ、と呼ばれた“彼”も座り込む。

 手で顔を覆うシャルロッテの視界の端には、白のフリフリのレースの前掛けが。

「・・・ねぇ、ヨザ」
「なーに、シャールちゃん」
「今は何のお仕事中なの?」

 諜報だと答えてほしい。そう願いつつも、ここは彼とシャルロッテが使える主、フォンヴォルテール卿グウェンダルの有するヴォルテール城。
 特に不穏な噂を聞くわけではない今この時期に、諜報活動を行う必要性は感じられない。

「いやぁねぇ。今はグリ江の趣味の時間よぉ」
「グリエ・ヨザック・・・!!」
「はい!」

 思わず名前を叫び、立ち上がると反射的に“彼”もシャルロッテの行動に倣ってしまう。

「何で、お前はそんな趣味に走るんだ!!!」
「え、だって・・・。なぁ?」
「なぁ? じゃない!」

 シャルロッテの前で、居心地悪そうに頬をかく彼。ヨザ、自称グリ江こと、グリエ・ヨザックは剣を持つものなら誰でもあこがれる体格の持ち主である。
 見事な上腕二等筋に、あのルッテンベルクの激戦を生き残った所謂『ルッテンベルクの英雄』でもあり、何よりも大シマロン時代からのシャルロッテの大切な幼馴染である。

 だが、その戦争が終わった後、ヨザックは配属先が今のフォンヴォルテール卿貴下へと移り変な趣味が増えた。

「でも、似合うだろ?」

 そういって、くるりと回るとふわふわとしたラインの服のすそがゆれる。不気味なはずなのに、何故か見過ごしてしまうほどの違和感のなさ。


 グリエ・ヨザックは女装の趣味が増えてしまった。

 もう一人の幼馴染である、ウェラー卿コンラートはその趣味を苦笑いで受け入れているが、シャルロッテはどうしても受け入れられなかった。

 別に、反対しているわけではない。でも、どうしても見たくないのだ。
 こぶしを握り締めると、シャルロッテは思わず踵を返し、走り出した。
 もう、先程までの予定など気にしない。

「あ、おい。シャール! どこいくんだ?」
「閣下の所よ!! 今日こそは配属先をここから向こうに変えてもらうんだからーーー!!!」
「なっ! おい、待て!」

 ヨザックが慌てて追いかけるが、追いつく頃にはもう既に彼女は閣下の部屋へと飛び込んでいた。




 ノックと同時に飛び込み、シャルロッテは目当ての椅子に目当ての人物が座っているのを見て、目を輝かせた。

「閣下!!」
「・・・入る前に、了承ぐらい取れ」
「今はそんなのどうでもいいんです!」

 泣く子も黙る重低音に窘められるも、今のシャルロッテには糠に釘。
 グウェンダルが誰かに応対中だろうと、もう関係ないのだ。
 誰かがシャルロッテを落ち着けようと肩に手を置くが思わず彼女は振り払う。

「・・・用件はなんだ」
「今日こそ言わせていただきます! あの男の所業は許せますが、もう見ていられません! 配属先を変えていただきたく存じます!!」
「シャール!! ちょっと待て!」

 懐から出した、前から出そうと思っていた願書を机に叩きつけると、先程開け放したままだった扉からヨザックが飛び込んできた。
 
「うるさいわね! もう、アンタのそんな格好見たくないのよ!!」
「な、俺様の麗しい女装をそんな呼ばわりとはいただけないな。って、んなことよりもどこに行くってんだよ! お前みたいなじゃじゃ馬、受け取ってくれるのは閣下ぐらいなものだろ!」
「何よ、じゃじゃ馬って! ええ、じゃじゃ馬ですよ! それがどうしたってんのよ! 警備兵ぐらいならこれぐらいが上等でしょ!?」

 ギャーギャーとわめき始めた二人を見てグウェンダルはため息をつき、眉間のしわを指で押した。

 ヨザックの提案にのったせいで、いらない兵士達の面倒を見ているが何故か彼らはそこらの兵士達よりも使えるから助かっているのが現状である。
 しかも、その兵士達を纏め上げているのはヨザックとシャルロッテ。
 ヨザックは奇行に目を瞑れば、どんな場所にも赴く諜報員として今メキメキと腕を伸ばしつつある。
 そして、シャルロッテは小さくてチョコチョコ動く割に、剣はかなり腕が立つ。何より、小さい。

 グウェンダルが隣に立つと、胸元に届かない程小さい。
 肩元でゆれる淡い緑色の髪と、少し大きめの瞳。
 容姿はばっちりとグウェンダルの好きな「小さくて可愛いもの」の分類に入る。

 手放したくない人材である。(私情入りまくり)


「あー・・・。グウェンダル? お話を戻してもよろしいでしょうか?」
「・・・後にしろ」

 やかましい喧嘩の内容だが、少しだけ興味のある話題へと移っていた。

「んだよ、向こうに行きたいってお前、抜け駆けするつもりかよ!」
「誰がよ! 抜け駆けするも何もコンラートは所属部隊持ってないんだから部下になれるわけないでしょ!? そもそもわたしはコンラート目当てじゃないわよ!」
「じゃあ、何でここから離れたいんだよ!」
「だから言ってるでしょ!? アンタのその奇行を見たくないからよ! やりたいなら好きにすればいいわ。わたしは止めないから! でも、見たくないのよ!」

 話題がコンラートからまた戻ってしまった。
 また深くため息をつくと、グウェンダルは低い声で二人の名を呼んだ。

 だが、聞こえていないようだった。

 シャルロッテの説得は諦めたグウェンダルは、接客していた相手を椅子に座りながら見上げた。
 すみれ色の瞳を、楽しそうに和ませている彼はグウェンダルの視線に気づき、喧嘩の二人から彼へと視線を戻す。

「で、お話を続きをしても?」
「・・・・・・ああ」
「続きというか別件なのですけどね。実は、コンラートがしばらく旅に出るから自分の代わりに誰かを頼むと言い残していまして」
「待て、旅にだと?」

 お兄ちゃんは聞いていない。
 眉間にしわを寄せたグウェンダルに笑いつつも彼は話を進める。

「そこでいい人材なら貴方がご存知だと思いましてね」
「・・・奴の代わりになる者か・・・」

「そもそもなんでルッテンベルクの生き残りって、ヨザもコンラッドも含めて変人が多いのよ!」
「お前、自分がその中に入っているってーこと忘れてねぇか?」
「うるさいわね! わかってるわよ! ・・・て、わたし変人? 閣下、閣下。わたしって変人ですか? ヨザよりも?」

 持ってきた話と全く違うが、答えにくい内容にグウェンダルは言葉につまった。
 しかも、上目遣いで見られると「変人」だと思っていても「変人」とは答えられない。

「・・・・・・っ」
「閣下!」

 しかもシャルロッテは今はまだ数少ないグウェンダルの『こども』たちの里親である。機嫌を損ねることは言えない。しかも、嘘を簡単に見抜く彼女を騙すことは難しい。
 答えを待ち続ける彼女から懸命に視線をそらすとグウェンダルは助けを求めるように来客を見た。

 それとなく婉曲した答えを言ってほしい。

 グウェンダルの意図を読んだ彼は、微笑んで床に膝をつくとそっとシャルロッテの肩に手を置いた。

「大丈夫ですよ。貴方は彼ほど変人ではありません」
「おい、ギュンター!」

 婉曲どころか、直接的である。

「おや、ですがシャルロッテは嘘は嫌うと聞きましたよ?」
「う、だが・・・」

 心配そうにぐうぇんだるがシャルロッテを見ると、何故か彼女はほっとしていた。
 変人であるのは認めてもヨザックよりはマシという言葉に心底安堵しているようだった。

「閣下、ありがとうございます」
「いえいえ」

 ほっとしたシャルロッテは今更ながらにグウェンダルの客を見た。

 美しい艶を放っている銀髪。知的そうなすみれ色の瞳。全てにおいて整っている顔立ちを引き立てるように、さらさらと流れ落ちる髪。
 全体的に白を貴重として仕立ててある僧服。

 フォンクライスト卿ギュンターであった。

 そういえば、と。彼女は思い出す。
 幼馴染の教官はギュンター閣下だと。

「そうです、グウェンダル」
「・・・なんだ」

 返事をするも、なんとなくギュンターが言い出すことに予想がつくグウェンダルは嫌そうな顔をした。
 立て続けに降って沸いてくる苦労ごとに、彼の美しい農灰色の髪と瞳は光を失っている。

 ギュンターは輝かんばかりの笑みを浮かべて、シャルロッテの肩に手を回し、前へと押した。

「・・・閣下?」
「彼女を回してください。貴方の部下なのでしょう?」
「・・・・・・勝手にしろ」
「ありがとうございます」
「あ、あの閣下・・・?」

 見えないところで進んでいる話にシャルロッテが救いを求めるように、グウェンダルとギュンターを見るが、答えたのはギュンターだった。

「実はコンラートがしばらく旅で留守にするので、後見にあなたを指名したんです」
「え、はい? コンラッドが? 旅?」
「ええ。引き受けてくださいますか?」

 ゆったりと微笑まれたシャルロッテはサッと顔を伏せた。




 後日血盟城へと向かうことを約束したシャルロッテはヨザックの腹の部分の服をつかんで勢いよく振った。

「なんで、あの閣下はあんなに美形なの!?」
「そりゃ・・。新眞国美形投票かなんかで、一位だったって前に隊長から聞いたような・・・」
「なにそれ!? わたし聞いてない!」
「覚えてないだけだろ・・・」

 無理やり彼女の手を外すと、ヨザックは首を回した。コキコキといい音がなるが、どこかやるせない。

 ついに彼女までが自分のそばから消えてしまう。


「シャルロッテも王都勤めねぇ・・・」
「閣下の補佐役だってさ。アレ、でもコンラッドって補佐じゃなかったよね?」
「そういやそうだな」

 コンラートの後釜にという話だったのに、承諾した話は何故かギュンターの補佐である。

「・・・・・・・ま、いっか」




***

 ギュンターヒロインは名前しか決めていなかったので、試作品的に書いて見ました。ギュンはユーリに会う前は、仕事も剣も魔術もできる魔族で、美形ランキング一位だったんだから、多分こんな感じかなぁと。
でも、あそこまで壊れるんだよね・・・。

 原作沿いで書くと、ヨザが悲しすぎるからマニメ沿いで行きたいです。

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 └TOA傍系王室主人公
 デフォルト名:ルニア・ディ・ジュライル

【十二国記】
 └雁州国王師右将軍
 デフォルト名:栴香寧

【遙かなる時空の中で3】
 └望美と幼馴染。not神子
 デフォルト名:天河華織

【明烏】
 └遙かなる時空の中で3・景時夢
 デフォルト名:篠崎曙

【彩雲国物語】
 └トリップ主
 デフォルト名:黄(瑠川)有紀

【コーセルテルの竜術士】
 └術資格を持つ元・旅人
 デフォルト名:セフィリア・エルバート
 愛称:セフィ

【まるマ・グウェン】
 └魔族
 デフォルト名:セレスティア・テリアーヌス
 愛称:セレス

【まるマ・ギュンター】
 └ハーフ、ヨザックの幼馴染
 デフォルト名:シャルロッテ・ティンダーリア
 愛称:シャール

【逆転裁判】
 └成歩堂・御剣・矢張の幼馴染で刑事
 デフォルト名:筒深稔莉(つつみ みのり)

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