TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。
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002:さくらの花
雪の花弁のように散りゆく姿を、潔そうな姿を称えたのは誰が始まりなのか。
蒼空から零れ落ちる立花が舞うように、はらはらと風に煽られ薄桃色の花弁が舞う。
キムラスカ・ランバルディア国の王宮の裏庭。幼いルニアが見つけた、人気のない樹木は何年も過ぎた今も記憶のまま。
無言で降り注ぐのは、周囲の期待と同じ。なのに、無感動でどこか非常なままに降るそれはいつも安心感をルニアにもたらした。
秘密の裏庭。人気も少なく、表の喧噪が届かず、人の感情も届かない静かな場所はルニアだけの特別な場所。
他は誰も知らない。王族とはいえ、現国王は忙しく王女もあまり庭を出歩く時間を取れない。ルニアも現在はあまり歩き回れないが、時折この桜が見たくなる。春の一時のみであるけれど、この花吹雪の下を歩くとひだまりに包まれたような感覚を覚えるのだ。
憧憬に包まれた景色。
優しくほほえむ母と、穏やかに大らかに笑む父。そして幼い自分。三人でささやかな小さなしあわせがあればよかったけれど、身体に流れる血がそれを許す立場ではなく。
散ることが定められている花のように、その小さな憧憬は散り去った。
時折ふと夢を見た。
幼い頃の、幸福な夢。
けれど、触れること叶わず醒めてしまう。
「ルーニャ」
『ルニア』
低くて優しい声。記憶の声と重なる。優しくて厳しくて、あたたかい。
はらりはらと散る桜の下、優しくほほえむ空色の瞳。
「皆が待ってる。行こう」
憧憬ではなくて、現実にのばされた優しい腕。
もう、夢が醒めることをおそれない。
描写する100のお題(追憶の苑)
**
TOVにはまりそうです。
[0回]
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年の数だけの花束。なんて気障なことをしても、彼女はイヤがりはしないが嬉しがることもしない。
苦笑いと共に、受け取ってはくれるだろうが心の底からの笑顔を見ることは叶わない。
彼女が喜んでくれることは、何なのかは最近ようやく分かるようになった。
数輪でいい。鮮やかに艶やかに、誇らしげに咲く野の花の咲く場所。そこから海が覗ければなおよし。
愛の言葉を囁くのではなく、彼女と今共にあることの幸せを。
赤く染まった鬱金香(うっこんこう)の花束と、彼女の指を彩る仕事を帯びた銀色の小さな輪(リング)を手に。
きみにどうやって伝えよう。
乾いていた心に、艶やかな滴が染み入り歓喜に染まったこと。
幸福を、腕に抱ける幸せを。
それらを与えてくれたのは、君であることを。
ガヤガヤと煩い外野は、すでに黙らせてある。(むしろ期待に胸膨らませている)
「エミリア」
風に揺れる艶やかな黒髪は、再会したときよりも長さを伸ばし月日が過ぎたことを如実に表している。
絹糸のような指通りが心地よく、絡め取り唇を寄せるとふわりと彼女の香りが薫る。控えめで温かみのある好きな香り。すでに自分に馴染み、なければ落ち着かないまでに。
「ピオ?」
どうかしたのかと問う漆黒の双眸優しい光が浮かび、見ている者の心を落ち着かせる。
景色を描き取っていた、ものを生み出す左手をそっと取り上げる。
そのまま指先を口元に持ち上げ、紅差し指に静かに口付ける。
「俺の隣に来て欲しい」
紅色の鬱金香の花束と、泣き笑いの滴が答え。
**
※Fimbriata薔薇などの花の品種名
締めはアゲハ蝶で!!
連載で出てきたのは黄色のチューリップですが、次は赤で!!
これにて「不思議な言葉でいくつかのお題2」は終了です。
お題をお借りしましたA La Carte
様に感謝の意を。
[0回]
例えば、君を想う心。
それは幾千年時を越えたとしても、変わらぬと断じることができた。君はずっと変わらぬ想いを持っていた。
自分にはないものを持つ君が羨ましくてならなかった。
「兄上、見て下さい!」
「どうしたんだい、ラシュディ」
満面の笑みに青い宝石を輝かせ、眩しい光に目を細める。
妹の周りを纏わりつくように漂う音素の集合に目を細める。自分と違い音素に愛された妹は、一族の名を背負うに相応しい。
「音素が遊んでくれるのです」
願わくば、重い“一族の名”を背負わずに済むように、血塗れぬ道を歩んで欲しい。
「ラシュディ、あちらで父上がお呼びだよ」
「父上が?」
「そう。だから一度音素達とはさよならだ」
「はい」
愛おしむような笑みを浮かべて音素を散らす妹。
例え本当の兄妹ではないとしても、私が君を想う心は決して変わらない。
幾星霜経とうとも。
「兄……失礼しました、フォルツォーネ少将」
「どうかしましたか、フォルツォーネ少尉」
願いとは裏腹に君が修羅の道を行こうとも。例え君に嫌われたとしても。
「わたしは、ラシュディ……きみの、しあわせを、ずっ……ずっ、と……」
音素の空から祈っている。
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
途中で分からなくなりました。
基本的にオリキャラ作るの大好きな人間なので暴走しています。
[0回]
遠く離れた地にいる父から呼ばれたラシュディは興奮にわき起こる心を抱えて高級行楽地であり、父の逗留地たるケテルブルク行きの船に家の付き添いを連れて乗り込んだ。
次第に凍てつく空気に目は期待に輝く。
深い海の底を映したような瞳が、見慣れぬ氷の山に爛々と輝く様に付き添いは「やはり血は争えぬ」と笑った。
幾日の船旅の後たどり着いた土地に降り立つと、ラシュディは大きく息を吸い込むと伸びをした。
普段乗らない客船に揺られる日々は冒険をしているようで楽しかったが、やはり動き回れないことは退屈であったのだろう。動き回りたくてうずうずとしているようだった。
「お嬢様、旦那様がお迎えを使わせて下さっている筈ですので」
「迎え?」
告げられた言葉に目を瞬く。
あの父が迎えを寄越す?そのことが愉快なのかラシュディはくすくすと声を立てて笑い、遠くを指さした。港の出入り口には出入りする人々が大勢動き回っていた。
「父上が来てらっしゃるから、お迎えはないと思うわ」
驚く付き添いにまたクスリと笑うと、近づいてくる一人の男にラシュディは飛びついた。
長い外套に身を包み、深く帽子を被ったその人は飛びついたラシュディに驚くこともなく難なく受け止めると帽子を指で持ち上げた。
「おまえには通じんかったか」
「お久しぶりです、父上。母上が心配なさっていましたよ」
「ははは、母上は何と?」
「これ幸いと雪山に入り浸らないように、だそうです」
困ったように笑うと目尻に皺ができる。軍人でありながら、軍服を纏わず現れたのは、ラシュディの父であり、フォルツォーネ家の現当主である、ウォルト・ゲイツ・フォルツォーネその人であった。
領地の視察に出かけそのまま逗留することのある父が遠くに出かけるのは遠征以外では初めてな気がする、とラシュディは手を引かれながら思った。
昨年から父はケテルブルクの軍の指揮官を任され任官中であった。
その父から、ケテルブルクに来ないかと誘われたのは半月前である。片道の船の券が同封されており、母や兄に背中を押される形でラシュディはやってきたのだった。
連れて行かれた先は見知らぬ豪華な邸だった。
「父上?」
豪華で、けれど冷たさと寂しさを伴う室内に不安を覚え包み込む父の手を握る。
優しく握り返された。足は止まることなく、けれど蒼い眼差しが優しく細められたのを見て、安心したように手を握り返す。
「ラシュディ、今から会わせたい方がいる。遠くない未来にお前がお仕えすべき方だ」
「父上?」
「多くの者にかしづかれやがて尊き方になられる。だがな、その方は独りなのだよ」
「ひとり?」
「ああ、独りなんだ。独りというのはとても」
言葉を濁した父の想いをなんとなく察したのか、ラシュディは再び握られた手に小さく力を込めた。
いつの間にかたどり着いた扉の前で父は再び呟くと、手を離した。
開かれた扉の先に、ラシュディはグランコクマに昇る朝日をみた。
「お前が中将の娘か、ラシュディ・フォルツォーネ」
それが、出会い。
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
こんな感じで切ります。
このお題からは陛下しか思いつかなかったので。
[0回]
憧れの姿はすぐ目の前に
ルークが見つかり、どうやらマルクトの使者を引き連れて戻るそうだ。
そんな連絡を受けた直後、ルークの母でありナタリア、ルニアの叔母的存在であるシュザンヌが倒れた。
見舞いと慰めとを兼ねてナタリアは公務のすぐ後に時間を見つけ、お見舞いの花を手に持つルニアを伴ってファブレ公爵邸を訪ねた。
ちらりと隣を歩くルニアの笑顔からは表情が伺いしれないが、機嫌は悪くないだろう。
ガイならばルニアの表情から微かなものを読み取ってほぼ間違いなくルニアの気持ちを察することができるのだろう。
ナタリアにはそれが羨ましく同時に妬ましかった。
視線を感じたのかルニアがナタリアを見るが、彼女は首を振ってなんでもないと伝えた。
「シュザンヌ様」
「伯母様」
部屋の扉を開けると、伏せっている女性が顔を上げた。若干やつれている面差しに喜色が浮かぶ。ゆっくりと体を起こすのを使用人が支え背中にクッションを差し込みルニアから花束を受け取ると静かに退室した。
室内は暗めにされていたが、所々に花が植えてあり、陰気とはほど遠い空間になっている。
「おお、ナタリア殿下、ルニア、顔を見せに来て下さったのね」
「ええ、お元気そうでよかったですわ」
「シュザンヌ様、庭で綺麗に咲いている花をお持ちしました。生けさせるので後でお楽しみ下さい」
ナタリアが寝台脇の椅子に腰掛けるのを手伝うとルニアは一輪だけ残した花をシュザンヌの手に持たせた。
そっと花を顔に近づけて楽しむとシュザンヌはルニアを見上げて寂しそうに微笑んだ。
「おまえも私の姪の様なもの。できれば殿下のように呼んで下さいな」
ルニアは困ったように笑むと「はい、叔母上」と告げた。
暫くは軽い近況を報告していたが、控えめなノックに雑談を中断したナタリアとシュザンヌを軽く促すとルニアは静かに立ち上がり、扉を少しだけ開けた。
外に立っていたラムダスが小声でルニアに用件を伝える。その表情は厳しく、聞いているルニアの顔も硬くなっていった。
「叔母上、大変申し訳ないのですが……城で人手が足りないらしく戻らなければならなくなりました」
「あら、まだ来たばかりですのに……」
不満そうにこぼしながら立ち上がりかけたナタリアの肩をルニアは笑顔で押さえた。
「ナタリアはここに。間に合えば私が迎えに来るけれど、来なければきちんと白光騎士団の皆さんに送ってもらうこと。いい?」
「城にぐらい一人で帰られますわ!」
「陛下が心配なさるのよ」
ナタリアが言葉に詰まり、決まり悪そうに腕を組んで椅子に座り直すと、ルニアはシュザンヌに向き合い一礼した。
「慌ただしくしてしまい申し訳ありません、叔母上。また一度ゆっくりと時間が取れたら伺わせていただきます」
「いいえ、ルニアも忙しいものね。兄上は大変貴女を信頼しているのよ。大変だとは思いますが、頑張って下さいね」
柔らかく微笑まれ、目を伏せると深く首肯して退室した。
「ナタリア殿下はルニアがいないとお寂しいですか?」
シュザンヌは傍らの椅子に腰掛ける拗ねた姪を見て笑った。
「寂しいですわ。ルークとガイの関係に似ていますけれど、少し違いますもの。お姉さまはわたくしの護衛であるのと同じように、王族の一人。お父様も、お姉さまには色々と頼みごとをするようですし。最近は特に忙しいようであまり構って下さりませんもの」
「まあまあ」
拗ねてみせる姪にシュザンヌは楽しそうにころころと笑った。普段は、次期賢帝と名高き王女もルニアに関することは年相応らしい。
王族ながら、王族の特徴を持たぬ故に徒に中傷を受けやすく、それを聞いた周囲が傷つくのを厭うナタリアは年不相応なほど、立派な為政者たろうとしている。そこに再び戻ったルニアが、ナタリアを年相応な少女の姿にする。
「わたくしは姉上のように、正しきは認め、正しきなきは正す。相手を思い、進言できる強さがあこがれですわ」
「…けれど、ナタリア殿下。それはルニアがすることであって、貴女がなすべきことではないということを覚えておいて下さいね」
「叔母上?」
問いかけにシュザンヌは微笑んだだけであった。
長居をしてシュザンヌの身体に障ってはよくない、とナタリアが部屋を辞すると静かな屋敷の中に珍しい喧騒が耳に入った。
その声に聞き覚えがあり、ナタリアは頬に熱をのぼらせると目の前の扉に駆け寄り飛び出した!!
「ルーク!! お戻りになったのですね!」
「げっナタリア」
待望していた少年は面倒そうに顔を歪めた。
期待していたのとは違う反応をされた彼女は不満そうに腰に手を当てて、婚約者を睨みつけた。
「まあ、ご挨拶ですわね!! わたくしもお姉さまも貴方のことを心配して待っていたというのに」
「ナタリア、姉上は?」
「お姉様は城に戻られました。ですから今日はお会いになれませんわ。残念でしたわね、ガイ?」
「え?いや、」
***
後半は適当に繋げてしまいました
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