TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。
感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。
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たとえば、幸せになるために必要なこと。
「クローバー?」
「はい! 四つ葉のクローバーを見つけたんです!」
満面の笑みでコレットは小さな小さな緑の若葉を乗せた手のひらを見せた。
期待のまなざしに答えるようにじっとそれをのぞき込むと確かに四つ葉のクローバーがあった。
「この緑の少ないシルヴァラントにも、人を幸せな気持ちにさせることができる植物がまだ生きているんだね」
「……そう、ですね」
コレットは同意しながら小さな声になりクローバーをじっと見た。コレットが考えたことに気づいたアトラスは小さく笑うとその金色の髪をかき混ぜるようにして撫でた。
「アトラスさん?」
「摘んだことを責めているわけではないからね?」
「えと……えへへ」
眩しい笑顔を浮かべるコレットにつられてアトラスも笑顔を浮かべる。
「折角見つけたんだから押し花にでもしようか」
「そうですね! ……でもどうやってやるんですか?」
「じゃあ食事の後に教えてあげるよ」
約束ですよ。そう念を押して次にリフィルとクラトスに見せに行ったコレットを見送り、アトラスはむき出しの地面に座った。
「クローバー……か」
そんなシルヴァラントでの出来事を振り返ると、無性に物悲しい。
「……ねぇ、コレット。あの押し花、まだ持ってる?」
輝石に意識を奪われたコレット。
あの眩しい笑顔が見ることは今はできない。
「四つ葉のクローバーがなくても人は幸せになれるのにね」
なぜ、それほどまでに固執するのか。
縋るものがほしいのだろう。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
[0回]
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春うららかな午後の日差しにさて今日は頼まれものでも仕上げようかとのんびり思っていると、セフィリアの家の扉が遠慮がちにノックされた。
ユリオスと顔を見合わせて笑い、扉をそっと開けるとそこには四人の補佐竜が立っていた。
「いらっしゃい」
「おはようセフィリアさん!」
「おはようジェン。朝から元気いっぱいだね」
朝から本当に元気な風竜のジェンの後ろに居た三人も続いて朝の挨拶を始める。
「さて、立ち話もなんだしあがりなさい」
人数分のお茶を出すと、朝食用に焼いたものの余りを出すとジェンがにこにこと笑いながら手に取った。
「わーい、あたしセフィリアさんのパン好き」
「残り物で悪いね。でノイ、何か用事があったんじゃないかい?」
「うん。あのね」
すぐ傍の竜術士の家にいる木竜のノイに話を振ると、彼女は楽しそうに今まであったことを話した。
火竜の術士の補佐竜であるメオが新しく女の子たちに髪飾りを作ったこと。
それに合わせてユイシィの新しい服を作り、術士であるランバルスを驚かせること。
服を作ってほしいとカディオに言うと、忙しいからセフィリアに作る方を教わってこいと言われたこと。
「カディオが私に教えてもらえって?」
「うん」
「……またなんか頼まれ事してるなアイツ」
「カディオさん、忙しいみたいなので無理に頼めなくて……」
「セフィリアさんなら暇だから教えてもらえだって」
同意を求めるような尋ね方をするジェンの頭を軽く小突いてセフィリアはユリオスに目配せした。
彼は呆れたようにするとゆったりと家から出ていった。
それを目を細めて見送るとセフィリアは四人の顔を見て笑って頷いた。
「いいよ、教えてあげるさ」
「ありがとう、セフィリアさん」
かくしてセフィリアによる裁縫教室が始まったわけではあるが、どこから話を聞きつけてきたのかマシェルが
『僕にも洋服の作り方教えて下さい!』
と言ってきたのでまたいつかと約して追い返したことを知っているのはユリオスだけである。
どんなデザインで作るのかを考えさせ、それを見て型紙を起こす。
紙にすらすらと書いていくセフィリアの傍に立ち四人は感心しながら見ていた。
「セフィリアさん、本当に器用だよねー!」
「……セフィリアさん……何でも出来る」
「カディオと同じくらい細かい仕事が得意だよね」
「そういうものはどうやって身につけるんですか?」
四人同時に話されるとさすがに聞き取れないセフィリアは手を止めずに後ろに向けて言った。
「私は必要だったから身につけただけだよ。……私の本業なんて君たちの術士に比べれば全く役に立たないんだ」
けれど、セフィリアの本業を知らない四人は首を傾げる。
その仕草を待っていたセフィリアは笑うと続けて言った。
「まだかかるから、もう今日は帰りなさい。これのやり方はまだ教えないから。それに君たちがいないと子竜達がお腹を空かせてしまう」
最初は渋ったが、確かにその言葉に当てはまるジェンとユイシィは帰りの挨拶をすると帰っていった。
「エリーゼとノイは帰らないの?」
のんびりとノイが煎れたお茶を飲みながらくつろぐ二人は真剣にセフィリアの手の動きを見ていた。
「……お兄ちゃん、迎えにきてくれる……」
「帰りは暗竜術ですぐだもんね」
「ノイは?」
「私は今日の当番はロイだから急がなくてもいいのとセフィリアさんを夕食に誘うために待ってるの」
思いもよらなかった言葉にセフィリアは思わず手を止めると目を瞬いた。
「それなら早めに切り上げないとね」
言葉の通り、早めに切り上げたセフィリアはエリーゼを迎えにきた郵便屋さんを見送り、ノイと共に木竜術士の家へと向かった。
そこに小さな木竜達にもみくちゃにされるユリオスの姿があった。
コーセルテルは、静かで賑やかで、『優しい夢を見る里』というのはあながち嘘ではないのだと、日々思うセフィリアだった。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
物語風って難しい。
5巻記念で。
[1回]

いくら鳳珠が国のことを憂いていようとも、有紀にとっては彼が一番なのだ。
だから、時たま頑として首を縦に振らないときがある。
そして、決して妥協を許さないことも。
それは鳳珠が一番知っているはずなのだ。
と、黎深は回想してみた。
有紀が頑固なのは知らぬは有紀本人のみである。
奴が意地になれば私でも動かせぬというのになぜ鳳珠が気づかない。
室の奥から聞こえてくる静かな責め立て合いに黎深は扇の奥で笑いを噛みしめた。
「いやです」
「わがままを言うな。私はお前の安全のためにだな」
「何度も言わせないで下さい。ヤですよ。絶対行きません」
「有紀!」
怒ったように名前を呼ぶがこの時ばかりは有紀も譲れなかった。
勿論、鳳珠もである。滅多にわがままを言わない娘のわがままは出来うる限り叶えてやりたいところではあるが、この件ばかりは譲れない。
頑固な似たもの義親子は互いに一歩も譲らない。
半刻ほどずっと同じ会話が続いていることに当人達だけが気づいていない。
つんとそっぽを向く有紀をじっと見て少し冷静さを取り戻したのか鳳珠はようやく違う言葉を紡いだ。
「だが家人はほぼすべて黄州へ返す。お前の面倒を見る者がいない」
「それがどうしました?」
「危ないから置いておけないと言っているんだ」
ようやく新しい会話の兆しが見えたところで鳳珠は手元にあった冷めてだいぶ経つお茶を呷った。
ずっと話し続けていたのどが潤された。
疲れた顔をしているのは有紀も同じで彼女は無言で鳳珠のお変わり分を注いだ。
「鳳珠様は…」
ずっと拒否の言葉しか口にしなかった有紀がようやく重たい口を開いた。
一体何が嫌で拒むのか分からなかった鳳珠は続きをじっと待った。
「鳳珠様は、鳳珠様が今内乱の兆しが見える国を憂いているのは知っています」
「……」
「貴陽の街から少しずつ笑顔が消えていっているのも知っています」
そこまで続けると有紀は俯いて、膝の上にたまっていた服の裾を握った。
何かを堪えるようにきゅっと握るその手を見ながら鳳珠は言葉の続きを待った。
まるで泣きそうになるのを必死に堪えているようだった。
ここで言葉を遮ると有紀は二度と口にしない。
「最近特にお忙しいのか帰宅なさる時間も遅いし、お食事をいつ取っているのかぜんぜんわからないし」
まるで駄々をこねている子供のようだと有紀は自分を嫌悪するが、堰を切って飛び出した言葉は止まらない。
じっと降り注ぐ静かな鳳珠の視線が、胸に痛かった。
「……でも今は私がお帰りを待っているから無理をしてでも帰ってきて下さることを知っています」
これは自惚れではない。それは確信であり、確認だった。
「だから、私は黄州には行きません!」
何がだからなのか全然言えていないが、それでも言い切った有紀は顔を上げて真っ正面から鳳珠の顔を見た。
どんな表情だろうと有紀は意志だけは曲げるつもりはなかった。
けれど、予想に反して彼は笑っていた。
「私の傍に居たい、ということか?」
「……私もできるなら絳攸のように国試を受けて鳳珠のおそばでお役に立ちたいです」
右腕とは言わない、でも指の先くらいには役に立ちたい。
絳攸が羨ましい。今年の国試を受けるため、彼は今、間近に迫った州試に向けて励んでいるために会っていない。
有紀は鳳珠の役に立てる方法は一つしかない。けれど、その方法は決して彼が喜ばないと知っている。
だから絳攸が羨ましい。
そんなことは無理な願いだと知っている。
何も出来ず駄々をこねて鳳珠を困らせるしかできない自分が悔しくて有紀は再び鳳珠から視線をそらすと、服を握りしめている自分の手を見下ろした。
「お前の気持ちはうれしいが……おそらく王家の後継者争いはこれから加速する」
「……」
返事はせずに頷くと鳳珠はすっと手を伸ばすと有紀の結われていない黒髪を指に絡めながらそっと梳いた。
「直に彩七家が加わる、そうなれば朝廷は機能が停止するだろうことはまともな思考を持つ者には明らかだ」
真剣な口調とは裏腹に彼の手は優しかった。
「……黄家は貴陽に手が回らなくなるということですか」
「そうだ」
「だから家人を黄州へと返すのですよね」
「そうだ」
「っならば尚更です!鳳珠様が戻られるならついていきます!残られるなら私も残ります!」
「有紀」
窘めるような声色に頷いてしまいたくなるが、どんなに諭されても頷ける筈がなかった。
「絶対に嫌です。家人が帰るというのなら私が鳳珠様のお世話をします」
結局は話が戻ってしまったことに鳳珠はようやく気づき、どうやって有紀に頷かせようかと考えた瞬間に、勢いよく室の扉が開かれた。
驚いた有紀は勢いよく扉を向き、鳳珠は不快な表情を露わに扉を振り向き直後に鋭く名を呼ぶ。
こんな不躾なことをするのは一人しかいないからだ。
「黎深!」
「おや怖いね。そんなに大きな声で呼ばなくても聞こえているよ、鳳珠」
「貴様、そんなところで盗み聞きか?」
扉にもたれ掛かることなく堂々と立つ、有紀も見覚えのある黎深は相変わらず堂々と居丈高にそこに居た。
扇を広げて口元を隠しているいつもの姿である。
「鳳珠、一つ方法があるんじゃないかい?」
言っている意味が分からなくて有紀は不適に笑う黎深を見て、鳳珠を見た。彼は黎深とは対照的に苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。
鳳珠にこんな表情をさせることが出来るのは黎深だけだろう。
「ふざけるな、私がそんな真似を許すと思うか?」
「ああ、思うよ」
黎深は不適な笑顔を浮かべたままつかつかと歩き、椅子に腰掛ける二人の傍に立つと、何を思ったのか有紀の髪を指にひっかけた。
「黎深さま……?」
「黎深!」
「こんなに君の傍にいたいんだと言っているんだから叶えてやればいいじゃないか。別段難しいことではないだろう」
「だが、どの道危険だ!」
「忘れたのかい、絳攸がいることを」
途端に興味を失ったように有紀の髪をするりと指から抜き去ると徐に扇を広げで口元を隠す。
有紀の知らない話が進んでいく。
「っく、だが通るとは限らないだろう」
「へぇ、君は信じていないのかい?私は確信しているよ、あの子は三元は取る。あれは努力が好きなようだからね。君は、そうは思わないかい?」
「撤回してもらおうか、私はこの子の実力は信じている。だが、誰かは気づくと言っているんだ」
自分と絳攸の話だということは理解できる。
「だから私も手を貸してやろうと言うんだよ、絳攸を貸してあげよう」
「…黎深様」
理解できない話ではあるが、少し聞き逃すことのできない言い方に有紀は黎深を見上げた。
「絳攸はものではありません」
「だが私の子だ」
黎深が珍しく素直である。そのことに有紀は面食らってしまった。
いつもの黎深は冷笑を浮かべて「私のものだぞ」とぐらい言うのに。
あまりの衝撃に動揺を隠せない有紀は、ゆっくりと椅子を立つと即座に二人から離れて軽く退室の礼を取るととりあえず家人が集まっている室へと逃げた。
驚いた有紀の顔が面白かったのか、扇で隠しもせずに黎深は笑っていた。
その間に有紀が座っていた椅子に座り、使っていなかった茶器に茶を入れ直すことを忘れない。
「……黎深、本気か?」
「私は冗談は嫌いだよ。いいじゃないか、本人もそう言っただろう?」
「盗み聞きとは呆れるな」
「失礼だね、君たちの声が大きいんだよ」
扇を手の中で上下に動かしながら楽しそうに笑う黎深を見て、鳳珠は溜息を吐いた。
判断に悩みすぎる決断だ。
邸に一人でおいておくのも危ないがかと言って黎深の提案に乗るのもそれはそれで危険がつきまとう。
「本人に決めさせればいいじゃないか。そうすれば迷いながら受けるというと私は思うけどね」
「……だから尚更聞けないということが分からないのか」
「では私が聞いてこようかい」
黎深がゆっくりと腰を上げると鳳珠は無言で立ち上がると足早に室を出ていった。
「全く手の掛かる友人だ。……だがこれで面白くなる」
勿論黎深が、ではあるが。養い子に事の詳細を告げるのは当日にしようと頷くと黎深は鳳珠の邸を後にした。
鳳珠から一つの提案がされ、鳳珠がいいと言うのならと受けることを決意した有紀ではあるがふと気づいた。
「私が残りたいと言ったのは、鳳珠が倒れるまでお仕事をなさるのを止めたいからであって、一緒に倒れるためではないんだけど……」
だが、ともに同じ事を考えながら頑張るのもいいか。
「ま、いいや。絳攸には内緒にしておこう」
**
仲良きことは、ようやく書けました。がイマイチ……
[1回]

それはとても透き通っていて、純真無垢という言葉が似合いそうだった。
彼の不思議な行動はいつものことで、それを不思議と思わない彼女もいつも通りであったがやはりそれでもそれについては不思議そうに首を傾げた。
「龍蓮?」
「我が旅の朋へ贈り物だ」
「……ありがとう?」
わからないものの、龍蓮が嬉しそうなのでまあ害はないだろうと有紀は彼の好きにさせることにした。
半ば強引に全国津々浦々点心修行に出る度に、訪れる街で出会う龍蓮。
なぜか今回は会った直後に満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。
『久しぶり、龍蓮。ご機嫌だね』
どうしたの? そう笑って問いかけると、彼は嬉しそうに
『後に耳にする』
と言ったので話して貰えるのかと思いきや、言葉の通り『耳にする』だった。
見せられたのは、限りなく透き通る透明さを持つ石英を、蓮の華のように加工された、耳飾り。
「どうしたの、それ」
「うむ、愚兄達に感謝の意を物で示したければ贈り物をすればよいと言われ、立ち寄った街に君のためにあるような石を発見した。これこそ愚兄達の言っていた贈り物だと耳飾りにさせたのだ」
無造作に、けれど優しく薄い布に包まれた一つのそれをつまみ上げると、龍蓮は少し微妙な顔をして黙ってしまった。
なぜだろうかと不思議に思い、じっと蓮の花を見てみるとそれは有紀がいた世界ではピアスと呼ばれる耳飾りであり、率直に言えば耳に穴を空けなければつけなくてはいけない。
ただ、龍蓮がじっと見ている有紀の耳にはすでに一つの耳飾りがその場を占領していた。
いつもならば勝手に取ってしまいそうな彼が黙り込んでしまったのは、有紀がそれを大切にしていることを知っているからだろう。
龍蓮も少しずつ変わっているのだとなぜか嬉しくてくすりと笑うと有紀はおもむろに片方の耳飾りだけをはずした。
「龍蓮、つけてもらってもいい?」
「了解した」
その時の笑顔はとてもかわいかった。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
蓮華を見ると龍蓮しか思いつかない…。前に書いた奴のリメイクのようでリメイクできてないもの。
なんか今更ですけどピアスを送るのって何か意味があったような…
[1回]

紅茶の香りが漂う栞
セフィリア・エルバートはマシェルにとって謎を帯びた、頼りがいのある姉的存在である。
彼女は、マシェルが小さな頃にふらりとコーセルテルに現れた。
供に、ユリオスという色違いの瞳を持つ不思議な猫を伴って。
セフィリアはみんなが知らないようなことを知っていて、頼りがいがあって。マシェルは小さな頃に、自分の知らない話をねだり聞かせてもらった。
アータが彼女に聞きたいことがあると言い出し、マシェルが「じゃあ、一緒に行こうか」と言うと、当然のごとく子竜達もみんなが行きたがった。
ならばお弁当を作ってセフィリアの家のそばで食べようか、という話になり、マシェルは腕を振るい特性のお弁当を作った。
セフィリアの家は不思議なところにある。
木竜術士、カディオの家の側の古木の中の小さな空間に居を構えているのだ。
古い木のために、いつ倒れるかわからないとカディオが心配するも、彼女はけらけらと、大丈夫だと笑い飛ばす。
長い時間をかけて彼女は古木の中の空間に手を加えて居心地のよい場所を作っていた。
子竜達は一度訪れた、秘密基地的なその家をとても気に入っていた。
『セフィリアさーん』
ようやくついたセフィリアの家の前で、用事のあるアータが声をかけるがいつもならばすぐに誰かが出てくるのに、人の動く気配がなかった。
『マシェル、だれもでてこないよ?』
「ユリオスは……出かけているみたいだね」
勝手気ままな猫は、なぜか家をあけるときは律儀に扉に足跡をつけていく。
今現在扉の下の方にはかわいらしいにくきゅうの跡があった。
『おじゃましまーす!』
『サータ! かってにはいったらだめなんだよ!』
『マシェルー、あいてるよ?』
勝手に中に入り込むサータに続き中をのぞき込むハータを抱き上げてマシェルは苦笑いを浮かべてサータを探すように中を覗いた。
「セフィリアさん?」
小さな室内にマシェルの声がぽつりと響く。
その間に好奇心旺盛な子竜が中にわらわらと入っていく。
止めようとしてあわてるマシェルを片手で制すると、ナータが中にゆっくりと入っていく。
どうなっているのだろうと、ハータを抱いたまま思っていると、タータとマータが先を争うように飛び出してきた。
『マシェル、たいへんたいへん!!』
『すぐにきて!』
「ど、どうしたの二人とも」
『いいからはやくはやく!』
あわてる二人に引かれてマシェルは勝手にはいることに罪悪感を感じながらも、室内に足を踏み入れた。
(前より広くなってる?)
そんな疑惑を抱きつつもマシェルは、セフィリア邸の居間のような場所に足を踏み入れた。そして珍しいものを見つけた。
「……セフィ姉さん?」
人の気配に聡いセフィリアが群がる子竜達に気づかずに机に突っ伏したまま寝ている。
『……風邪をひく』
マシェル本意の気配りさんことナータがどこからか持ってきた毛布をセフィリアにかけると、マシェルはセフィリアがうたた寝をしていたことにかなり動揺していたことを知った。
だが、つきあいの長いマシェルでさえ、セフィリアがうたた寝していることに驚愕したためか子竜達が驚くのも無理はないだろう。
「アータ、セフィリアさんはお昼寝して居るみたいだからまた跡でこよっか?」
『……おべんとうたべたらまたくる』
「そうだね、じゃあみんな。お弁当食べよう」
わらわらと出ていく子竜達の中にずっと抱いていたハータを降ろしてマシェルは再びセフィリアを見た。
「おやすみなさい、セフィ姉さん」
突っ伏す銀色の固まりが身じろぎした気がした。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
ドラマCDの郵便屋さんが絳攸でカディオが将臣でミリュウさんが静蘭でマシェルが詩紋君でした!
[1回]
