それはとても透き通っていて、純真無垢という言葉が似合いそうだった。
彼の不思議な行動はいつものことで、それを不思議と思わない彼女もいつも通りであったがやはりそれでもそれについては不思議そうに首を傾げた。
「龍蓮?」
「我が旅の朋へ贈り物だ」
「……ありがとう?」
わからないものの、龍蓮が嬉しそうなのでまあ害はないだろうと有紀は彼の好きにさせることにした。
半ば強引に全国津々浦々点心修行に出る度に、訪れる街で出会う龍蓮。
なぜか今回は会った直後に満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。
『久しぶり、龍蓮。ご機嫌だね』
どうしたの? そう笑って問いかけると、彼は嬉しそうに
『後に耳にする』
と言ったので話して貰えるのかと思いきや、言葉の通り『耳にする』だった。
見せられたのは、限りなく透き通る透明さを持つ石英を、蓮の華のように加工された、耳飾り。
「どうしたの、それ」
「うむ、愚兄達に感謝の意を物で示したければ贈り物をすればよいと言われ、立ち寄った街に君のためにあるような石を発見した。これこそ愚兄達の言っていた贈り物だと耳飾りにさせたのだ」
無造作に、けれど優しく薄い布に包まれた一つのそれをつまみ上げると、龍蓮は少し微妙な顔をして黙ってしまった。
なぜだろうかと不思議に思い、じっと蓮の花を見てみるとそれは有紀がいた世界ではピアスと呼ばれる耳飾りであり、率直に言えば耳に穴を空けなければつけなくてはいけない。
ただ、龍蓮がじっと見ている有紀の耳にはすでに一つの耳飾りがその場を占領していた。
いつもならば勝手に取ってしまいそうな彼が黙り込んでしまったのは、有紀がそれを大切にしていることを知っているからだろう。
龍蓮も少しずつ変わっているのだとなぜか嬉しくてくすりと笑うと有紀はおもむろに片方の耳飾りだけをはずした。
「龍蓮、つけてもらってもいい?」
「了解した」
その時の笑顔はとてもかわいかった。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
蓮華を見ると龍蓮しか思いつかない…。前に書いた奴のリメイクのようでリメイクできてないもの。
なんか今更ですけどピアスを送るのって何か意味があったような…
[1回]
PR