サイトで連載している薄桜鬼×BSRの主人公がノーマルルートの末にとうらぶの世界にうっかりトリップしたらという設定
デフォルト名:立花眞里(たちばな まさと)
眞里がノーマルルートで息絶えたあと
全てが終わったのだ。
半端で投げ出された任も、分かち合った誠の重みも。
これで、漸く。あの人達の居るもとへ向かえるのだと。
気付けば眞里の目前には縁側が出現していた。
縁側から覗ける小さな畳の部屋は床の間だろうか。
上座にあたる座敷の場所に五振りの刀が等間隔に並べられていた。
誰かの笑い声や、話し声。懐かしい音が聞こえてきそうな光景であるのに、眞里の耳に入ってくる音は何一つとしてなかった。
あまりにも不自然すぎる静寂。
五稜郭ではないこの場所は、何処なのか。満身創痍であった己の身体も装備もそのままただ眞里だけが見知らぬ土地に立ち尽くしている。
「やあやあ、お待ち申し上げていました。新たに審神者に任じられた方ですね」
気配なく響いた声に咄嗟に腰元の刀へと手が延びる。金属が擦れ合う音がその場に響いた。
「……きつね?」
「私は政府に命じられた案内役でこんのすけと申します。あなた様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
声の主は小さな狐のような生き物であった。しかし、眞里の知る限り狐は人の言葉を解さず話すこともない。
「私は、……また……。何故だ? 何故私は……」
もしや、また時を越えたのだろうか。武田の戦場から幕末の江戸へと世界を越えたように。戦場の五稜郭から見知らぬ世界へと。
戦場に数多の同士を置き去りにしたのだろうか。あの時のように。
「何か事情がおありのようですが、まずはあなた様のお名前をわたくしめに教えていただいても?」
「……立花、眞里だ」
「立花さまですね。これにて正式に審神者へと任命されました」
「私は了承などした覚えはない!」
「名乗って頂きました故。名を明かすは身を委ねるも同じこと。さあ、立花様。審神者として近侍をお選びください」
「いや、話はまだ終わっていない! ……近侍?」
見渡せど、室内に居るのは眞里ときつね、後は五振りの刀だけである。人の影など見当たらない。もしやきつねにしか見えない何かがいるのだろうか。
「そちらに用意しました五振りの刀剣。この中から一振りお選びください」
「刀が近侍……?」
「どの刀でも結構です。さあ、どれか一振り。遠慮などなさらず」
きつねに物申したいことは多々あれど、眞里の目は自然と刀へと惹き付けられていた。
我知らずと手が延びる。何かに引かれるように延ばされた指先に触れた瞬間気付けばきつく鞘を握りしめており、刀身を引き抜きかけていた。
何かが身体から抜けていく。BASARA技を使った時のように芯から末端へと流れていくそれに身を委ね、抜き身の刀身から光が迸る。咄嗟に目を瞑り、新たに現れた気配にどこか懐かしさを感じる。
何故だろうか。この温かな気配は。何故か懐かしさが沸き出て修まらず、不思議と馴染んでしまうこの空気は。
「オレは和泉守兼定。かっこ良くて強い! 最近流行りの刀だぜ。あんたがオレの主だな、よろしく頼む」
朱色の着物を身に纏い、目前に現れた見知らぬ青年の姿が眞里の記憶の最後であった。
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出来心で書いてみて、ツイッターのプライベッターで公開していたSSです。
大分前にノーマルルートで現代に転生したお話を小ネタ日揮でも書いていたので転生せずに審神者に就任してしまったらみたいな感じです。
ゲームにおいて審神者も戦うのか、それとも本丸で待つのみなのかは解りませんが、恐らく彼女は戦いに行かずにはいられないだろうな、と思います。
行けない場合は鍛練で道場辺りで稽古つけてるかも。
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