デフォルト名:春日綾音(かすが あやね)
「敦盛さん」
己を呼ぶ声に彼はゆったりと振り返る。
声の主が手招きをしていた。その顔(かんばせ)が楽し気に微笑んでいるのを見て安堵しつつ彼の方へと歩みを向ける。
「何用だろうか、綾音殿」
身ぶり手振りで横へと腰掛けるように促された為に少し間を空けて腰を落とす。
「あの、えっと……」
告げるのを躊躇うような内容なのだろうか、綾音が言葉を迷わせる。しかし、その表情は負のものが見受けられない為に敦盛は催促することはせずに彼女が言の葉を紡ぎ出すのを待つことにした。
「その、敦盛さん」
「……ああ、っ綾音殿?」
突如両の手を細い手が包み込まれ思わず声が上擦ってしまった。やんわりと放そうとするが、その上からかかった力に思わず身を委ねてしまった。
「色々考えたんですけど、何も思い浮かばなくて、だからとりあえずこれだけは伝えたくて」
「……その、何を、だろうか」
かち合った両の眼差しが温かな光に満ちていた。彼女の柔らかな髪のような、春を思い浮かばせる優しい眼差し。
いくら傍らが心地好くても、彼女は陽の気を纏う人。片や己は陰の気しか持たぬ人成らざるもの。
己と彼女の行く道が交差することはないのだと。忘れてしまいたいことを、彼女の仕草で突き付けれていく。
「お誕生日、おめでとうございます。私と、……私達と出逢ってくれてありがとう」
花が綻ぶような笑みに、冷えきっている筈の己が心に陽が射し込む。
けれど。
己の立場を忘ることはしない故に、今だけは。春の陽射しの差し込むあたたかな、この場所に今暫く佇むことをどうか許して欲しい。
「プレゼント……贈り物は譲と一緒に敦盛さんの好きな甘味を作りました!」
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遅刻で久方ぶりの遙か3の平敦盛のお誕生日(遅刻)SSです。
口調も文体も上手く定まらないので微妙ですが。
気持ちだけでも……!
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