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小ネタ日記

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うたプリ×ペンギン革命 個性光る生徒達

デフォルト名:藤丸ゆりえ





事務所での仕事が一段落したゆりえは腕一杯の資料を抱えたまま学園を目指して歩いていた。資料は学園の雑務を片付けに戻ると告げたゆりえに同僚達が大量に持たせてきたものである。
シャイニング事務所の仕事の中で、生徒達が憧れているアイドルたる仕事や、思いもよらない仕事。それら過去の企画書やとある作曲者の過去のスケジュールだとかである。

一度に運ばなくてもいいと言われていたが持てない量ではなかった為に思い切って抱えてきてしまったが、そんな安易な判断を下した数分前の自分に怒鳴りつけたい気持ちでいっぱいになりながらもゆりえはくじけないように懸命に歩いていた。

若干視野が狭まるが人にぶつからないように意識していれば飛び出してくる人間以外と衝突は避けられるためゆりえはゆったりとした歩みで進んでいた。

そんな背中に戸惑いがにじみ出た声を掛けられるまで。

「あ、あの」
「ん?」

聞き覚えのない声であるが、振り返ることのできないゆりえはとりあえず足を止めた。

「どうかされましたか?」
「あ、あの、その、わ、私! お、お手伝い致します!」

声の主が勢い良く頭を下げる音がした。声の質感から学園の生徒であるとあたりをつけ(そもそも職員なら声でわかる)ゆりえは素直に手助けを頼むことにした。

「ごめんね、お願いしてもいいかしら? この山から少しだけ持ってもらってもいいかな?」
「はい!!」

声の主に少しだけ資料を持ってもらうことによってようやく視野が広まる。
ゆりえが手伝いを頼んだのはピンク色の髪の女生徒だった。

「ありがとう、助かります。大変申し訳ないけど、職員室までお願いしてもいいかな?」
「はい!」
「申し遅れました、シャイニング事務所の事務員をしています藤丸ゆりえです。職員室までお付き合いお願いね?」

元気一杯の笑みを浮かべた女生徒が手伝ってくれたお陰で少しだけ腕の負担が軽くなり、足取りも軽くなる。

女生徒はAクラスの七海春歌と名乗り作曲家コースに所属するらしい。
職員室に向かう道中主に春歌の学園に入るに至った経緯や夢を聞いていた。話せばどうやらゆりえの妹のゆかりと同じ年らしく、ゆりえの感覚としては妹と会話をしているようで楽しかったのだが、春歌は職員室に着くと同時に何故か顔を真っ赤にさせていた。

「ありがとうございました。とても助かりました」
「こ、こ、こちらこそ凄く楽しかったです!!」
「手伝ってくれたお礼にお茶でも飲んでいって? 甘いものは大丈夫?」

赤い顔のまま勢いよく頷く春歌にくすりと笑みを浮かべるとゆりえは春歌を応接セットに残して簡易キッチンへと向かった。カップの準備をしながらちらりと時計に目をやるといくつかのカップを余分に取り出す。

「はい、お待たせ。コーヒー大丈夫?」
「ありがとうございます! いただきます!」

春歌のくるくると変わる表情を楽しげに眺めながらゆりえはそっとカップに口をつける。紅茶派やコーヒー派などと分かれる飲物に関してゆりえは特にこだわりはないが、今日は気分的にコーヒーだったのでコーヒーである。

「藤丸先生は何を担当されていらっしゃるんですか?」
「私は教師ではないから何も、が答えかな?」
「先生ではないんですか?」
「文字通り、事務仕事要員ね。厳密に言えば学園ではなくてシャイニング事務所の事務員のだけれど。でも学園もシャイニング事務所の運営だから同じようなものね」

くすりと目元を綻ばせるとゆりえは先程運び入れた資料を指し示す。

「さっき運ぶのを手伝ってもらったのは過去の仕事の一例よ。作曲家コース志望なのよね? 内緒でちょこっと見せてあげる」
「え?! で、で、でもよろしいのですか?」
「授業の資料にと持たされた物だから少しぐらいフライングしたって平気よ。重い思いまでさせちゃったのだし」

内緒だからね、と付け足しながら作曲家コースに見せる資料を数部捲る。
春歌へと手渡すと彼女は少し縮こまりながらしかし目をキラキラと輝かせて資料を遠慮がちに捲り始めた。

妹と同じ年の彼女の背中には羽根は見えない。

けれど、彼女の背中にはゆりえには見えない羽根が生えているのだろう。
妹の背中と被って見える後ろ姿にくすりと笑いながらコーヒーカップを揺らす。

「七海さんを見てると妹を思い出すな」
「妹さん、ですか」
「そう。七海さんと同じ年で今年高校一年生なの」

そこで口を噤むと珈琲で喉を潤す。自他共に認める妹大好き人間であるのでこれ以上の発言は自主規制である。

黙ってカップを手にとっていたゆりえは何かに気づいたかのように席を立つと春歌にそのまま見ているように伝えると簡易キッチンに立つ。

とりあえず3人程か、と目星をつけて新たなコーヒーの準備を始めると程なく職員室へと何人かが姿を現した。
それぞれが席に着くとゆりえは静かに差し出していく。そつのない動きに春歌が目を白黒させているとゆりえは再び彼女の前に腰をおろしのんびりとカップを手に取っていた。

「お代わりは大丈夫?」

その言葉に弾かれたように立ち上がると春歌はわたわたと手を動かし先程まで眺めていた資料を整えた。

「だ、だ、大丈夫です! あ、あの、そろそろ戻りますのでおかまいなく!」
「労働の対価何だから気にしなくてもいいのに」

そう言って笑いながらもゆりえは片付ける春歌に手を貸して資料を整えていく。
他の教員戻って来たことで意識が現実に引き戻されたのだろう。且つ他の生徒がまだ手にとって眺めて、ましてや存在すら知らない資料を独り占めしていた後ろめたさが如実に現れたのだろう。そんな春歌の想いが分かっているのか、わたわたと退室する春歌に笑顔を送り。

「今度はお友達と一緒にいらっしゃい」


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