デフォルト名:テリアーヌス卿セレスティア(愛称セレス)
魔族というのは、有利が思うに美的感覚が少し一般よりもずれている。魔族というか、この世界一般にも言えることでもあるが。
有利が「美形だ」と思うものも、彼らにとっても「美形だ」というが、有利が自分自身を「周りに劣る」と当たり前のように言うと「貴方が一番美しい」というのだ。
「だから、『おかしい』ではなくて、『少しずれている』になるのかしら?」
「そうそう。だって、……そう!ギュンターとかさ、あいつちょっと壊れ気味だけど、めっちゃすごい美形でしょ? 眞魔国でも美形ランキング一位みたいだし」
「今は『眞魔国一変態な美形』って噂らしいですよ?」
あまり知りたくなかった王佐の呼び名に有利の顔が崩れた。
くすくすと笑う相手、テリアーヌス卿セレスティアの揺れる銀色の髪をぼうっと見つめる。
「でも、俺は女性ではセレスさんが一、二を争うと思うんだけどなぁ」
「あら、ありがとうございます。有利。でも私はランキング外ですから」
楽しげに細まる紫色の瞳に苦笑う。
彼女がランキングに出ると、注目がいってしまう。それを厭う、彼女の恋人や幼なじみや兄が妨害しているためにランキングに載らないということを彼女は知らない。
セレスティアに対して過保護すぎる、ゴットファーザー愛のテーマが似合う恋人は本日赤い悪魔に連れ去られている。なので、有利がセレスティアとテラスでお茶をする権利を得ていたりする。
空になった有利のカップにセレスティアが静かにお茶のお変わりを注ぐ。小さく例を告げると、彼女の指で小さく何かが光った。
「あれ、セレスさんって指輪してたっけ? ネックレスにしてるのは知ってるけど」
小指にはめられているのは小さな指輪。
セレスティアは、有利と出逢ったときから少し大きな指輪をネックレスにしていつも首から下げている。今も、彼女の胸元を飾るのはそれだ。
小指の指輪をそっと指先で撫でて、セレスティアは優しく微笑みを浮かべる。
「グウェンに貰ったんです」
「……あれ? でも、それも…」
「はい。これは、交換しているだけなのできちんと嵌められるものをと。グウェンが選んだそうですよ。想像すると楽しくて」
確かに、あのグウェンダルがどのような顔をして恋人に贈る小さな指輪を選んだのだろうかと想像するのは楽しいかもしれない。だが、有利にとっては全く想像がつかず、何か見てはいけないものを見た気分になりそうで、想像できない。
それを分かって言っているセレスティアに苦笑しか思い浮かばない。
交換ということは、首から下げられているものは本来はグウェンダルの指に嵌められるものなのだろう。
ならば、なぜ交換しているのか。
不思議そうに指輪を見つめる有利の視線に気づいたのか、セレスティアはそっと手のひらに指輪を掬う。
小さな手のひらに乗ると、指輪の大きさの不釣り合いさが目立つ。何の変哲もない、飾りがないシンプルな銀色の指輪。裏側に何か彫ってあるようだが、有利からは読み取れない。
「誓いなんです。二人の」
そう言って浮かべられた微笑みは、どこか神聖さを纏っていて(魔族なのに)。有利は笑みを浮かべて「そっか」と言った。
「叶うといいね」
***
甘いのが書きたかったのにほのぼのとしたことに。グウェンもどこに……。
久しぶりに彼女です。
テリアーヌス・セレスティア
グウェンとアニシナの幼なじみでグウェンの婚約者。
結婚まで秒読みだったが、魔王の退位とか即位のごちゃごちゃで流れたまま。
現在はグウェンのあまりの忙しさに、セレスティアが落ち着いてからゆっくり。と言っているため、まったりとした婚約期中。
実は剣の腕と魔術の腕は眞魔国でもトップクラス。
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描写する100のお題(追憶の苑)
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