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小ネタ日記

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まるマ 懐に感じるぬくもり

グウェンダル夢?



 時は26代魔王、フォンシュピッツヴェーグ卿ツェツィーリエの時代。
 戦火は広がり、ついにテリアーヌス卿セレスティア率いる隊にも出動命令が下った。

 そのことに何よりも最後まで反対していた者は魔王陛下たるツェリとその息子達とアニシナだった。
 だが決定事項とされたその命令を苦しむツェリから承けた時、セレスティアの心は穏やかだった。



 出陣の挨拶に赴いたセレスティアにツェリは涙ながらに謝った。


「許して頂戴。いいえ、そんな甘いことを言えないことはわかってはいるわ。でも、でも……っ」
「陛下……」
「んもうっツェリって呼んで頂戴!」
「ツェリ様、よくお聞き下さい」

 ツェリと対して変わらない背丈のセレスティアは肩に顔を埋めていたツェリを真っ正面から見据えた。

「私は誰も恨んでいませんし、憎んでもいません。私は軍人です。軍人である以上、国を守るために全力を尽くします。大切な人の住む国を守るためには命も惜しくない」
「セレス!」
「ですが私は命を粗末にするために赴くわけではありません。だからこそツェリ様にお願いがあります」

 美しい翡翠の瞳に涙をためるツェリにセレスティアは穏やかに微笑んだ。

「祈って下さい。戦が終わるよう、無駄な犠牲が出ることのないように」




 泣き崩れてしまったツェリを付き人に任せるとセレスティアはその場を去った。


 厳かな空気漂う血盟城の廊下を静かに歩き続ける。
 忙しなく人が行き交う公の場と、魔王とその家族の住まう私的の場の区切りにさしかかるとその足を止めた。

 ツェツィーリエの次男、ウェラー卿コンラートは今、ウィンコット領にて剣術指南をしている。
 三男フォンビーレフェルト卿ヴォルフラムも今はビーレフェルトに居る。
 そして、長男フォンヴォルテール卿グウェンダルはこの奥にいるはずだった。
 十貴族の長の一人として、軍事会議に出席しているからである。

 明日には戦地に赴く準備が始まるために挨拶しておきたい人物ではあったが、幼い頃共に過ごしたときとは違い彼にはセレスティアが理解することのできない大きな責任と重圧を背負っている。
 そんな彼に一軍人でしかすぎないセレスティアが挨拶に行ってもいいのだろうかと戸惑いが生まれていた。

 アニシナにも肉親にも友人にも挨拶は済ませた。あとは彼だけ。

 石畳を右に行けば、彼の私室へと。左に行けば、ぐるりと城を回り入り口に。

 誰も通らない廊下の真ん中でセレスティアは石畳を見つめていた。


 だが、結局彼女の足は左へと向かった。


 忙しいグウェンダルの時間を自分のようなただの幼なじみに裂くのは忍びないし、迷惑だろうと結論づけたためだ。

(グウェンから見れば、ただの幼なじみだもの……)


 自嘲し、心の内でぼやくとほんのりと胸の奥がつんとした。


 誰とも会うことなく城の入り口に着いた。
 血盟城内に部屋を賜ってはいたが、どうしても行く気になれなかったために夜まで城下で過ごすつもりだった。

 明日は朝早い。
 もう懐かしい人と会うこともないのだろう。そう思うと少し寂しかった。



(……グウェンに、会っておきたかったな)

 また自嘲した時、廊下の奥から荒々しい足音が聞こえた。
 同時に、大好きな低音の叫び声が聞こえた。


「セレス!! セレスティア!!」

 思わず足が止まった。

 立ち止まったセレスティアを見て声の持ち主は足を止めることなく走り続けた。
 もう一度、今度は静かに名を呼ばれセレスティアは後ろをゆっくりと振り返った。

「閣下……」

 視界に入ったのは深緑色の軍服に剣とベルト。
 ゆっくりと見上げれば、黒に近い濃灰色の長い髪と深い海のような青い瞳。
 冷たい印象を与える彫りの深い顔の眉間にはこれ以上ないくらい深い皺が寄っていた。

 同い年で幼なじみのフォンヴォルテール卿グウェンダルである。魔王陛下の長男である王太子たる彼はヴォルテールを治める長でもある。

「閣下と呼ぶなと何度言えばわかる」

 眉間のしわはそれが原因らしい。

「……ごめんなさい、グウェンダル」

 曖昧に笑うこともできずに俯くと大きな手がセレスティアの顔に添えられクイと上を向かされた。
 見上げると悲しさと、怒りが混ざった青い瞳が目に入った。

「……どうして私には会っていかいないのだ」
「……忙しいと思って」
「私はっ!……私は一言おまえに言わなければいけないことが」

 言葉を遮るようにセレスティアは背伸びをするとグウェンダルの唇に人差し指をあてた。

「あなたが謝る必要はないわ。私が出陣してはいけない理由があるわけではないのだから」
「……」

 何か言いたそうなグウェンダルの視線を無視してセレスティアはしゃべり続ける。
 見た目と反比例するグウェンダルはセレスティア知る限り誰よりも優しく、誰よりも国の安寧を願っている。
 そんなグウェンダルに自分のために悲しい思いを、つらい思いをさせたくなかった。

「私は争いは嫌いよ。だから戦いに行くわ。あなたは、無駄な犠牲を出さないように采配を」
「……っだが」
「このまま酷くなれば、“彼ら”はいらない誹謗中傷を?%E:221%#ッて絶望的な場所に送られてしまう。あなたの大切な弟がよ?それでもいいの?私はいやよ」

 優しくもあり不器用な彼は、すぐ下の弟を血など関係なく愛していることを知っているからこそ。

「ありがとうグウェン。最期に会えて良かったわ」

 背伸びをやめて、そっとグウェンダルから離れたセレスティアは穏やかに微笑んだ。
 それがなぜか最期の別れのように見えたグウェンダルは思わず腕を伸ばした。

 優しくではなく痛いほど抱きしめられたセレスティアは彼が泣いているように感じた。

「……必ず帰ってこい。生きて帰ってくるんだ」
「……ええ」



(不思議な言葉でいくつかのお題)

気づいたらすごく長くなりました。愛故ということにしておいて下さい。
原作>マ王!ではありますが、話の展開的にマ王!の方が書いていて平和になりそうです。
断然原作派ですが、書くならマニメ……。

原作っぽくつけるならグウェンダル夢が「マのつく風と共に」で、ギュンター夢は「あなたとマのつくワルツを」
的な副題です。本題にすると面倒そうなので。

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