それは魔法の言葉。
「りゅーうーれーん!!」
「何をそのように怒っているのだ心の友よ」
「怒るに決まってるでしょうが!! 離れなさいよ!」
「なぜだ? 心の友には迷惑をかけておらぬと言うのになぜそなたは怒る」
心底わからないといった顔をする龍蓮を見て秀麗と彼のやりとりを見ていた影月と有紀は、プツンと何かが切れる音が聞こえた気がした。
秀麗は勢いよく龍蓮を有紀から剥がすと彼の胸ぐらをつかみ、身長差があるのにも関わらずゆさゆさと揺すった。その目は据わっていて少し怖い。
「私の大切な有紀姉さまに迷惑をかけることは私が何よりも許せないのよ!」
「なんと、我が旅の朋である有紀は秀麗の姉でもあったか!」
「そうよ! なんか文句あるの! だから今後一切有紀姉さまに迷惑をかけたら許さないわよ!」
不思議そうな表情を一転うれしそうな龍蓮を見て、また怒る秀麗の姿に有紀は思わず笑いがこみ上げてくるのを堪えきれなかった。
そんな有紀を影月は首を傾げて見上げる。
「有紀さん?」
「ふふ、ごめんね。ただすごくうれしいなって」
「えっと、秀麗さんと龍蓮さんが仲がよろしいからですか?」
「それもあるけどね。秀麗ちゃんが、まだ私のことお姉さんだって思っていてくれることも、龍蓮がああやってうれしそうなのも」
きっかけは些細なことだ。のんびりとくつろいものをしていた有紀の背中に龍蓮がべったりともたれ掛かり、危ないから離れるように言ったのに聞き入れない龍蓮に秀麗が業を煮やした。ただそれだけ。
「二人とも私のこと好いてくれてるのかなって思えて嬉しいの。……浅ましい考えだと思うけど」
苦笑いを浮かべる有紀に影月は、ほんわかと笑った。
「僕も有紀さんがお姉さんみたいで好きですよー」
「ふふ、私も影月君も好きだよ」
あたたかい気持ちが生まれる。
好きだと、ありがとうという言葉は心をあたためる。
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(不思議な言葉でいくつかのお題)
[2回]
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