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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

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FE烈火 草原のシンフォニー

 幾度と季節が巡ろうとも、君は私の記憶の中の君で。




 鋭く風を切る音がする。
 耳が偶然拾った彼がそちらを見ると、短槍を振るう
 風をつく音と共に揺れるざんばらな灰色の髪。普段は風のまま肩で揺れるその髪を首もとでひっつめて、時折覗く暗紫の瞳は真剣な光を宿しまっすぐに前を向いていた。

「―はっ!!」

 ぶんっ!勢いよく風を切り槍を突き出すと同時に覇気が飛ぶ。

 彼女の纏うマントが揺れて、草原で布が舞っているように見えた。


 いったいどれくらいの間見ていたのだろうか。何時間か、もしかしたら数分かの間中槍を振るっていた彼女は動きをやめて草地の上に唐突に横になった。

 驚いた彼はじっと見ていたことも忘れて、彼女の名前を呼んで駆けだしていた。
 草地だろうと沼地だろうと構わず倒れ込んだ彼女の元へと駆ける。

 柄にもなく気が逸り、足がもつれそうになる。


 駆け寄ると、なんてことはない。彼女は倒れ込んだのではなく、気持ちよさそうに草地に寝ころんでいた。

「ケント?」

 どうかしたのかと問いかけてくる柔らかな光を宿した眸に見上げられケントは、深くため息をついてからゆったりと笑った。

「いや……。急に倒れられたから驚いて」
「鍛錬の後に草原に寝転がるのが昔から好きなの」

 隣にどうぞと言わんばかりに手で右隣をたたくキリエに苦笑を漏らし、一言告げてから彼女に倣い仰向けに転ぶ。





 赤い騎士が草原に沈むのを見てエリウッドは首を傾げた。

 先ほどまで遠めにキリエの鍛錬を見ていたと思ったら急に駆けだしていったリンディス騎士団の赤騎士。キリエが横になった場所に屈み込んだと思ったら先ほどの彼女に倣い彼も地に消えたのだ。

 エリウッドと同じように目撃していた軍師をちらりと見るが彼女は特に琴線に触れる出来事はなかったのか我関せずといった風に再び地図を見ていた。

「レフィル殿は気にならないのですか?」
「何を、とお聞きしても?」
「キリエ殿とケント殿が何をしているのか、ですが」

 エリウッドの言葉に彼女は再び草原の向こうを一瞥すると、そのまま空を見た。そして草原の奥に広がる森を見て、黙視はできない距離にある川を見た。
 エリウッドもレフィルにつられて同じものを見るが、さっぱり理解できない。


「ただの休憩ですよ」
「休憩、ですか?」
「エリウッド様も鍛錬の後は休憩なさりますよね?彼女の場合は終わった途端にあのように休憩を取るので。ケント殿は驚いたのでしょうね。そしてそのまま横になるように誘われた」
「……なるほど」

 まるで端から見ていたようですね。と笑いながら言うエリウッドにレフィルはフードの合間から覗く赤い瞳を柔らかく細めた。


「昔からの癖ですよ」

 ちらりと森を見て、レフィルはさらに

「あと五分もしたら次はケント殿の剣とキリエの槍で打ち合いでも始めますよ。混ざりたければ、二人の間合いが離れたときにでもお声をかけなさればいいですよ」


 予言めいた言葉を残してレフィルはお先に、と陣営に戻っていった。
 その場に残されたエリウッドは暫しその後ろ姿を見送っていたが、キリエと手合わせできるならばと軍師の言葉を疑いもせず、手合わせを始めた二人の元へと歩いていった。




(様々な曲で21のお題)

未だにヘクトル編のジャファルとニノが仲間になったところで止まっています。

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BASARA 砕いた三日月の断片

デフォルト名:神崎紗英(かんざき さえ)




 不意に口ずさむのは幼い頃歌っていた歌。
 縁側に腰掛けて姉と共にご機嫌に歌ったのは遠い昔。




 ワンフレーズを歌い終えた紗英は、目を閉じて頬を撫でる風を感じた。
 湿った土のにおいと、生々しい草のにおいが風に乗って運ばれてくる。
 行儀が悪いとは分かってはいるものの濡れ縁に腰掛けて放り出した足をぶらぶらとさせた。

 次は英語でいってみよう。なんとなく浮かんだメロディーを口ずさみ、昔友達に教えてもらったゲームの主題歌を歌う。

 日本語の歌詞も好きだが、独特な雰囲気のある英語の歌詞も好きだったそれ。もちろんうろ覚えだ。だがこの場所には哀しいことながらそれにつっこみを入れる人はいない。

 1番を歌い終わり拍を取っていると、腰掛けている簀の子板から誰かが歩いてくる振動が伝わってきた。


 誰が来るんだろう。と心の中で拍子を取りながらおそらく人がやってくるだろう方向を見た。


「紗英殿であったか!」

 濃紺の着流しを着て颯爽と歩く幸村だった。

 ラーメンどんぶりを持ち、携帯と財布と英単語帳を持って深夜に武田信玄が居館、躑躅ヶ崎館に不法侵入を果たした紗英だったが。心の広すぎる武田信玄に保護され今ではその一番弟子であり武田が一武将、真田幸村の屋敷で世話になっていた。


 幸村と話すならば拍子を維持するどころではないなと思い、急遽取りやめた紗英は幸村を振り返った。


「どうかされたんですか?」
「うむ。なにやら聞いたことのない歌が聞こえた故、探していたのでござるよ」

 紗英殿が歌われていたのであるな。と楽しそうに笑うと、「失礼する」と一言告げて紗英の隣に一人分の空間をあけて腰掛けた。

 思わず幸村を見て笑いが零れる。彼は、二人としてみないほどに純情で最初の頃は顔を合わせるだけで赤面していた。女の大人、子供問わず言葉を交わすのもままならないほどに異性に対して免疫がなかった。

 赤面と女子と共にいる緊張が高まると(もしくは不意な接触があると)「破廉恥であるぅぅーー!!!」と凄まじい叫び声をあげて逃げ出すほどだ。(紗英は出会い頭に会って、腕を剥き出していただけで言われ、佐助と話していただけでやられた)
 さすがに始め三回ほどは驚いていたが、何故自分が「破廉恥」と言われ、逃げられるのか分からなくなり、次第に腹が立ってきたので四度目に叫ばれた瞬間。

 尻尾のように伸びている彼の長い後ろ髪を力任せに引っ張り「うおっ!!」と声が聞こえても気にせずに、ガクンと体勢を崩した幸村の膝裏を思い切りけ飛ばし転ばせた。

 呆気にとられる周りを気にせず、仰向けに倒れぽかんと紗英を仰ぎ見る幸村の耳元にしゃがみ込むと、多きく息を吸い込み、

「人を見て破廉恥破廉恥叫ぶ方が余程破廉恥だわー!!!」

 大声で叫び、目を回す幸村を見捨ててあてがわれた部屋に籠もり一週間ほど幸村と顔を合わせず口を利かなかった。

毎日一緒に縁側でお茶と団子を食べていた日々を紗英からぷつりと切り離したのだ。
 それが効果を発揮したのか、幸村が(おそらく佐助にけしかけられて)紗英に謝りにきた。それからは比較的普通に会話ができるようになったのだ。

 そんなことがあり、今では隣同士で腰掛ける際、一人分をあけて座るぐらいには近い。

「紗英殿が歌われるものは其の聞いたことのないものばかりでござる」
「んー幸村さんが知っていたらそれはそれで驚愕ものだけど」
「とても不思議な旋律だが、どこか郷愁を覚えずにはいられぬ歌だと思う」
「……好きな歌手の歌なんです」
 とても素敵な歌ばかり歌われてるんですよ。と幸せそうな悲しそうな双方をごちゃ混ぜにした笑みを浮かべる紗英に何か声をかけねばと幸村は思うものの、そういったことは苦手なために何一つ気の利いた言葉が出てこない。代わりに口から出たのは「かしゅ、とは何でござるか?」という会話の続きだった。

 内心で自分の不甲斐なさに憤る幸村に気づかずに、紗英は言葉にならない音を漏らしながらゆっくりと言葉を選んだ。

「私の世界では、歌を作り、歌うことを職業としている人を歌い手と書いて歌手と呼んでるんです」
「かしゅとは歌い手のことでござったか! では先ほどから歌われているものはその紗英殿が贔屓になさっておられるかしゅの歌で?」
「そうなんです。」

 どこか寂しさを漂わせながら紗英は笑顔を浮かべた。
 だが幸村は紗英とは対照的に爽やかさのにじみ出る笑顔を浮かべた。

「紗英殿が構わぬと思ってくださるのならば其、紗英殿が歌われる歌を拝聴したいのだが……」

 好奇心にあふれる双眸は興味で爛々と輝いていて否、と言い出せない何かがあった。
 心の中の虚を埋めるような暖かなものが流れ込むが、その流れに流されるのがなんとなく嫌で。



「じゃあ、恋歌でも歌いますね!!」
「は、破廉恥である!!!」


(不思議な言葉でいくつかのお題2)

チャルメラ~の子です。この子は幸村フラグでいきますが、かすがちゃんとも絡めたいなぁ。

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BASARA チャルメラに別れを告げ

※チャルメラ~の続きです。

デフォルト名:神崎紗英(かんざき さえ)





 不意に目が覚めた。
 どちらかと言うと目覚めのいい朝と言うべきだろう。だが、目がぱっちりと開いても体が動くのを嫌がっていて、布団をめくる気がしない。

 よってぼーっとしたまま天井の木目を数えていた。


「14、15……私の部屋の天井ってこんな柄だっけ……?」

 木目があるのは和室のはずだ。ということは昨夜は和室で寝たのだったろうか。


 木目を数えるのをやめて、暫し昨夜の自分の行動を思い出してみる。

 思い出せば思い出すほど混乱してきて紗英は思わず、がばりと上半身を起こした。握りしめた掛け布団を強く握る。

「テスト勉強してて、おなかすいたなぁとか思ったらチャルメラが聞こえて、単語帳と財布と携帯持ってラーメン買って、玄関開けたら知らない家にいた……。ははは、そんな馬鹿な夢……」

 笑いながら思わず自分が寝ている布団の周りを見る。

 昨夜確かに着ていた自分の洋服。携帯や単語帳を放り込んだポシェット(和風柄)と携帯と単語帳と財布。


 ?%E:221%#ノなったどんぶりと箸。

「あ、洗ってない…」

 思わず呟くが「そういう場合じゃないし」と一人ノリつっこみが起こるのは混乱のしすぎか。


「と、とりあえず……」

 きょろきょろと部屋の中を見渡す。
 自宅の和室よりも広い室内は純和風、というよりも古典の教科書に載っていそうな写真の部屋のようだった。

 板の間には花が生けられ、畳は傷みがほとんどなく、部屋の中はほんのりとい草のにおいがした。部屋の片隅には蝋燭でも立てるような台がある。そういえば昨晩は蝋燭の火がついていたような。

 自分の格好を見下ろすと、寝相で着崩れた薄い着物。

「……着替えるか」

 赤いポロシャツにジーンズ、薄手のカーディガン。情けないことに靴はお気に入りのものではなくて、玄関でつっかけたサンダル。そういえばサンダルはどこにいったのだろうか。


 着替え終わり取りあえず、浴衣を畳み、布団も畳む。
 ちらりと襖を見るが、部屋の外に出てもいいのか迷う。誰も見ていないのに畳の上に正座をしてしまう。

 人様の家に不法侵入したのにも関わらず親切にも泊めてもらったのだ。勝手にうろうろと歩いたらまずいだろう。


「おっはようさん」
「っ!」

 廊下から急に声が聞こえて驚き肩がビクリと大げさに反応してしまう。
 意味もなくキョロキョロと室内を見渡し、襖までにじり寄ると恐る恐る襖を右に開く。

 迷彩柄を着た鮮やかな橙色の髪を持つ顔に不思議なペイントをした人がいた。けれどその顔から紡がれる声は昨晩ここに紗英を案内した男の人だった。

「おはよーよく眠れた?」
「は、はい。(昨日は気づかなかったけどすごい派手な人……)」
「早速で悪いんだけど、大将たちが一緒に朝餉でもどうかって」
「え、いいんですか?(大将“たち”?)」
「うん。準備できたならついてきてもらっていいかな?」
「わかりました(っていいのかなぁ……)」
「じゃあ行こっか」
「はい。あ(えーと、さ……さとび?じゃなくて」

 襖を閉めて迷彩柄の派手な人についていきながら彼の名前を思い出そうとするがなかなか思い出せない。

 “さ”で始まると言うことは覚えているのに、全く持って人の名前を覚えることが不得手な紗英はこういう時にいつも困るのだ。

 まあいい。どうせ悩んだところで名前は出てこないのだ。ということで名前を忘れたときにいつも使う手段を使用することに決めた。

「今更ですがおはようございます」
「うん?おはよう」

 驚いた顔をされた。よく見るとかっこいい顔をしているが目を丸くしている姿はなんとなくかわいい。

「あなたのことはなんとお呼びすればいいですか?」

 ちなみにこの場合、相手の年齢が近いときはもうちょっとフランクに「お兄さん」呼びするのがいつもの手だ。
 橙色した青年は(紗英よりだいぶ背が高いから顔を覗こうとすると首が疲れる)きょとんと紗英を見下ろした。

「あれ、俺様名前言わなかったっけ?」
「(お、俺様?)あ、いえ。どちらで呼べばいいのかと思って」

 一瞬某魔法学校に出てくる魔法使いを想像してしまったのは置いておいて、一応否定した。名乗られたが紗英が忘れただけなのだ。

「どっちでもいいよ。猿飛でも、佐助でも。どちらかというと堅苦しいのはなくして佐助って呼んでくれると俺様うれしいな」
「(俺様?!)えと、じゃあ佐助さん。よろしくお願いします」
「うんうん、よろしくねー紗英ちゃん」

 ちゃん付けなんて久しぶりに呼ばれた気がした。
 静かに廊下を歩いているつもりでも、何故か音がするのは鳴り板だからだろうか、とぼんやり思いながら庭を眺める。

「佐助さん、ここってどこですか?」
「ん? 紗英ちゃん知らないの?」

 不思議そうな声音だが、どこか違和感を感じる。けれど今の紗英にとってそんなことはどうでもよかった。
 今日は英語のテストなのだ。熱が出ても這ってでも学校に行かなければいけないのだ。

「ここは大将が治める甲斐の国だよ?」
「かいのくに?」

 かい。貝。海。順々に漢字変換されていくが、うまく変換されない。

「…ここって日本、ですよね?」

 流石に訝しく思ったのか佐助は足を止めて紗英をじっと見下ろした。焦げ茶の双眸が何かを見定めようと紗英を見透かしていた。

「日の本の国、だよ」
「……富士山近いですか?」
「富士の山はずっと南下したとこにあるかな」

 富士山よりも北。ということは……。

「山梨県……でいいのかな」
「やまなしけん?」
「明治の廃藩置県でそうやって名前が変わったの。って、え?知らないの?」
「ここは甲斐の国。甲府だけど?」

 先ほどの怪しいものをみる視線はどこへやら。互いに困惑を浮かべた顔でへらりと笑いあうとどちらからともなく歩き始めた。

「(俺様の手に負えないねこりゃ)」
「(そういえば昨日会った親切なおじさんの名前って確か……。まあいいや)」

 二人して自分の判断を投げる形になっていた。







 佐助に促されて到着した部屋では、恰幅のいい丸坊主の男性と、濃紺の着物を身につけた紗英と同じ年ほどの少年がそれぞれ用意された膳の前に正座していた。


「(ここは何時代?!)」

 男性の座る位置が上座なのだろう。後ろには『風林火山』の掛け軸がかかっている。

「おお、呼び立ててすまんかったの。よかったら共に朝餉を食おうと思ってな」
「えと…ありがとうございます」

 静かに会釈をしてから部屋にはいると、一つ?%E:221%#「ている膳の前に促され座る。
 不躾と知りつつ部屋に視線を巡らす。
 恐れ多くも館の主の真っ正面の席だ。
 大きな体格の真っ正面の男性は、にじみ出るオーラが尋常ではない。紗英にオーラなんて見えはしないが。そんな気がするのだ。あと威厳がものすごく漂っている。古参の体育の先生を思い起こさせる。

 次に紗英と同じ年ほどの少年をみた。

 ジャニーズ系の顔立ちをしている。同じ高校にいたら確実に女の子に騒がれていただろうと予想がつくほど整った顔立ちをしている。けれど同時に男子にも好かれそうな顔立ちだ。
 短めの焦げ茶で、何故か後ろだけ長い尻尾のような髪を持っている。何に緊張しているのか正座の膝の上に置かれた手にもの凄い力が込められているようでぷるぷるとふるえている。

「ーーっ!!」

 目があった瞬間に伏せられた顔は、真っ赤になっていた。


 自慢ではないが紗英は十人並みの顔立ちである。見られないほど不細工ではないと思っているし、目があった瞬間に赤面されるほどかわいい顔をしているわけではない。
 という認識は決して間違っていない。

 では何が原因なのか。紗英には見当がつかなかった。


「はははは!!まあよい気にせずとも、こやつの反応はいつものことよ。まずは腹ごしらえが先じゃ。のう佐助」
「はいはい用意できてますよ」
「後でお主の話を聞かせてくれまいか?」
「はい、わかりました」

 男性は鷹揚に頷くと?%E:221%#フ茶碗佐助に向かって突きだした。
 佐助がいつの間にかお櫃を持っていたことも、男性の持っている茶碗や佐助の持っている櫃が異様にでかいことに紗英は目を剥いた。

「はいよっと。旦那? だーんーなー? 真田の旦那は飯いらないの?」
「いらぬとは一言も言っておらぬ!!」
「はいはいっと。紗英ちゃんはどのくらい?」
「えっと、自分でできますよ?」
「いいからいいから。少な目?」
「はい。ありがとうございます」
「おやすいご用ってね!」
「佐助!!次だ!!」

 紗英の目の前に白米が盛られた茶碗が(普通の大きさだ)置かれると同時に少年はすでにおかわりを所望していた。
 いくらなんでも早すぎではないだろうか。


 朝ご飯は小食な紗英はゆっくりと膳の食事を浚えていったが目の前では壮絶なおかわり合戦が繰り広げられていた。

 見ているだけでおなかがいっぱいだ。





「改めてじゃが、儂は甲斐を治める武田信玄じゃ。こやつは武田が一番槍」
「真田源二郎幸村と申す!!!」
「こやつは、真田忍び隊の長」
「猿飛佐助だよ」

 膳が下げられた室内で一人正座をした紗英は、昨夜聞いた名前と先ほど聞いた名前と初めて聞いた名前を心の中で復唱した。


 日本史に疎く、大河ドラマをあまり見ない紗英でも知っている名前が二つ。



「神崎紗英です。グレゴリウス歴2008年の平成の時代からきました」


 武田信玄っていつの時代だっけ?



**

 突然朝からお館様と幸村と朝飯です。このメンツのお給仕は佐助がやってるといい(笑)

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FE烈火 星屑狂詩曲

 まるで耳元で星の瞬きが聞こえるように、宵の闇は静まり返っていた。

 響くのは聞こえるはずのない星の瞬く音と、薪のはぜる音。そして、幾人かの話し声。


「キリエさん、久しぶり~」
「ええ、お久しぶりですマシューさん」
「なんだマシュー、お前はキリエと知り合いだったのか?」

 薪を焚き火に追加しながらヘクトルはマシューを見た。その顔は「そんな話は聞いていないぞ」とでも言いたげである。
 焚き火の炎がヘクトルの青い鎧に反射して生み出される不思議な陰影を見てマシューとキリエは口角をあげた。

「いやだなあ若様。リンディス様について回ったときに知り合ったんですよ」
「まさかマシューさんがオスティアの名うての密偵だとは知りませんでしたけど、その節はお世話になりました」
「いえいえ~」

 乾いた笑みで笑うマシューに「…なにがあったんだ、こいつら」と思ったヘクトルだが、彼は珍しく賢明にも声には出さなかった。

 突然エリウッドと現れた槍使いはさっそうと短槍を振るい、状況を一転させた。
 味方の登場に喜びたいという気持ちよりも「こいつ誰だ」という気持ちが先行したが親友のエリウッドも信用しているようだからとりあえずは、という思いで戦況に専念した。

 すぐにエリウッドについている軍師の親友だと知れたのだが。

 ヘクトルは自分で見たことしか信じない。だからいくら自分が信じることにしたレフィルという軍師が「信ずるに値する友だ」と言おうとも、「信ずるに値する」かとうかは自分が見極める。


 そんなことを一念発起したヘクトルは焚き火の前に腰を下ろすキリエの傍に同じく腰を下ろした。のだが、なぜかついてきたマシューがヘクトルを遮り冒頭に至る。


「キリエは傭兵だ、っつってたな」
「はい」
「……これからどうするつもりだ?」

 キリエは迷う素振りを見せずににっこりと笑った。愚問だと、答えははじめから一つなのだというように。

「レフィルが私を必要としてくれるなら、この旅の終結までつきあうつもりです」
「…傭兵だってのに無償でか?」

 彼女は楽しそうに笑うとヘクトルから目を反らして静かに燃える焚き火を見た。

「雇われればそれなりに振る舞います。でも私にとってレフィルの下について旅をすることは傭兵としてではなくてただの槍使いとして、自分の修行も兼ねているんです」

 うまく言葉にできないんですけどね。と苦笑いを浮かべるキリエに隣で聞いていたマシューが口を挟む。

「俺が知ってるのは去年の話だけですけど、傭兵としてキリエさんはいなかったですよ若様」
「……だがそんなんでやっていけるのか?」

 そんな返しがくるとは思わなかったキリエは軽く目を見張った。
 正直言って根無し草のキリエは野宿は堪えない。けれどやはり路銀というのは必要不可欠なのだ。
 あえて言葉を避けてキリエは曖昧に笑ってみせた。

「俺がお前を雇うっつったら、どうする?」
「若様?」
「あんたはやり遂げたいなんかがあるっつってたよな」

 『志半ばの武者修行中の傭兵やっています』
 そんな曖昧な自己紹介がヘクトルの脳裏をよぎる。
 けれど、言葉とは裏腹に瞳は真剣な光を灯していたことがとても印象に残っていた。


 こっちはどんな味方でもいいから欲しい状態だ。敵方の全容がまるで見えないのだから。

 たとえ目の前の槍使いが親友のためにその槍を振るうと言っていても、正式に雇用しておいた方が無難な気がしてならないのはヘクトルの考え過ぎなのか。


「お前を雇いたいっつったらどうする?」

 キリエはただ笑うだけだった。


(様々な曲で21のお題)

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彩雲国 岩場に残る爪痕

 決して、消えはしない。
 たとえ見えなくとも、決して。



「……!!」
「っとどうした、有紀?」

 どくどくと脈打つ胸をそっと抑えて有紀は小さく頭を振った。

「ううん、なんでもない」
「なんでもないわけあるか! 真っ青だぞ?」


 心配そうな燕青の声に、有紀は力なく笑った。
 机に突っ伏すように寝ていた体勢に体が驚いて起きた反動で目が覚めたのだが、それ以外の理由で目が覚めたのだ。

「なんかヤな夢でも見たのか?」
「……ううん、別に―――」
「こら」

 隣に座り込んで有紀の顔をのぞき込んでいた燕青に額を小突かれた。力馬鹿な燕青には珍しく手加減された力だった。
 小突かれた額をそっと手でさすると真剣な目をした燕青に睨まれて思わず言葉に詰まる。

「俺に隠し事は通じないって何度言えばわかるんだ?」

 何でもお見通しな深い色の瞳から目を反らすと観念してかゆっくりと息を吐いた。

「……夢、を見たの」
「怖い夢か?」

 茜色に広がる白い雲。消えかかった飛行機雲。遠くに聞こえる懐かしい喧騒。


 けれど、そこに自分の居場所はない。


 怖い、といえば怖い夢だろう。だから、有紀はゆっくりと顎を引き肯定を示した。

 そうか、と呟く声とともに大きな手が有紀の頭を乱暴にかき撫でる。
 それには嫌がらせの意図が含まれていないことが分かるためにおとなしくされるがままになる。


 いつまでそうしていただろうか。不意に頭から引いていった大きな手のひらを名残惜しげに眺めると、燕青の暖かな笑顔が目に入る。

「有紀、前に棒術やりたいってたな」
「言ったけど…燕青も老師も忙しいから無理だって……」
「今から少しだけ教えてやるよ。この燕青様が直々にな」

 にかっと笑う燕青は立ち上がると、大きくてごつごつとした手で有紀の手をつかみあげるとあの太陽のようにまぶしい笑顔で笑った。

 強引に立たされた有紀は慌てて転ばないように手を引く燕青についていく。

 前を歩く燕青は相変わらず有紀の歩幅を考えずに歩き、楽しそうに「ビシバシやるから覚悟しろよ~」なんて言っている。

 その言い方がいつもと変わらない燕青で、引かれるてから伝わる彼の優しさに思わず顔が綻ぶ。

 燕青は優しいし、厳しい。

 そんなところがすごく好きな有紀は、前を歩く大きな背中に声をかけた。


「ありがとう、燕青」
「なにがだー?」


 立ち止まらずに振り返る燕青は、柔らかい微笑を浮かべていてなにもかもがお見通しのようだった。

 惚ける燕青に併せて有紀は頭を振った。

(不思議な言葉でいくつかのお題2)

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【遙かなる時空の中で3】
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【明烏】
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【彩雲国物語】
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