空は青く、どこまでも広がっていた。
「アトラスーー!!!」
悲痛なその声を聞きながら、アトラスは宙へと身を委ねた。
常人よりも優れているその視力によって捕らえた彼の顔は、驚愕と悲愴をごちゃ混ぜにし、何かを叫ぼうとして言葉を忘れてしまった人のように呆然としていた。
そんな彼の貴重な表情が見れたことを喜び、アトラスの意識は霧散した。
その日は、いつもよりも嫌な偶然が重なった日であった。
街を発ち、次なる街に到着する直前。
荷も少なく、貴重なグミ類も底をつく寸前で、仲間達の疲労の色も濃い。
そんなときに限って、若干強めのモンスターが群れで現れる。
「はぁっ!!」
翻した剣は鮮やかに敵を切り伏せる。すぐさま、剣を払い、囲まれている少年の援護に向かう。
足場が悪い戦闘。連携を崩され、個々ばらばらの状態で戦いを挑まれる。
知能指数の高いモンスターはこういうところが厄介であった。
襲い掛かる獣の牙を剣で受け止め、力押しする。鈍い音を立てて離れる敵を剣がかすめ、アトラスは背を向け走る。
「ロイド!!」
目指す先には、旅立ちのときよりも逞しくなった少年が双剣を振るっている。だが、どうにも敵が多すぎる。
いつもなら彼のフォローに回るはずの彼は、この仲間達の最も守るべき少女とともに苦戦を強いられていた。
その少女は幼馴染のもう一人の少年と恩師を守っている。
アトラスとロイドだけが、輪から外れていた。
さらにその二人も離されていた。
なんとかアトラスが走りより、背後をともに庇いあう。
剣を振るい、言の葉を唱えながら、腕を翻す。
「――サンダーブレード!」
突き出した剣の指す方に落雷が落ちる。
「やったな、アトラス!」
数が減り、安堵する。後方からホッとしたようなロイドの声が聞こえた。
その声にこたえようと、振り向こうとしたアトラスの視界の端に何かが横切った。
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時間ギレなのでとりあえず、ここで一旦。
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