TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。
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長い悪夢でも見ていたのだろうか
何もかもを洗い流すように降り注ぐ雨。
草木は好機とばかりに天へとその身を伸ばす。
恵みでもあり脅威でもあるそれらは感動と畏怖をもって迎えられた。
体に当たる雨には気にも止めず一人の人影が立っていた。
その顔には何も宿さず、藍を宿した双眸は薄暗い雨を降らす空を映していた。
「――藍の方」
シワがれた声に雨の中に佇むその人は振り返った。
雨に濡れ、顔に張り付いた髪を軽く払うと笑う。
「なにか? 語り部」
「風邪をひかれる。……中へ」
軒下で読めない表情を浮かべているその人物はどこか気づかわしげな声色だった。
そんな心配を小さく笑うと雨の中の人は背を向け奥へと歩き始めた。
「私は、また間違えたのかな」
呟きは雨に消された。
「……私も、君と同じ気持ちを味わったよ。二度と出逢いたくない絶望という闇と共に、幸福を味わった。――君には信じられないかもしれないけどね、だって私にも信じられないんだ」
笑いを滲ませるその声は果たして天まで届いたのだろうか。
[0回]
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空は青く、どこまでも広がっていた。
「アトラスーー!!!」
悲痛なその声を聞きながら、アトラスは宙へと身を委ねた。
常人よりも優れているその視力によって捕らえた彼の顔は、驚愕と悲愴をごちゃ混ぜにし、何かを叫ぼうとして言葉を忘れてしまった人のように呆然としていた。
そんな彼の貴重な表情が見れたことを喜び、アトラスの意識は霧散した。
その日は、いつもよりも嫌な偶然が重なった日であった。
街を発ち、次なる街に到着する直前。
荷も少なく、貴重なグミ類も底をつく寸前で、仲間達の疲労の色も濃い。
そんなときに限って、若干強めのモンスターが群れで現れる。
「はぁっ!!」
翻した剣は鮮やかに敵を切り伏せる。すぐさま、剣を払い、囲まれている少年の援護に向かう。
足場が悪い戦闘。連携を崩され、個々ばらばらの状態で戦いを挑まれる。
知能指数の高いモンスターはこういうところが厄介であった。
襲い掛かる獣の牙を剣で受け止め、力押しする。鈍い音を立てて離れる敵を剣がかすめ、アトラスは背を向け走る。
「ロイド!!」
目指す先には、旅立ちのときよりも逞しくなった少年が双剣を振るっている。だが、どうにも敵が多すぎる。
いつもなら彼のフォローに回るはずの彼は、この仲間達の最も守るべき少女とともに苦戦を強いられていた。
その少女は幼馴染のもう一人の少年と恩師を守っている。
アトラスとロイドだけが、輪から外れていた。
さらにその二人も離されていた。
なんとかアトラスが走りより、背後をともに庇いあう。
剣を振るい、言の葉を唱えながら、腕を翻す。
「――サンダーブレード!」
突き出した剣の指す方に落雷が落ちる。
「やったな、アトラス!」
数が減り、安堵する。後方からホッとしたようなロイドの声が聞こえた。
その声にこたえようと、振り向こうとしたアトラスの視界の端に何かが横切った。
**
時間ギレなのでとりあえず、ここで一旦。
[0回]
手向けの花束は、何色にしようか
「久しぶりだね」
陽が誰にも言わずに昇る。
暗闇に茜注すその間際。
アトラスは笑い、花束を手向けた。その先には無機質な石の群集の一つ。
刻まれる文字は見慣れた言葉。
自分以外に来るものは居ないはずなのに、何故か綺麗になっているそれを見て、小さく笑う。
「・・・彼に先を越されるなんて、・・・失格かな?」
涼しげな風が髪をさらう。されるがままにしながら、彼女は石を見続ける。
「もうすぐ、願いが叶うかもしれない」
それは自分に言い聞かせるような言葉で、誰に聞かれることなく言葉は宙へと消えた。
「・・・・・・どうしようか」
ふと、泣き笑いの表情を浮かべた。自嘲も入っているのに本人は気づかない。
「もう、私にはどうしようもないのかもしれない。道を踏み外してしまったのは皆同じだ。・・・どうしたらいいでしょうか・・・」
**
時期的には○○です。伏字意味不明ですね。分かったあなたはもう連載を知り尽くして、しかもエスパーです。
さて、誰の墓石に語りかけているのでしょうか。
かなりオリジナルさんに話しかけてます。
[0回]
本館連載中の『ensemble』の本編連載のネタバレがバリバリです。
今更、ネタなんか知れてんだよ。なんていう方はどうぞ。
[0回]
つづきを読む
「あたし、ジーニアスのこと好きだよ?」
そんなことを幼なじみ以外に面と向かって言われたのは初めての事だった。
それは、ハーフエルフの差別を無くすために姉と出た旅先でのこと。
少し滞在することになった街の少女と仲良くなったジーニアスは話しの流れに関係なく突然言われた。
「で、でもボク。ハーフエルフだよ?」
「それが?」
彼女が楽しそうに首を傾げるのを見てジーニアスは失言であったこと気付き、決まりが悪そうに笑った。
「ハーフエルフとかエルフだとか、人間だとか…。そういう、ささいな違いで差別するのはおかしいと思うの」
彼女はそういって手元のストローをいじった。氷がカランと音を立てる。
「確かに生き物って、特に守護欲とかがあるのはさ、『敵』『味方』と分けると思うの。でも分けなくてもいい区分さえ設けるのは、なんだか心が貧しく感じるのよ」
短い付き合いの中で知った彼女はあまり話す方ではない。だが、行動の端々に感じられる優しさと、少ない言葉の中に込められる優しさ。それらにジーニアスは気付いていた。
そして彼女が今のような早口になるときは一生懸命何かを伝えようとするとき。
「そういう心が貧しい人に、豊かさを渡してくれようとしているジーニアスはスゴイと思う。ジーニアスのひたむきさが好きなの。だから応援したい 」
彼女のような優しい人間がもっといてくれたら……。
「……ありがとう」
そう言うと、彼女は困ったように笑った。
「困らせたかったわけじゃないの。引き止めたかったわけでもないの。ただ……」
無言で続きを促すと、彼女は恥ずかしそうに笑った。
「ジーニアスのこと、応援してる人間がこの街にいるって覚えていて欲しいの」
気持ちに応えてほしいわけじゃない。
そんな声が聞こえた気がした。
「うん。わかった」
だから自分も敢えてなにも言わない。
その意志を表すと彼女はほっとしたようだった。
**
ジーニアスが17歳くらいのイメージで。カッコいいでしょうね。
その頃、ロイドは22歳ですかね?
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