「あたし、ジーニアスのこと好きだよ?」
そんなことを幼なじみ以外に面と向かって言われたのは初めての事だった。
それは、ハーフエルフの差別を無くすために姉と出た旅先でのこと。
少し滞在することになった街の少女と仲良くなったジーニアスは話しの流れに関係なく突然言われた。
「で、でもボク。ハーフエルフだよ?」
「それが?」
彼女が楽しそうに首を傾げるのを見てジーニアスは失言であったこと気付き、決まりが悪そうに笑った。
「ハーフエルフとかエルフだとか、人間だとか…。そういう、ささいな違いで差別するのはおかしいと思うの」
彼女はそういって手元のストローをいじった。氷がカランと音を立てる。
「確かに生き物って、特に守護欲とかがあるのはさ、『敵』『味方』と分けると思うの。でも分けなくてもいい区分さえ設けるのは、なんだか心が貧しく感じるのよ」
短い付き合いの中で知った彼女はあまり話す方ではない。だが、行動の端々に感じられる優しさと、少ない言葉の中に込められる優しさ。それらにジーニアスは気付いていた。
そして彼女が今のような早口になるときは一生懸命何かを伝えようとするとき。
「そういう心が貧しい人に、豊かさを渡してくれようとしているジーニアスはスゴイと思う。ジーニアスのひたむきさが好きなの。だから応援したい 」
彼女のような優しい人間がもっといてくれたら……。
「……ありがとう」
そう言うと、彼女は困ったように笑った。
「困らせたかったわけじゃないの。引き止めたかったわけでもないの。ただ……」
無言で続きを促すと、彼女は恥ずかしそうに笑った。
「ジーニアスのこと、応援してる人間がこの街にいるって覚えていて欲しいの」
気持ちに応えてほしいわけじゃない。
そんな声が聞こえた気がした。
「うん。わかった」
だから自分も敢えてなにも言わない。
その意志を表すと彼女はほっとしたようだった。
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ジーニアスが17歳くらいのイメージで。カッコいいでしょうね。
その頃、ロイドは22歳ですかね?
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