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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

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企画主 つくりものの君

 『そして世界は平和になりました』

 最後の一文に目を通し終わるとセフィアは本を閉じた。
 古い装丁をそっと指でなぞると、何かが読みとれる気がした。
 本を閉じる音に背後で積み木をして遊んでいた弟が身を乗り出してきた。

「姉さん、なに読んでたの?」
「んー勇者ミトスの物語?」
「だれ?」
「世界を救った『えいゆう』だってさ」

 適当な相づちを打つとロイドはぱらりと本のページをめくった。が、それほど小さくなくとも文字が紙一杯に書かれているのを見て嫌そうに顔をしかめた。


「ロイドは本読むの嫌いだよね」
「読むよりきくほうが好き」
「じゃあ今日の夜は一緒に読もっか」

 読み聞かせ、ではなくて一緒に読むという選択肢にロイドは戸惑ったようだったが、しばらくの後に静かにかくんと頭を振った。




「セフィアは、勇者ミトスの話はあまり好きじゃねぇんだな」
「うん」

 夕飯の時、おもむろにダイクに言われた言葉にセフィアは即肯定した。

「なんで?」
「明らかに作り物みたいな話は好きじゃないから」

 無邪気に口の周りに食べカスを付けたままのロイドの口周りを拭うとセフィアは困ったようにダイクを見た。

「私はね、たとえばダイク父さんが『こんなに苦労をしながら、こんなものを作ったんだぞ』っていう話の方が好きなの」
「そうかい」
「オレもそっちのほうが好き!」


 ぽつりぽつりと、普段は口数の少ない父が語ってくれた冒険談。脚色などいっさいない、本当にあった話。それはとても、ハラハラドキドキする、虚構などいっさい感じない。


「もしかしたら、勇者ミトスはいたのかもしれない。でも、わたしはね『ミトス』のお話に興味はあるけど『勇者ミトス』には興味がないの」

 ロイドは返事を返さなかったが、ダイクだけが不思議そうにセフィアを見ていた。


(不思議な言葉でいくつかのお題)

ちっこいロイド君はどんなしゃべり方なんでしょうね

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旅主 大地に捧げる最後のキス

 ensemble――少し昔話――




 緑の大地は記憶のものと寸分違わぬ侘びしさを浮かべていた。

 崩壊はこれから止まるだろうか。

 そんなのはどうでもいい。

 あの、希望に目を輝かせた少年はもういない。
 叶わぬ夢は叶わないものとして泡となり消えた。つかの間の飛沫のような夢は、夢見た頃には心地よさを。弾けたときはこの上ない、切なさとやるせなさをもたらした。

 一体誰が予想しただろうが。
 このように、大地が疲弊するとは。
 旅出したときよりも悪化したマナの枯渇。文明の進歩はもはや破滅以外のなにものでもない。

 まだ救いがあったときはよかった。

 結局、最後の救いの一手を人間は自ら手放したのだ。

 もう、自分にできることはなにもない。どんな罵倒が待っていようと、自分はもう背を向けた。


 後戻りはできない。


 さあ、やせた大地に最後の挨拶を。


(不思議な言葉でいくつかのお題)


ensembleよりアトラスの独白。
OVA見たいです。

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ensemble 昔話

 緑に覆われた美しい惑星(ホシ)地球。

 エルフの遙か昔の先祖はそう言ったらしい。

 青々と緑が生い茂り、生き物すべてを祝福する蒼き宝石の源。
 惑星を見れば美しい宝石だといっても誰もが頷いたという。

 だが、数年の月日を経てこの惑星は死滅しようとしていた。

 人間は知識を得たことにより、驕りを覚えた。エルフは現状から目を背け、すべてもの現況を人間だと断言し背を向けた。
 そして、彼らは何も生み出さないすべてを破壊尽くす術を覚えてしまった。



「あらかたまとめるとこんな感じかな?」
「…まあ、そんなものだろうな。貴様がまとめたにしては、な」
「ユアンがまとめるよりもずっと分かりやすかったよアトラス姉様」

 バカにしたような笑いをユアンに向けた後天使のようなほほえみを浮かべたミトスは同意を求めるように姉を見る。

「そうね。簡潔にまとめてあるわよね」
「…お前が如何に今の状態に対して怒りを覚えているかがよく伝わるな」

 呆れも混ざっているクラトスの言葉にアトラスは軽く肩をすくめた。その動作は《わざとに決まってるでしょ》とでも言いたげだ。

 そのまま静かに眸を閉じるとアトラスは見えないはずの世界中を脳裏に映した。


 かつては美しかったという惑星。今は大国同士の呆れるような大規模な戦争で衰弱していく。
 人間だけではない、罪もないハーフエルフや動物たちを巻き込んでの醜い争い。

「…早く、はやく止めなきゃ」
「……ああ、そうだね」
「………何にもおびえないでみんなで姉様特性のおいしいカレーを食べられるようになるといいね」


 優しく微笑む若き勇者の双眸は美しい希望を夢見て輝いていた。

 そして仲間もまた、美しい未来を夢見ていた。




(美しき空想)

今更ですが括弧くくりの言葉は不思議な言葉でいくつかのお題です。

いまいち文章力が戻ってきません。

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旅主 苦手なもの

潮風が心地良い昼下がり。
前を歩きながらノイシュと共に居たアトラスは後方の盛り上がりに振り返った。


「なークラトス。なんか面白いこと知らないか」
「・・・・・・そうだな、確かこの辺りの島には間欠泉があった筈だ」

そこで言葉を切ったクラトスは視線をロイドからアトラスへと遣った。
急に振られながらもアトラスも脳裏に地図を描く。
昔は温泉として入浴可能であった場所。


「・・・・・・そうだね。確か観光名所にもなっているよ」
「観光名所というと・・・ソダ島ね。確かにあそこは間欠泉が有名だわ」

リフィルはアトラスの言葉を引き継ぎ頷いた。
驚いたような感心したような声をあげるコレットやジーニアスだが、やはりロイドは不思議そうにジーニアスを見た。

「かんけつせん・・・・・・なんだそりゃ」

やはりジーニアスにも予想通りだったのかわざとらしく大きく溜息をついた。腰に手を遣りロイドを見上げる。

「間欠泉っていうのは一定周期に温泉が噴き出してるんだ。そんなことも知らないの?」
「し、知ってるよ。そんなこと、当たり前だろ。少しド忘れしてただけだ」

顔を反らし、勿体ぶって腕を組む。だがその頬は少し赤い。図星のようだった。


「どーだか。ねえ、コレット」
「ねー」
「ひでーよコレット」

クスクスと笑いあう二人はそのままリフィルへと顔を向けた。

「どうする? リフィル。ジーニアス達は行ってみたいようだけど」

この先の展開が予想できるアトラスは笑い、リフィルは顔を青くしてけれどそれを隠すように口をキツく結び横に振った。

「えー、行きたいよボク」
「先生、私も見てみたいです」
「ダメです。寄り道している時間はなくてよ」

いつもならばそこで引き下がらずに彼等は粘る。やはりロイドも行きたいらしく粘ろうと頭を抱えてリフィルへの言葉を考えていた。

「ソダ島へ行ったとしても大した時間を浪費する訳ではない。子供達に貴重な体験もさせてやるべきではないか?」

思わぬ方向から子供側に味方がついた。クラトスがロイドの代弁をしていた。
平生の彼の言動からは考えることができない。けれど助力はありがたいのかジーニアスやコレットはリフィルにしがみついた。

「ねー姉さん! お願い!」
「お願いです先生。行きたいです」
「なー、頼むよ先生!」

味方の居なくなったリフィルが助けを求めるようにアトラスを振り返る。
リフィルの苦手なものは既にアトラスにバレていたので見栄を張らずに助力を欲していた。

「そうだね。でも今は、再生の書を見せてもらうことが先じゃないかな? ソダ島はそのあとでも十分見れるよ」

けれど、その言葉に一人だけ顔を曇らせた。それに気付いたのはアトラスだけであったが。

「そうよ! 今は旅の目的が第一よ。ソダ島には行っていられません」
「"今は"ね」

二人に反対されたからか諦めたように彼等はつまらなくて仕方ないという顔をしていた。


「助かったわ、アトラス。ありがとう」
「いや。ソダ島は船ではなくてたらいで行くからね。今のままではロイドは勧めない。全ての負荷がクラトスにかかるから今は行けない」
「やっぱりいつかは行くのね・・・・・・」


ここでどっちを選択しても、次の封印場所がソダであるので何にせよ、行くことになっていることをアトラスは知っていた。
だからとりあえずはリフィルの平穏を守ることにしたとは誰もしる由はなかった。

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もしも、そのときには


「・・・どうして、そんな話を?」

 聞き返すと、ロイドはバツの悪そうな顔をして片手を頭の後ろへとやった。
 けれど、アトラスの答えが気になるのか、他の仲間は遠巻きに見ていた。


「もし――もしもだけどさ、アトラスは、今までの人生をやり直せるとしたら、どうする?」


 そんな問いかけに、思わずアトラスは呼吸をするのも忘れて彼の顔を見ていた。
 だが、すぐに我を取り戻し、いつもの微笑を浮かべる。内心は、突然のことに思考の停止寸前であっても。
 
「いや、・・・そのぉ・・・」
「珍しいね、ロイドが本を読むなんて」

 あからさまに彼の肩は揺れた。どうやらアトラスのかまかけは当たったようだった。確か、テセアラで人気の本を珍しく読んだようであった。
 時をかける力を手にした主人公が、人生をやり直す。そんなようなうたい文句であった気がする。

 けれど、アトラスは手にとっていない。

「なあ、アトラスだったらどうする?」
「そうだね・・・」

 息を殺してアトラスの答えに集中する気配を感じながら、アトラスはそっと目を閉じた。
 脳裏に思い浮かべるのは今までに歩んできた四千年という長い自分の歴史。
 やり直せるのならば、やり直したいと思うことがいくつもある己が歩んできた路。

 あの時こうしていれば。あの時はああすれば・・・・・・――。

 そんなことを思わなかったときは一度もないとはいえず、それは何度思ったかしれない。


 けれど。


 瞼を上げて、目を端から端へと滑らす。


 その生まれゆえに、いわれのない迫害を受けてきた、けれど立派に進む姉弟。
 自分たちの行いにより、運命を翻弄された二人の神子。
 策略に巻き込まれた少女と伯爵。
 自分の居場所を探し、見つけた少女。

 そして――。



「私は、やり直したいとは思ってはいないよ」

 驚くかと思った目の前の、随分と成長した少年は予想と違い、満面の笑みを浮かべていた。


「やっぱりな」
「・・・ロイド?」

 そして、彼は一人を振り返る。
 燕尾のマントを羽織り、我関せずの態度をとりながらも自分たちの動向を見守っていた彼の父親を見て、また破顔した。


「クラトスもそう言ったんだ。それなら、アトラスも同じこというかなって思ってさ」
「・・・彼は、なんて?」
「『今までがあるから、今がある。私はそれを変えたいとは思わぬ』だって。クラトスっぽい答えだよな!」
「――そうだね」


 やり直したい過去はたくさんある。

 彼を止められなかったこと。彼らに背を向けてしまったこと。彼女との約束を果たせなかったこと。
 いくつも裏切り、いくつも悲しませ、己の罪は彼にも負けずと劣らない。


 けれど、その過程の中で、人と出逢い、理を知り、たくさんの大切なことを学んだ。

 それらはとても長いときであったが、同時に掛け替えもない大切なものとなって己の心の中に降り積もっていた。


「私は、今いる君達と出逢えたことを、なしにはしたくないよ」
「俺もだな」


 だから、今はこの時を。




**


TOSリハビリです。・・・時期的には・・・、デリス直前?思いっきり連載の先の先です。というか、終盤の終盤。
テセアラ編が書きたいのですが、見事に内容が思い出せません・・・!!
これから、この小ネタ日記は私の修行場となります。
あと、昇華されることのない、思いついたけれど投げ出されたネタとか・・?

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