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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

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遙か4 君の家の味

玉椿設定
デフォルト名:楠本陽菜


※遙か十年祭のミニドラマから思いついたネタですので、ご注意を


 出雲の村まで出かけて、天鳥船に戻ってきた陽菜と千尋を待っていたのは、留守番をしていた仲間達ではなく風早の残した不思議な伝言と道臣からの言付けだった。

「『ちょっとみんなでピクニックに行ってきます。遅くなるかもしれないけど、心配しないでいい子で待っていて下さい』だって。ずるいなぁ、待っていてくれればよかったのに。ね、陽菜」

 いつの間にそんな約束してたんだろう、と不思議がる千尋に陽菜は風早からの伝言を覗き込んだ。竹巻に流暢に綴られているのは、元の時代でよく黒板で目にした風早先生の字だった。

「ピクニックね……」
「私も行きたかったな」
「んー、柊さんとかサザキとかが無茶言って、忍人さん達が押し込まれて行った感じがするね」
「……そうかも。まあ、待っている間暇だし、二人でご飯作る?」

 元々、今日は千尋とカリガネと陽菜の三人で向こうの世界の料理を作る約束だった。カリガネもピクニックに行ってしまったらしいので、作るとしたら今居る二人で行うことになるのだが。そこまで考えて陽菜は道臣の伝言を思い出した。

「そういえば道臣さんが、補給路でちょっとした行き違いがあって言っていた食材が届かなくてすみませんって言ってたよ」
「んー、それなら予定変更しようか」
「変更せざるを得ない感じだね」

 予定していた食材がなくとも、作ることができる料理はあるのだからそう落胆するほどではないだろう。ただ、元気がいい朱雀の片方はむくれるかもしれない。

「『俺は、前に言っていた奴が食べたいんだ!!』とか言い出しそうだよね」
「サザキ? うん、言い出しそう」
「で、カリガネが『なら、食べるな』って」

 日向の頭目二人のやりとりを真似してみせると千尋は、思い浮かべたのか声を上げて笑った。
 近頃、中つ国についてのことや、星獣のことで気を張りつめていた千尋の笑顔に思わず胸をなで下ろす。
 恐らく補給路で常世と何かトラブルが起きたか、荒魂が原因なのだろう。それでも、千尋の負担を軽くするためにみんなでピクニックに行ったのだろうとあたりをつける。
 協調性が皆無のようで優しい仲間達の千尋への思いやりに陽菜はくすりと笑みが浮かぶ。


「ね、小麦粉とか卵とかあったよね」
「え、うーん。確かあったと思ったけど。何を作るの?」
「ん? デザートを作っておけばサザキも機嫌直るかなって」
「あ、それナイスアイディア」





 若干くたびれた顔をして帰ってきた仲間達に千尋と陽菜は、むくれた顔で出迎えをした。しかし、それさえ気にしないのか「いい子で待ってましたか、二人とも」という風早の笑みに、不機嫌も持続できずに、呆れたような笑みになってしまった。

「もう。みんなで私たちに内緒でピクニックなんてずるいよ!」
「なら、今度は全員で行きましょうか。その時はお弁当、作ってもらえますか?」
「んー……ならいっかな」

 あっさりと懐柔された千尋に陽菜はからからと笑いながら、那岐と忍人へと近づく。見たところ怪我はしていないようだったので安心である。

「お帰りなさい。楽しかった?」
「……男ばっかでピクニックなんか楽しい訳ないだろう」
「ぴくにっく……とは、何のことだ?」

 眉間にしわを寄せて考え込む忍人になんと答えるか悩み、陽菜はちらりと那岐を見るが彼は面倒そうにため息をついて風早を指差した。

「あいつに聞いてよ。僕は知らないよ」
「えーと……外にお弁当を持って遊びに行くことだと思います」

 遊びに行くこと、の下りに忍人は渋面を浮かべたがぐっと言葉を飲み込み、無理矢理納得したような変な顔をした。陽菜には一般人として接する忍人は、今回の『ぴくにっく』の本来の目的を言うわけにはいかないのだろう。
 忍人の葛藤を知ってか知らずか陽菜はそういえばと思い出したように那岐を見た。
 そんな陽菜の表情を怪訝に眺めると先を促した。

「サザキが楽しみにしていた奴は作れなかったんだけど、一品だけ私の家の料理とデザート作ったんだよ」
「陽菜の家の料理? っていうと……どれ?」

 現代では千尋や風早の料理と同じくらい楠本家のお裾分けを食べていた那岐は、よく箸をつけた料理を数々と思い浮かべた。出雲で手に入る食材で作れるものが思いつかない。
 謎掛けでも出したようににこにこと笑う陽菜に答えを導き出そうとした二人を、喧しい風が襲った。

「なにー! 陽菜、本当か?! 一品だけでもあるのかー?!」
「サザキ煩い」
「サザキ、重いー」

 地獄耳。と那岐に呟かれるが、サザキは気にすることなく陽菜を背から抱え込み羽を勢いよく羽ばたかせた。

「なあなあ、でざあとっていうのは何だ?」
「食後のおやつみたいなものかな。後はご飯の時に教えてあげる」

 二人に向けられた言葉にサザキは声を上げて喜ぶと那岐の腕を引いて食事の間へと向かっていった。



**

デザートは何でしょう。途中から投げやりです。すみません…
次は移り往く~です!!

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遙か4那岐 003 :白

『玉椿』
デフォルト名:楠本陽菜




 僕が優しいというのなら、傷を癒すように包み込む包容力を持つ君はなんというのだろうか。
 何かの会話の折だった気がする。学び舎での毎日は退屈で、でも楽しくて。前までのことを思えばここでの生活は楽園。とまでは言えなくても、どことなく満たされている日々だった。

 他人と深くつき合うのはまだ少し怖くて、同居人となった二人ともあまり深い付き合いはしたくなかった。

 けれど、気づけばたった一人だけ。とても深くに入り込んできていた人がいる。
 でもそれは不快ではなくて、そこにいるのが当たり前のようになっていた。那岐はもう大切な人を作りたくなかったのに、彼女は『大切な人』になっていた。


「那岐君の髪と眸の色、すごく綺麗」

 優しく笑う彼女が眩しかった。異端の証で、捨てられ、那岐から大切なものを奪っていたいわば象徴。

「こんなの……別に綺麗でもなんでもないだろ。僕は陽菜みたいな黒髪が、……綺麗だと思う」

 苦手な本音をほんの少しだけ混ぜた言葉は陽菜には届かずに落ちてしまった。自分を落とす那岐の言葉に陽菜は寂しそうに視線を落とした。暫く言葉を探すように、視線がきょときょとと落ち着きをなくしていたがやがて納得のいく言葉を見つけたのか那岐の髪を見てふわりと微笑みを浮かべた。

「那岐君の髪、すごく綺麗だよ」

 いつもならば『綺麗だと思うよ』と意見を押しつけることのない陽菜の珍しい断言の口調に那岐は口をつぐむ

「お日様に当たった時はお月さまみたいな優しい色に輝いてるのが好き。深い森の中にいるみたいに優しい自然の色。優しくて、周りが傷つくよりも自分が傷つくのを選ぶのも森みたい。優しい、すべてを包み込む優しい色。お月様も静かに心を照らしてくれる優しい光。那岐君みたいだよね」

 那岐が優しいというのなら、それは陽菜の色が当たっているだけだ。すべての光をはねのける白。
 何ものにも染まり、染まらない色。

 どろどろに濁っていた那岐の心を優しく染めていったのは陽菜の白の優しさ。


 この色は誰にも、穢させないと強く願う。


**

このシリーズの二人を書くのが好きです。
シリーズ名は『玉椿』です。

描写する100のお題(追憶の苑)

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傍系主 002 :さくらの花

002:さくらの花

 雪の花弁のように散りゆく姿を、潔そうな姿を称えたのは誰が始まりなのか。
 蒼空から零れ落ちる立花が舞うように、はらはらと風に煽られ薄桃色の花弁が舞う。

 キムラスカ・ランバルディア国の王宮の裏庭。幼いルニアが見つけた、人気のない樹木は何年も過ぎた今も記憶のまま。

 無言で降り注ぐのは、周囲の期待と同じ。なのに、無感動でどこか非常なままに降るそれはいつも安心感をルニアにもたらした。

 秘密の裏庭。人気も少なく、表の喧噪が届かず、人の感情も届かない静かな場所はルニアだけの特別な場所。

 他は誰も知らない。王族とはいえ、現国王は忙しく王女もあまり庭を出歩く時間を取れない。ルニアも現在はあまり歩き回れないが、時折この桜が見たくなる。春の一時のみであるけれど、この花吹雪の下を歩くとひだまりに包まれたような感覚を覚えるのだ。

 憧憬に包まれた景色。


 優しくほほえむ母と、穏やかに大らかに笑む父。そして幼い自分。三人でささやかな小さなしあわせがあればよかったけれど、身体に流れる血がそれを許す立場ではなく。

 散ることが定められている花のように、その小さな憧憬は散り去った。


 時折ふと夢を見た。
 幼い頃の、幸福な夢。

 けれど、触れること叶わず醒めてしまう。



「ルーニャ」
『ルニア』

 低くて優しい声。記憶の声と重なる。優しくて厳しくて、あたたかい。

 はらりはらと散る桜の下、優しくほほえむ空色の瞳。


「皆が待ってる。行こう」

 憧憬ではなくて、現実にのばされた優しい腕。


 もう、夢が醒めることをおそれない。




描写する100のお題(追憶の苑)

**

TOVにはまりそうです。

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彩雲国 悪戯?お菓子?

 ぱたぱたと廊下を駆ける音がする。
 自室にて繕い物をしていた有紀はその音を耳にすると針を進める手を止めて、針山へと針を戻した。
 鮮やかで落ち着いた色彩を放つ布地は不器用な筒井筒が渡してきたもので、安物で貰い物だとの言葉に反して、上物で彼が取り寄せたものだろう。
 そもそも彼に布地を贈るような人は安物は贈らないだろうし彼は贈られたものは人には渡さない。

 音が扉の前で止まる。一拍の後、妹分の弾んだ声が聞こえる。同時に立ち上がり、傍らに置いてある籠を手に取る。ふわりと甘い香りが漂う。

「有紀姉さま、いらっしゃいますか? 秀麗です」

 声と同時に扉を開くと、満面の笑みを浮かべた妹分である紅秀麗が立っていた。女性のために仕立てられた官服を身につけ、堂々と佇む姿は立派な官吏である。
 有紀が歩んだかもしれない道を迷うことなく進む姿は眩しくて危うくて、思わず手をさしのべてしまいそうになる。

「いらっしゃい秀麗ちゃん」
「有紀姉さま、今お時間いいですか?」
「ええ、繕い物の小休止中なの」

 ちらりと先ほどまで仕立てていた物に目をやるとつられて秀麗も目を室内に向ける。同じ物を視界に入れたのか大きな眸が驚きに瞬く。同時に羨望が籠もった眼差しに変わる。

「わあ……素敵」
「……ありがとう」
「絳攸様ですか?」

 どうして秀麗は官吏に、それも御史台所属になってから年相応な物に興味を抱くようになったのだろうかと疑問に思う。にやにやと笑う彼女のおでこを弾く。

「内緒。秀麗ちゃん、用事はいいの?」
「あ、いけない!! 要る! 要ります!」

 追求の矛先を変えるために籠を目線の先で揺らしてみる。慌て始める秀麗の目をじっと見て、わざとらしく微笑んでみせる。
 うなり声をあげて悔しそうに顔を歪める彼女に心の中で安堵の息を吐く。

「有紀姉さま、お菓子くれなきゃ悪戯します!!」

 悔しさと期待の混じった眼差しが何だか楽しい。




**


ハロウィンで何か書くぞ!と意気込んで失敗したぶつ。
実は書きはじめの足音のくだりで気づいたらif編書いてました……。
でもこれもほんのりifっぽいですね。

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青空の下で 001 :雪

001:雪


 静かに音もなく降り積もる。降り始めた当初は触れたものの温度に溶かされ、消えていく。けれど次第に降り重なればいつしか層を成し、連なっていく。

 そんな雪の光景を見ることが、有紀の冬の日課である。
 故郷では、近年はあまり積もることは少ない。土地柄あまり雪も多いとはいえない季節であるため、雪が積もってはしゃぐ。という経験しか生憎したことがなかった。

 あの日、彩雲国に来て以来雪というものがどれだけ生活を圧迫するものかを知った。けれど、やはり何年経っても有紀には雪を嫌いには慣れなかった。

「おーい、有紀。飯だぞ?」
「……うん」
「おい、こら。またそんな薄着で出やがって」

 室から出て庭に面する回廊に座り込んでいた有紀の頭を仕事を終えて出てきた燕青が軽く小突いた。声掛けだけでは気付くことなく生返事を続ける有紀の意識を引き戻すためである。
 小突かれた頭を手でさすりながら、燕青を振り返った有紀はばつが悪そうに笑う。
 数年前に遊びに来て以来年に一度は遊びに来る悠舜の知り合い。今では燕青の大切な友人である彼女は、周りにはあまり見受けられない変わった少女である。

 寂しがり屋で、強がりで、誰もかもを素直に受け入れる大地のような彼女は茶州府では人気者である。彼女の作る採や、二胡に絆された者が多いが。


「こら、有紀。後でいくらでも遊んでやるから今は飯。飯と寝る時間は何よりも大切なんだぞ」

 燕青の信条であると同時に有紀の信条でもあるはずだ。その言葉を聞くと、有紀はきょとりと首を傾げるがすぐに頷き燕青へと両手を伸ばす。
 その甘えた仕草に彼の目は絆されたように優しく融け、太く力強い手で彼女の手を掴むと優しく引き揚げた。
 

「よし。行くぞー。で、今日の飯って何だ?」
「ないしょ」

 細くて小さな手を繋いで、回廊を戻る。

 積もった雪が溶けるまで彼女はここにいてくれるだろうか。



描写する100のお題(追憶の苑)


一番手は燕青で!!

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 デフォルト名:ルニア・ディ・ジュライル

【十二国記】
 └雁州国王師右将軍
 デフォルト名:栴香寧

【遙かなる時空の中で3】
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 デフォルト名:天河華織

【明烏】
 └遙かなる時空の中で3・景時夢
 デフォルト名:篠崎曙

【彩雲国物語】
 └トリップ主
 デフォルト名:黄(瑠川)有紀

【コーセルテルの竜術士】
 └術資格を持つ元・旅人
 デフォルト名:セフィリア・エルバート
 愛称:セフィ

【まるマ・グウェン】
 └魔族
 デフォルト名:セレスティア・テリアーヌス
 愛称:セレス

【まるマ・ギュンター】
 └ハーフ、ヨザックの幼馴染
 デフォルト名:シャルロッテ・ティンダーリア
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