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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

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アゲハ蝶 Fimbriata の咲く場所で

 年の数だけの花束。なんて気障なことをしても、彼女はイヤがりはしないが嬉しがることもしない。
 苦笑いと共に、受け取ってはくれるだろうが心の底からの笑顔を見ることは叶わない。

 彼女が喜んでくれることは、何なのかは最近ようやく分かるようになった。

 数輪でいい。鮮やかに艶やかに、誇らしげに咲く野の花の咲く場所。そこから海が覗ければなおよし。

 愛の言葉を囁くのではなく、彼女と今共にあることの幸せを。

 赤く染まった鬱金香(うっこんこう)の花束と、彼女の指を彩る仕事を帯びた銀色の小さな輪(リング)を手に。

 きみにどうやって伝えよう。

 乾いていた心に、艶やかな滴が染み入り歓喜に染まったこと。
 幸福を、腕に抱ける幸せを。

 それらを与えてくれたのは、君であることを。


 ガヤガヤと煩い外野は、すでに黙らせてある。(むしろ期待に胸膨らませている)



「エミリア」

 風に揺れる艶やかな黒髪は、再会したときよりも長さを伸ばし月日が過ぎたことを如実に表している。
 絹糸のような指通りが心地よく、絡め取り唇を寄せるとふわりと彼女の香りが薫る。控えめで温かみのある好きな香り。すでに自分に馴染み、なければ落ち着かないまでに。

「ピオ?」

 どうかしたのかと問う漆黒の双眸優しい光が浮かび、見ている者の心を落ち着かせる。
 景色を描き取っていた、ものを生み出す左手をそっと取り上げる。

 そのまま指先を口元に持ち上げ、紅差し指に静かに口付ける。

「俺の隣に来て欲しい」

 紅色の鬱金香の花束と、泣き笑いの滴が答え。


**

※Fimbriata薔薇などの花の品種名

締めはアゲハ蝶で!!

連載で出てきたのは黄色のチューリップですが、次は赤で!!

これにて「不思議な言葉でいくつかのお題2」は終了です。

お題をお借りしましたA La Carte
様に感謝の意を。

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彩雲国 されど、彼は空の深さを知る

 鬱蒼と茂る緑は深く光を閉ざす。かすかな隙間から差し込む日は、さやさやと囁きあう木々の枝葉に揺れてまるで窓辺の光のようで。

 自信の頭に伴って揺れる草木に彼はそろりと視線をやる。狭い視界には、季節を表す優しい色合いの組み合わせ。
 視線を奥へとずらすと、趣を解する彼の旅の朋が季節の食材を使用した食事を用意していた。

 彼女は、『龍蓮』を龍蓮として見て受け止める。たったそれだけのことをこともなく当たり前のようにしてみせた。
 同じく風流を愛し、自然を愛し、すべてを哀する。ありのままに受け入れて、拒絶はしない。追いかけもしないが追い払いもしない。

 彼にはそれで十分であった。
 彼女の名前は有紀。彼にとってはそれ以上でも以下でもない。また、彼女にとって彼は龍蓮であり、それ以外にはなり得ない。

 じっと見ていると、視線が気になったのか(彼女ははじめから見られていることに気づいている)

「龍蓮、もう少し待ってね」
「うむ。『秋、特盛り』ならばいつまででも待っているぞ」

 彼女は龍蓮の知らない音を知っていて、龍蓮の知らない風流を知っている。龍蓮の知らない食べ物、文化、言葉を知っている。

 けれど、そんなことはやはりどうでもいいのだ。
 彼女の前では、『藍龍蓮』はただの『龍蓮』で居られる。


「我が朋よ、私に何かすることはあるか?」
「ん? じゃあ、食卓の準備をして貰おうかな?」
「承知した。自然の中に置いて、風流で趣ある食卓を準備してしんぜよう!」

 愚兄ならば顔をしかめる言葉にも、彼女は心から微笑んで。

「ありがとう。よし、じゃあ見劣りしないものを作らないとね」


 そのほほえみがあるだけで、龍蓮は彼女の隣に立っていられるのだ。

 常人のように、静かに息を吸って。空が青いと言える。



**


久しぶりにこのコンビです。
龍蓮語が難しいです……。
これぐらい短いのなら、早いスパンで書けるんですけどね~。
サイトにあげるのにこの長さはどうよ?といったところです。
このお題も残り一つ……!!!

(不思議な言葉でいくつかのお題2)

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遙か4 灼熱の砂の海

玉椿・那岐夢
デフォルト名:楠本陽菜



 ちっぽけな人間の手のひらには、握りしめた砂はほんの一握りの砂しか残らないように、ほんの少しの大切なものしか残らない。

 けれど彼の手のひらには、大切なものを残すことができないことが多かった。
 いつも空を掴むようになにもつかめず、なにものこらない。

 いつしか彼は、残らないことを受け入れて、大切なものをつくることを止めてしまった。
 深く踏み込むのを留まり、何にも関わらず関わらせず。

 『個』を死守することに躍起になっていた。

 そんなある日、するりと内側の一歩手前まで踏み込んできたものがいた。

 至極当たり前の顔をして、傷に溢れた心をその言葉と笑顔と涙で癒していった彼女。
 力など何も持たないのに、彼女は那岐に力の籠もった言霊を発する。

 声にならない悲鳴を上げ、じくじくと痛みが止まらなかった傷はいつの間にか瘡蓋ができていた。

 そのことを認めることができなくて。けれど、どうしても向き合いたくなったとき。
 那岐はそのことと真っ正面から向き合うことにした。

「アンタは勝手すぎる。僕の内側に踏み込んでおきながら、自分は踏み込ませない。……なんで、そんなになんでガードは固いんだ。それなら荒魂を相手にする方がよっぽと楽だよ」
「ガード……固いって?」

 言われた本人は分からないと言わんばかりに目を瞬いて首を傾げた。その仕草が常と変わらぬことに安堵しながらも、それに対する自分の態度は、性格が桎梏となり毎回臍を噛む思いをするのだ。

 けれど、桎梏を取り払い一歩踏み出さなければ大切なものを守ることはできないのだと今の那岐は知っている。


「大切なものを作るつもりはなかったんだ。また、失う時の気持ちを味わうのはイヤだったから……。それなのにアンタと来たら知らないうちに入り込んできて、居座って。……なのに自分は素知らぬ振りだ。いくら温厚な僕でも怒るよ」
「え?……へ?」
「僕の話聞いてた?」

 目を白黒とさせているその顔の中心は赤く染まっていることから全く通じていないわけではないらしい。
 武器を取ることのないその腕をつかみ、引き寄せ腕を回すとその小さな体は那岐の腕の中にすっぽらと収まった。

「な、な、な…那岐くん?!」
「…那岐、でいい」
「え、で、でも…え? え?」

 柔らかな花の香りは、那岐が渡したポプリだろうか。天の邪鬼な自分が渡したものが使われていることに胸にじんわりと喜びが広がる。

「……なぎ?」

 小さく自分の名を呼ぶ声が愛おしい。
 例え、手のひらに残る砂(大切なもの)が少なくとも。その砂が灼熱に熱されていたとしても。
 勇気を振り絞ってすくい取らなければ、手のひらは空のままだと。


 君が教えてくれたから。


「そう言えば、忘れてた」
「な、な、なにを?」

 赤く染まる耳元で囁くとびくりと震える肩をそっと押さえて。

 君を思う言霊を君に。



***


……当初の予定から外れて那岐が暴走していきました……。どうした那岐!!
何が起こったんだ那岐!!

ツンデレ具合がすごいことになってますね。

『ブルーグレー~』を聞いていたらこうなってしまいました。
この二人もいつかサイトに進出させたい……。

(不思議な言葉でいくつかのお題2)

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コーセルテル 千年図書館

デフォルト名:セフィリア・エルバート


 長い長い時をあなたと共に在れたら。



 問題が何かと続いているコーセルテルで、珍しく何も起こらない日が続いたとき。最近寝不足が続くらしい、弟分が神妙な顔をして現れた。

 騒動の概要を知っているセフィリアは苦笑いを浮かべて、お茶とともにマシェルを迎えた。


「両親のこと?」
「はい……。セフィ姉さんは、両親の名前を知っていますか?」

 とある騒動をきっかけにマシェルは幼い頃に死別した両親の夢を見るという。その夢を見て改めて、自分の両親のことを知らないことに気づいたのだと。
 他の誰にも訊けないことも、セフィリアには訊けるからという不安がるマシェルの髪をかき乱すとセフィリアは短く笑った。

「期待に添えないようで悪いけれど、私も覚えていないんだ」
「え? そ、そうなんですか?」

 ばつがわるそうにするマシェルの額を指で弾く。

「私が違う次元の国出身なのは話したっけ?」
「はい。ユリオスと穴に落ちたって聞きました」
「穴に落ちた代償に私は、故郷の人たちの名前も顔も忘れてしまった。加えて、故郷で私のことを知っている人も居なくなってしまっているんだ」

 代償は大きかった。故郷にはセフィリアの痕跡は塵一つ残っていない。
 悲痛な表情を浮かべるマシェルに苦笑すると、かつてこの話をしたときの空いての反応を思い出す。

「『今は俺たちがお前のことを覚えている。顔を覚えていなくても、名前を覚えていなくてもお前の故郷は変わらない。そして今はコーセルテルが故郷だ』」
「…今のは?」
「カディオに言われた。マシェルのように自分が痛いような風に顔を歪めながら」

 その言葉があったからではないが、今はコーセルテルが故郷である。
 いつの日か、竜術士達が代替わりをして里を去ったとしてもセフィリアだけはここに残るのだろう。
 皆の故郷を守る護り人として。




(不思議な言葉でいくつかのお題2)

最終巻読みましたー!

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軍人主 永遠の時追い人

 例えば、君を想う心。

 それは幾千年時を越えたとしても、変わらぬと断じることができた。君はずっと変わらぬ想いを持っていた。

 自分にはないものを持つ君が羨ましくてならなかった。

「兄上、見て下さい!」
「どうしたんだい、ラシュディ」

 満面の笑みに青い宝石を輝かせ、眩しい光に目を細める。

 妹の周りを纏わりつくように漂う音素の集合に目を細める。自分と違い音素に愛された妹は、一族の名を背負うに相応しい。

「音素が遊んでくれるのです」

 願わくば、重い“一族の名”を背負わずに済むように、血塗れぬ道を歩んで欲しい。

「ラシュディ、あちらで父上がお呼びだよ」
「父上が?」
「そう。だから一度音素達とはさよならだ」
「はい」

 愛おしむような笑みを浮かべて音素を散らす妹。
 例え本当の兄妹ではないとしても、私が君を想う心は決して変わらない。


 幾星霜経とうとも。


「兄……失礼しました、フォルツォーネ少将」
「どうかしましたか、フォルツォーネ少尉」

 願いとは裏腹に君が修羅の道を行こうとも。例え君に嫌われたとしても。


「わたしは、ラシュディ……きみの、しあわせを、ずっ……ずっ、と……」

 音素の空から祈っている。



(不思議な言葉でいくつかのお題2)

途中で分からなくなりました。
基本的にオリキャラ作るの大好きな人間なので暴走しています。

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【十二国記】
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【明烏】
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【彩雲国物語】
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【コーセルテルの竜術士】
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【まるマ・ギュンター】
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