デフォルト名:セフィリア・エルバート
長い長い時をあなたと共に在れたら。
問題が何かと続いているコーセルテルで、珍しく何も起こらない日が続いたとき。最近寝不足が続くらしい、弟分が神妙な顔をして現れた。
騒動の概要を知っているセフィリアは苦笑いを浮かべて、お茶とともにマシェルを迎えた。
「両親のこと?」
「はい……。セフィ姉さんは、両親の名前を知っていますか?」
とある騒動をきっかけにマシェルは幼い頃に死別した両親の夢を見るという。その夢を見て改めて、自分の両親のことを知らないことに気づいたのだと。
他の誰にも訊けないことも、セフィリアには訊けるからという不安がるマシェルの髪をかき乱すとセフィリアは短く笑った。
「期待に添えないようで悪いけれど、私も覚えていないんだ」
「え? そ、そうなんですか?」
ばつがわるそうにするマシェルの額を指で弾く。
「私が違う次元の国出身なのは話したっけ?」
「はい。ユリオスと穴に落ちたって聞きました」
「穴に落ちた代償に私は、故郷の人たちの名前も顔も忘れてしまった。加えて、故郷で私のことを知っている人も居なくなってしまっているんだ」
代償は大きかった。故郷にはセフィリアの痕跡は塵一つ残っていない。
悲痛な表情を浮かべるマシェルに苦笑すると、かつてこの話をしたときの空いての反応を思い出す。
「『今は俺たちがお前のことを覚えている。顔を覚えていなくても、名前を覚えていなくてもお前の故郷は変わらない。そして今はコーセルテルが故郷だ』」
「…今のは?」
「カディオに言われた。マシェルのように自分が痛いような風に顔を歪めながら」
その言葉があったからではないが、今はコーセルテルが故郷である。
いつの日か、竜術士達が代替わりをして里を去ったとしてもセフィリアだけはここに残るのだろう。
皆の故郷を守る護り人として。
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
最終巻読みましたー!
[1回]
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それでしずくと、竜術士達とか苦笑いしたかったの♪