鬱蒼と茂る緑は深く光を閉ざす。かすかな隙間から差し込む日は、さやさやと囁きあう木々の枝葉に揺れてまるで窓辺の光のようで。
自信の頭に伴って揺れる草木に彼はそろりと視線をやる。狭い視界には、季節を表す優しい色合いの組み合わせ。
視線を奥へとずらすと、趣を解する彼の旅の朋が季節の食材を使用した食事を用意していた。
彼女は、『龍蓮』を龍蓮として見て受け止める。たったそれだけのことをこともなく当たり前のようにしてみせた。
同じく風流を愛し、自然を愛し、すべてを哀する。ありのままに受け入れて、拒絶はしない。追いかけもしないが追い払いもしない。
彼にはそれで十分であった。
彼女の名前は有紀。彼にとってはそれ以上でも以下でもない。また、彼女にとって彼は龍蓮であり、それ以外にはなり得ない。
じっと見ていると、視線が気になったのか(彼女ははじめから見られていることに気づいている)
「龍蓮、もう少し待ってね」
「うむ。『秋、特盛り』ならばいつまででも待っているぞ」
彼女は龍蓮の知らない音を知っていて、龍蓮の知らない風流を知っている。龍蓮の知らない食べ物、文化、言葉を知っている。
けれど、そんなことはやはりどうでもいいのだ。
彼女の前では、『藍龍蓮』はただの『龍蓮』で居られる。
「我が朋よ、私に何かすることはあるか?」
「ん? じゃあ、食卓の準備をして貰おうかな?」
「承知した。自然の中に置いて、風流で趣ある食卓を準備してしんぜよう!」
愚兄ならば顔をしかめる言葉にも、彼女は心から微笑んで。
「ありがとう。よし、じゃあ見劣りしないものを作らないとね」
そのほほえみがあるだけで、龍蓮は彼女の隣に立っていられるのだ。
常人のように、静かに息を吸って。空が青いと言える。
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久しぶりにこのコンビです。
龍蓮語が難しいです……。
これぐらい短いのなら、早いスパンで書けるんですけどね~。
サイトにあげるのにこの長さはどうよ?といったところです。
このお題も残り一つ……!!!
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
[1回]
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