潮風が心地良い昼下がり。
前を歩きながらノイシュと共に居たアトラスは後方の盛り上がりに振り返った。
「なークラトス。なんか面白いこと知らないか」
「・・・・・・そうだな、確かこの辺りの島には間欠泉があった筈だ」
そこで言葉を切ったクラトスは視線をロイドからアトラスへと遣った。
急に振られながらもアトラスも脳裏に地図を描く。
昔は温泉として入浴可能であった場所。
「・・・・・・そうだね。確か観光名所にもなっているよ」
「観光名所というと・・・ソダ島ね。確かにあそこは間欠泉が有名だわ」
リフィルはアトラスの言葉を引き継ぎ頷いた。
驚いたような感心したような声をあげるコレットやジーニアスだが、やはりロイドは不思議そうにジーニアスを見た。
「かんけつせん・・・・・・なんだそりゃ」
やはりジーニアスにも予想通りだったのかわざとらしく大きく溜息をついた。腰に手を遣りロイドを見上げる。
「間欠泉っていうのは一定周期に温泉が噴き出してるんだ。そんなことも知らないの?」
「し、知ってるよ。そんなこと、当たり前だろ。少しド忘れしてただけだ」
顔を反らし、勿体ぶって腕を組む。だがその頬は少し赤い。図星のようだった。
「どーだか。ねえ、コレット」
「ねー」
「ひでーよコレット」
クスクスと笑いあう二人はそのままリフィルへと顔を向けた。
「どうする? リフィル。ジーニアス達は行ってみたいようだけど」
この先の展開が予想できるアトラスは笑い、リフィルは顔を青くしてけれどそれを隠すように口をキツく結び横に振った。
「えー、行きたいよボク」
「先生、私も見てみたいです」
「ダメです。寄り道している時間はなくてよ」
いつもならばそこで引き下がらずに彼等は粘る。やはりロイドも行きたいらしく粘ろうと頭を抱えてリフィルへの言葉を考えていた。
「ソダ島へ行ったとしても大した時間を浪費する訳ではない。子供達に貴重な体験もさせてやるべきではないか?」
思わぬ方向から子供側に味方がついた。クラトスがロイドの代弁をしていた。
平生の彼の言動からは考えることができない。けれど助力はありがたいのかジーニアスやコレットはリフィルにしがみついた。
「ねー姉さん! お願い!」
「お願いです先生。行きたいです」
「なー、頼むよ先生!」
味方の居なくなったリフィルが助けを求めるようにアトラスを振り返る。
リフィルの苦手なものは既にアトラスにバレていたので見栄を張らずに助力を欲していた。
「そうだね。でも今は、再生の書を見せてもらうことが先じゃないかな? ソダ島はそのあとでも十分見れるよ」
けれど、その言葉に一人だけ顔を曇らせた。それに気付いたのはアトラスだけであったが。
「そうよ! 今は旅の目的が第一よ。ソダ島には行っていられません」
「"今は"ね」
二人に反対されたからか諦めたように彼等はつまらなくて仕方ないという顔をしていた。
「助かったわ、アトラス。ありがとう」
「いや。ソダ島は船ではなくてたらいで行くからね。今のままではロイドは勧めない。全ての負荷がクラトスにかかるから今は行けない」
「やっぱりいつかは行くのね・・・・・・」
ここでどっちを選択しても、次の封印場所がソダであるので何にせよ、行くことになっていることをアトラスは知っていた。
だからとりあえずはリフィルの平穏を守ることにしたとは誰もしる由はなかった。
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