何気なく100のお題
056 平手打ち(軍人主・ピオニー)
右頬に熱い感触。彼女の目の前に立つは怒りに身を震わせながら、上げた左手を赤く染めた彼の方。
「……取り消せ、ラシュディ」
「……」
答えぬ彼女に一層声を荒げる。
銀糸は頬を通り流れ落ち青き瞳は俯き、下を見つめる。
「…取り消せ、ラシュディ。…でないとあいつらは、浮かばれないだろうがっ……」
そんなことは痛い程彼女は承知である。だが、頭でわかっても心では割り切れない。
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057 濡れ衣(傍系主・ガイ)
「…へぇ~」
冷たく、感情を映さぬその二色の瞳はじっと青いそれを見ていた。
「そっか、ガイはそんな奴だったんだ」
「い、いや。ルニア、誤解だっ!」
その視線の先には【スケベ大魔王】の文字が。
「誤解だーっ!」
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058 有害指定(教団主・ヴァン)
その二人の姿を見た途端に柳眉を寄せる人間が一人。
声をかけるのをやめて、踵を返す彼女に気付いたのは桃色髪を持つ守護役の少女。
傍らの使える主の袖を引くと、立ち去る人を指差す。
話をしていた二人がその姿を認めると褒めるようにその少女の頭を撫でた。
「アディシェス!」
低い声が呼び咎めるが、彼女は走り去った。
少年は笑みを浮かべ肩をすくめた。
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059 乱れ髪(アゲハ蝶・ピオニー)
「ああっ、もうっ」
突然唸るような声と共に彼の愛しき人が髪を弄るのを見た。
「どうした?」
「ん、ちょっと…髪が」
言われて見ると彼女の漆黒の髪が服の意匠と戯れ、彼女を困らせていた。
「ちょっと待ってろ」
「ん……」
柔らかい髪に手を差し入れ、優しく引っ張る。
指に吸い付く手触りにずっと触っていたいと思わせる髪質。
心のままに弄るとくしゃくしゃになっていくそれ。後が恐いのでごまかす事を決めたピオニーは彼女の正面に回り、後頭部へと手をやった。
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060 要(教団主・被験者イオン)
「イオン様?」
広い広い室内。ぽつりと呟いた声は思いの外響いた。
教団の重鎮とも言える彼は肝心要の時はいるが、普段はアディシェスが付き人の時は放浪する。
ため息を付いた彼女は心辺りの場所へと向かう。そこには予想通りに緑の髪の毛。しかも幸せそうな寝顔。
「……しばらくは平和が続きそうだね」
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