何気なく100のお題
046 変装(アゲハ蝶・ピオニー)
朝。玄関の扉を開けたら知らない人が立っていました。
「………」
「おはよう」
「………」
聞き覚えがある声なのだがエミリアの目の前に立つのは帽子を目深に被り、色付きの眼鏡に着崩した服装。
帽子の合間から見える金色の髪。寝ぼけた耳に入る愛しい低音。
けれど寝起きにその恰好はあまり見たくなかった。
そしてエミリアは無言で扉を閉めた。
「なっ、閉めるな! 開けろ!」
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047 ないものねだり(旅主・ユアン)
「ここに居たのか」
後ろからかけられた声にアトラスは振り返らない。
カツカツ、硬い床を歩く音が響く。それにも構わずにアトラスは"それ"を見上げ続ける。
「ミトスが探していた」
「……知ってる」
そっけなく答えるアトラスにユアンは小さく息を吐く。
「私は、言うまでもなく『反対』だ」
「考えてもか」
「……考えても反対だ。私は彼女との約束を違えたくない」
『ならば、私は貴女の理想を遂げるために助力しよう』
それは彼女に誓った約束。
『…ミトスを、独りにしないであげて欲しいの』
脳裏に蘇る彼女との約束。
「……どれもを守るためにはどうするべきか、私なりに考えた結果だ」
貴女が、…君が生きていてくれていたら
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048 非常識人間(軍人主・ジェイドについて)
「ねえねえ、中佐」
「なんですかアニス」
手招きされたラシュディはアニスの招きに応じて屈む。
「……ちょっと聞きたいんですけどぉ~」
「なんでしょうか?」
アニスは辺りを見渡し、真剣な顔でラシュディに耳打ちした。
「大佐って、寝食取るんですか…?」
「……アニス。大佐も死霊使いと言われておられますが、一応。人間ですよ」
その時。聞きたくない声が聞こえた。
「おやおや、二人とも酷いですねぇ~」
二人は顔を見合わせて、振り向かずに走った。
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049 共有物(傍系主・ガイ)
「おめでとうガイ」
「ありがとう、ルニア」
手を出しても決して振り払われなくなった。
ガイが一歩前進した。
「今までたくさんあったね」
「そうだなぁ…」
心の中で長年の思いに決着をつけ、恐怖症も一歩克服。
これからまた一歩ずつ進む。
「……なぁ」
「ん?」
「…一緒に来てくれって言ったら……いや、困るよな。忘れてくれ」
慌てて苦笑いを浮かべるガイにルニアは柔らかく笑った。
「なんで?」
「なんでって…君にはナタリアの護衛という仕事が…だから、…あーっなんでもない」
「いいよ」
「……え」
「いいよ。これから一緒に想い出、作ろう?」
共に、想い出を。
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050 近況報告(軍人主・元元帥)
「元帥」
「おおー!ラシュディではないか!よう来たの」
「……ちょっとそこまで来たので」
久しぶりに顔を覗かすと、ラシュディの元上司は顔を綻ばせて迎え入れた。長い白髭は前より伸びている。
「また黙って散歩じゃな?」
「…元帥には隠し事ができませんね」
言葉とは違いラシュディは嬉しそうに笑っていた。
「お前さんも相変わらずじゃのう。ちと茶でも飲んでかんかい」
「――はいっ!私がいれさせていただきますね」
そう言うと父代わりだった元上司は優しく笑った。
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ようやく半分まで来ました!残り半分!
あまり短くなれない話が……
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