何気なく100のお題
091 暴挙(彩雲国・楸瑛)
「楸瑛! 貴様有紀に何したんだ?!」
「なにって……特に…?」
「黎深様と黄尚書が手につけられない程怒り狂っていたぞ?」
言われてみればかなり怒っていたような。
だが楸瑛の知る有紀という人物は告げ口をするような女性ではない。
そんな楸瑛の思考を読んだのか絳攸は馬鹿にしたように笑う。
「邵可様に相談すれば自然にあの二人に話が行くに決まっているだろう」
命はないと思え。
楸瑛は渇いた笑みしか浮かばなかった。
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092 知る訳がない(軍人主・ガイ)
会う筈のない人物に会った彼は、そのままの恰好で硬直した。
「……ラシュディ?」
「どちら様でしょうか?」
「え、は?」
ラシュディだと思い声をかけた相手はしかし彼女ではなかった。
「ああ、姉から話は。あなたがガルディオス伯爵家の」
「ガイラルディアだ。その…君は…?」
あまりにもラシュディに似ている青年(少年?)はにっこりと笑った。
「ラシュディ・フォルツォーネの弟、ラツィエと申します。お目にかかれて光栄です」
……こんなに似ているとは聞いていない! と文句を不当にも言いたくなった。
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093 焦燥感(アゲハ蝶・ジェイド)
久しぶりに会った幼なじみの顔色はお世辞にも良好と呼べる物ではなかった。
「ちゃんと寝てるの? 食べてる?」
「勿論」
そう言われ続け幾星霜。
「サフィールは?」
「私と同じようなものですよ」
戦争の空気高まる中、いつ借り出されるのか知れない幼なじみ。
「自分の体は大切にしてよ、ジェイド……」
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094 爪痕(傍系主・ガイ?)
「? ガイ、怪我してるわよ?」
「え、あ、どこにだい?」
「ここ。……二の腕?」
そう言ってティアは自分の腕を指す。
「術を使う程じゃないけどきちんと消毒しなきゃだめよ? ルニアにしてもらったら?」
「おやおや、ティア。あまり深く追求してはいけませんよ~?」
「……っ」
「誤解だ!」
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095 記念日(十二国記・六太)
「おめでとう!」
「……なにが、とお聞きしても?」
神獣にこんな不遜な態度を取る国は十二国の中でも雁だくだろう。
「香寧が俺達の仲間になって十年になったからな」
「朱衡達もいいって言ったから俺達珍しく仕事してたんだぞ?」
胸を貼る延麒の頭を思わずぐしゃりとかき交ぜた。
「…ありがとう」
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