簡素だが食事も美味しく、人もしっかりした宿についたのは有紀が龍蓮と再会して三日後のことだった。
宿代節約のために二人で一部屋をとるのは毎度のことであった。
「有紀、君にこれを贈る」
言葉と共に満面の笑み(有紀にはそう見える)で何かを手渡された。
「なに?」
「開けてみてくれ」
言われるがままに包まれていた包装を解くと、小さな青い耳飾りが出てきた。
指で掴み、目の前にかざすと繊細な細工がキラキラと光った。
日の光りが当たると深い青に見えるのが不思議であった。
青。
「えっこれ禁色じゃ…」
「案ずることはない。装飾品は大丈夫だ」
「……嬉しいけど気持ちだけでいいよ龍蓮」
そもそも何故久しぶりに会って数日経ってから渡されるのか意味がわからないのだがそこは龍蓮なので深く突っ込まない。
「愚兄達に女人に感謝を贈りたい場合は装飾品が良いと聞き作らせた。有紀に似合うだろう」
嬉しそうに(有紀にはそう見える)笑い龍蓮が耳飾りを取り上げた。
注意深く見てみるとどうやらピアスと同じタイプらしい。
そこでようやく有紀は今渡された意味を知った。
街につき宿の中だから彼は渡したのだろう。
耳たぶに穴を空けなければいけないから。
そして龍蓮はどこか不安そうに(有紀には)見えた。
「貫通型なら簡単に外れないものね。ありがとう龍蓮。大事にするね」
「……心の姉の身体に傷をつけるのは本意ではないのだが」
「龍蓮がやってくれるなら気にしないよ?」
彼の手の中にある耳飾りは青い石が下がっており、石には透かし彫でとても美しい花が描かれていた。
水に浮かぶ花。
「龍蓮とお揃いだね」
「うむ」
『双龍蓮泉』からつけられた『藍龍蓮』の名前。
有紀の耳飾りはその時から青く輝いていた。
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ボツネタです。(ならあげるな)
これに関連して後日対抗意識を燃やした黎深さまに唆された絳攸がかんざしを贈るエピソードもありますが、それもきっとお蔵入
[3回]
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