デフォルト名:レウィナ・ウィオン
階級:軍曹
記憶は礎に、思い出は標に。想いは櫂に。
思えば遠くに来たものだ。
レウィナは細かい部品を弄っていた手を止めて流れる汗を拭った。殆どの人間が食事や休憩に赴く中、整備の手が空いたレウィナは暇つぶしにと始めていた趣味に熱中していた。ドッグには、メンテナンスをしている人間の話し声や、機械音しかない。
見上げた視線の先には無音の闇が漂う宇宙。幼い頃に憧れて手を伸ばした空が一歩外に出れば間近に広がる。
地球の中心から引かれる力がない宙は物足りなくても、憧れの場所にいるということはとても心に光を灯す。
再び手元を見ながら機械弄りを続けていると手元が陰り見づらくなった。誰かが背後に立ち止まり、手元が暗くなったのだ。
「お、なーに作ってんの?」
「フラガ大尉」
「うん?」
慌てて振り返ると、ドッグでは見慣れたパイロット、ムウ・ラ・フラガがレウィナの手元を覗き込んでいた。
「ゼロのご機嫌は如何でしたか?」
「いー女に見てもらえたからかご機嫌でしたよ」
「それはありがとうございます」
たらし込む笑みをさらりと流すと、レウィナはフラガから視線を外すと彼の愛機へと向けた。フラガがひきつった笑みを浮かべたことには気づかない振りをした。
独特なフォルムを持つ、ただ一人フラガが操作が可能なMA(モビルアーマー)メビウス・ゼロ。
世間的にはMSの方が人気が高いが、レウィナはむしろMAの方が好きだった。そのゼロの整備に携わることができるのは誇りであり、パイロットからお墨付きをもらえればやりがいもある。
戦力という面から見ればMSの方が圧倒的に高性能だとしても。
「大尉は食事に行かれないのですか?」
「ん? レウィナを誘っていこうかと思ってさ」
会話の最中にも動かしていた手を思わず止めてレウィナはフラガを凝視してしまった。
「私を?」
「そう。技師の中で紅一点のお姫様、レウィナ・ウィオンをね」
「……まあこの中で女なのは私だけですけど」
苦笑いとともに手元の機械を片づけ始める。過去何度かのやり取りで食事の誘いは、本当に仕事途中でない限り断りきれないと学んだからだ。
加えて本音を言えば“エンディミオンの鷹”と名高きムウ・ラ・フラガと食事するのは楽しいのだ。女たらしと他称されりだけあり、彼は女性との会話術に実に長けている。
片づけ終わり軽く身支度を整え終えるとフラガを伴ってドッグを後にする。
「で、さっきは何作ってたんだい?」
「んー…笑いませんか?」
「勿論。といいたいところだが、内容によるな」
悪戯な光を灯らせて笑うフラガの瞳を見てレウィナは静かに笑うと、そっと目を瞑った。
「ゼロの小さな模型を作っていたんですよ」
「ゼロの……?」
予想していなかったのかどこか力の抜けたフラガの声に笑いを誘われる。
「はい。メビウス・ゼロの何分の一スケールってとこですね」
「何分って適当だなぁ」
「忘れました。楽しいですよ」
「知ってる。俺と話しているときの何万倍も楽しそうに笑ってるからね。思わず小さなゼロに嫉妬したさ」
「またまたぁ」
軽口の応酬に二人して笑う。
「でも、何でゼロなんだい」
「ストライクとゼロで迷ったんですけどね、あみだくじで決めました」
線を辿る歳に口ずさむ歌を歌うと、「なんだその歌は」といってフラガはくつくつと笑い声を噛みしめた。ひとしきり笑い終わると何かを思い出したのか、顎に手を当ててニヤリと笑った。
「そーいやマードック軍曹が言ってたな。レウィナの部屋は模型であふれ返ってるって」
苦笑い頷くことで肯定すると、まさか本当だとは思わなかったらしいフラガが若干驚いてみせる。
「マジで?」
「はい、マジです」
「何でそんなに好きなのか聞いても?」
どう答えるべきなのかとレウィナは少し悩んだ。
好きな理由は好きだから。それでは納得してもらえないだろう。詳しく話すととてつもなく長くなるのだ。まずは生い立ちから話さなければならない。
自分の生い立ちを話す気にはあまりなれない。
だからこそ、どう話せばいいのか分からないのだ。
頬に指を当てたまま唸るレウィナに、フラガは慌てた。まさかそんなに悩むほどの内容だとは思わなかったのだ。
「そんなに話しづらい?」
「いえ……長くなるのでどう短くしようかと……うーん。そうですねぇ、きっかけは車の模型です」
「車?」
「はい。昔、ガソリンを燃料にして動いていた車や汽車の小さなおもちゃを渡されたんです。きちんと動くものだったので『どうやって動くんだろう?』って不思議に思って分解したんです。それから機械に興味を持ち始めたんですよね」
「そのままのめり込んで今に至る、と?」
「んー否定はしません」
からからと笑うレウィナにつられたフラガも破顔した。
(不思議の言葉でいくつかのお題2)
とあるサイト様のSEED夢を呼んでどつぼにはまり、動画サイトでアニメを見漁りました。といってもまだ7話ですけど!
トリップが読みたいのですが、なかなかツボにくるのがありません
さすがに7話しか観てないと無理がありましたね
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