※原作沿いになったりします。
青青とした葉が色づきつつあり、風も心地よい涼しさになり旅をしやすい季節になった。
澄んだ青空に鳥の鳴き声が響くがすぐさまその空気を打ち消すようなすさまじい音が放たれ始め、鳥が驚いて落ちてきた。
「……かわいそうに」
壮絶な音の音源は落ちてきた鳥をすくい上げると有紀に手渡した。かわいそうと言いながら苦笑いを浮かべて鳥を受け取る。
そっと撫でてやると柔らかな毛が指先に心地よかった。
まだ隣で音が鳴り続けているが、こうも道行く動物が倒れていく様を見ていると自分が人外な生き物に思えてきてしまう。
「ポホペー」
「龍蓮、話す時は言葉でお願いね」
「了解した」
応えると彼、藍龍蓮は笛を素早く降ろすとじっと空を見た。
「我が旅の朋よ。戻るべき頃合いと見えるが」
「本当?」
「そして藍鴨が私を呼んでいる」
何故に藍鴨。思わないではいられないが、彼は“そういうもの”なのだ。
「次の街で暫しの別れだ」
「また会える?」
「有紀が望むのならば、我々の縁は消えない」
彼は嘘をつかない。不確定なことも約束しない。だから有紀は安心して緊張を解いた。
思えばこうして龍蓮と旅を共にするようになって数年経つが、龍蓮に戻るべきと言われたのは初めてのことだった。
「愚兄その四にはくれぐれも気を抜かぬよう」
「わかりました」
そのような心配は自分にするだけ無駄だと思いつつ、真剣に心配している龍蓮には告げない。
「油断大敵という」
けれど彼にはお見通しらしい。
有紀は曖昧に笑っておくだけにとどめた。
「でも貴陽に戻るとどうして龍蓮のお兄さんに会うことになるの?」
「それは必然だからだ」
「必然……」
確かに彼の人の御用達である妓楼に用事で度々赴く有紀は会う確率が高そうな気がするが、龍蓮が言う必然はそのことではない気がする。
「君がその道をゆく確率は私にはわからぬ。けれど君は選ぶ確率が高い」
「うん。……なんとなくわかったかも」
「では、まだ見ぬ明日を見に行こうではないか」
無表情に近いが、有紀には彼が微笑んでいるのがわかる。
言い回しも独特でたまに何を言っているのかわからないが、龍蓮の傍にいると落ち着くのだ。
遠くで鳥が鳴いている。貴陽行きの全商連の隊を見つけ、共に連れていって貰うことに成功した有紀は、もう街を出ようとする龍蓮に手を差し出した。
はじめは困惑していた彼も慣れたもので、迷わずにその手を取って勢いよく振る。
「次はいつ会えるのかな?」
「君が会いたいと願ったとき。といいたいところだが、この度ばかりは致し方ない。再び色づき誇りし木々が凍えるときにでも会えるであろう」
「じゃあそのときは龍蓮の好きな鍋を一緒に食べようね」
「うむ。では白々しい魚鍋を所望する」
やけに鍋料理は彼のお気に召したらしかった。
「私が女官……?」
貴陽に帰宅し、久しぶりに帰宅した有紀と共に過ごすためか鳳珠は公休日はきちんと帰宅し、有紀と様々な話をした。
正月も明けて冬が明けていく様をのんびりと眺めていた日。
鳳珠がとある老人を連れて帰ってきた。
老人は朝廷三士の霄太師だと名乗った。
客室的な部屋で客人の用事を聞いていると、釈然としない何かを感じながら霄太師の口からで単語に首を傾げた。
「そうですじゃ。有紀殿には主上付きの女官となっていただきたい」
それが新たな物語の始まりだった。
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まあ、この辺のお話は前から何度も書いているので。
あちこち変わったりしていますが。
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