※このお話は『青空の下で』のヒロインと絳攸が?%E:39%#、関係になり目出度く結婚したら、というお話です。
とりあえず書きたくなったら書いていく感じでシリーズタイトルは『もしも君と』(仮)です。
本編がその方向に行く可能性は大ですが(遠い未来話を進めていってそのような要望が多ければ)サイトの方へ移動する予定は未定です。
朝の光景
何度春を言祝いだだろうか。
柔らかな日差しに目を細め新たな生命の芽吹きに感謝の念を捧げたか。
華燭の典、という程のものではないが、この春に有紀は幼なじみである李絳攸と婚礼の儀を行い、絳攸の元へと嫁いだ。
婚約まで漕ぎ着けた際、大多数の周囲からは「やっとか」と大いに呆れられ同時に祝福された。
婚礼の際には多くの知人達に祝福され、何度も嬉し涙が零れた。それを養父が寂しげに笑い、微笑んだ絳攸がそっと滴を拭った。
養父からは周囲の予想とは違い反対の声は一切上がらなかった。ただ麗しい顔を、色々な感情によって歪ませながら『お前が決めたことなら、私は反対はしない』と一言。
最後に付け加えるように寂しげな笑みを作り『しあわせに』と。
その反応に周りは驚いていたが有紀は予想していたとおりであった為に、淋しさを抱えてこれまでの時を過ごしてきた。
紅家の屋敷で同居を主張した黎深一人の反対を押し切り(他の人間は別居に賛成なのに黎深に手こずったのは流石黎深というべきか)同じ敷地内に屋敷を構え、そこを新居とした。
風が梅の香を薫らす。爽やかな香が鼻孔をくすぐり、晴れやかな笑みが浮かぶ。
やはり梅は紅梅が一番好きだと、思い目を閉じて薫りを楽しむ。
「有紀」
呼ばれた名に振り返ると、夫となった人物が寝起きの姿のまま立っていた。手には肩布がかけられている。
「絳攸、おはよう」
「ああ……おはよう。ではなくて、さっさとこっちに来い」
「うん?」
ため息を吐いて苦笑する彼の目の前に立つ。首を傾げながら見上げると、ふわりと優しい温もりに包まれた。
手に持っていた肩布は有紀にかけるつもりだったらしい。
「暖かくなったとはいえ朝はまだ寒い。薄着のまま出歩くな、せめて何か羽織れ」
出歩くなとは言わない優しさに有紀は肩布を握りしめほわりと微笑んだ。
幼さを残す昔から見慣れた笑みに絳攸の表情にも軟らかさが浮き立つ。
「ごめんなさい。でも絳攸も何か羽織らないと」
「俺は寒くないからいいんだ。なにを見ていたんだ?」
「ん、あれ」
指さす先に梅が綻ぶのを見て、絳攸はやはり年を重ねてもこの幼なじみであり妻となった彼女は変わらないのだなと再認識した。
昔から、季節に疎かった絳攸にその都度変わり目の訪いを報せてくれた。
「ああ、数日後には満開だな」
「劉輝様にも教えて差し上げてね」
「あの方は既に知っているだろう」
「それでも」
婚姻と共に後宮女官を辞した有紀は遠く離れても、懐かれていた友人への心遣いは忘れない。
無言で見上げてくる妻に根負けした絳攸が頷くと、妻は嬉しそうに顔を綻ばせた。
その笑みは、今は絳攸の為に向けられる。
「旦那様、御方様。朝餉の支度が整いました」
家人の声に二人顔を見合わせて頷き合うと、自然な動きで手と手を取り合い屋敷へと踵を返した。
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こんな感じの新婚夫婦です。
甘い?のか。
きっと朝餉の席には黎深と百合姫がいることでしょう。
こんな感じの話でよければ読みたい方いらっしゃいましたらご一報いただければ調子に乗ってまた何か書きますが(笑)
[8回]
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