デフォルト名:テリアーヌス卿セレスティア(愛称:セレス)
爪先立ちをしても届くことのない幅の広い肩が己が目線の高さにある。そのことにくすりと笑いながらセレスティアは手に持ってきた肩布をその大きな肩にかけた。
目視できない程の重圧がのし掛かる肩は彼女の愛するもので、静かに上下するを見て微笑みが浮かぶ。
「お疲れさま」
濃灰色の髪をかき上げ、閉じられた瞼の上へと口づける。
時刻は誰もが寝台で眸を閉じる時。
用事があったのと、恐らく風呂の後でも私室で仕事をしている彼に就寝を促すのと、差し入れのお茶を持って彼―――フォンヴォルテール卿グウェンダルの血盟城の私室を訪った。
そこで机に突っ伏して寝ている彼の姿に安堵を覚えた。
「頑張る貴方は素敵だけれど、心配よ」
指通りの良い髪をそっと撫でながらセレスティアは呟く。
責任感が人一倍強い彼はいつか倒れてしまうのではないか、と。
もう一度、頭の上に唇を落とすと体を起こそうとした。
肩に置いた手の上に大きな手が被せられ、驚く間もなく端正な顔が目前に迫っていた。
暖かな唇の感触にゆっくりと瞼を閉じる。
柔らかく優しい触れあいはしばらくの後はずされたが、いつの間に起きたのかグウェンダルによって腰回りを逞しい腕に拘束されていた。
「グウェン?」
腹に埋めれた髪をそっと梳きながら優しく声をかけるも反応はない。
「グウェン、休むなら寝台に行かないと風邪を引いてしまうわ」
返答はない。
「甘えたがりのグウェン。眠たいなら寝台に行きましょうね」
言葉が終わる前に身体が浮き上がり、とっさに目の前にあった首にしがみつく。
包み込まれるような温もりと心地よい重みに瞼を閉じて、身を任せた。
翌朝セレスティアにしがみつくように寝ていた自分に驚愕したグウェンダルが声にならない叫び声を上げることなどこのときの彼女は知らない。
(恋したくなるお題)
グウェンが寝ぼけましたってだけの話。
読むのは平気でも書くのは辛い。でも楽しい。私には珍しく糖度が高めですな。
最近はこういう話を書くことに抵抗感がなくなってきました。
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