虹の向こうに
デフォルト名:綾音(あやね)
どこまで行ったら、この楔から抜け出せるのだろうか。
けれど、どこまで行っても抗えないものがある。それは、既に温もりの通わない自分の身体だったり、白龍の神子を守る八葉に選ばれたことだったり。
手で、触れることの叶わない少女が異界の、それも己が守る神子の妹であることも。
「……変えることの叶わぬものが運命というのだろうか」
「え?」
「あ、いや……」
口をついてでた言葉をとっさに隠そうとするが既に相手の耳に入っていた。
敦盛の隣で海を眺めていた綾音は、ぼんやりとその眸に彼を映すとこてんと首を傾げた。
「変えられないことが、運命?」
「……私が、怨霊である私が神子の八葉であるということは運命なのだと」
ふむ。と敦盛の言葉を自分の中で昇華させようと考え始める彼女を見て敦盛はほほえむ。
姉の神子に似ているようで似ていないのは綾音のこういったところだろうと思うのだ。
やがて考えがまとまったのか綾音はゆるゆると首を振った。
徐に敦盛の手を取ると両手で包み込んだ。
「私は違うと思うな」
運命に人は抗えないかもしれない。
けれど、抗ってみれば何か変わるかもしれない。
「変えられない運命もあるかもしれない。でも、抗ってみて変わる運命もあるかもしれない」
自分は貴方の様に重い枷を背負っていないからこそ言えるのかもしれないけれど。
「人が変わろうとすれば変われるように、不変なものは何一つないと思う」
「……」
黙り込んでしまった敦盛を不安そうに眺める綾音に気づいた敦盛は安心させるように微笑んだ。
「私も、そのように願っても許されるだろうか」
「っうん。誰も敦盛さんを怒っていないし縛ってないよ。敦盛さんを許すことができるのは敦盛さんだけだもん」
「……そうだろうか」
「そうだよ!」
力強く頷く綾音につられ、敦盛は優しく微笑みを浮かべ、そっと目を閉じた。
「ありがとう、綾音殿」
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
だいたいこの二人はまわりをきにしないでほのぼのしているイメージが強いです。
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