TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。
感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。
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それは赤く染まった雪。
ぽたり、ぽたりと白き着物に落ちる赤き雫。
美しい、と一瞬でも思ってしまうのはそれが生命を象徴する朱だからだろう。
「……っ、く……」
傷口が焼けるように痛む。
視界は霧がかかったように霞む。体を動かすことはままらなくて、けれど、前へと足を踏み出さなければならない。
―――このような場所で最期の時か……
けれど、自分の真っ当ではなく、暗い闇の底を歩く生き方では仕方のないことかもしれない。
身に纏わりつくように漂う怨恨、呪詛、血の穢れ。
それらが傷口に纏わりつきいっそう血が止まらない。
自力でそれらを祓えない今、彼女に術は一つしか残されていなかった。
けれどそれは失敗しればもう二度と戻れない。
選択肢はあってないようなものだった。彼女は、儚くなることができないのだ。
「……清水はどこに…」
穢れだけでも祓わなければならない。原始的な方法でいいのだ。それしか今は行えない。
雪を踏む音が聞こえた。
――嗚呼……、これまでか
雪の上に座り込み顔も上げない彼女に諦めが襲いかかった。
「曙未ちゃん!?」
けれど駆けられた声は聞き覚えのあるもので、曙未は体の力が抜けていくのを感じた。
「そんな怪我をして……っ! どうしてこんなところに…っ」
少しだけ首を上げると緑色の着物と苦しそうな顔が目に入った。
「か……わ…ど」
梶原殿。そう呟いた言葉は言葉にならず霧散し、それにつられて曙未の意識も飛んだ。
意識を失う直前暖かい腕に支えられたことと、また自分はこの人に苦しそうな顔をさせてしまったとぼんやりと感じた。
意識を失った曙未を抱き上げるとその冷えた体がけれど燃えるように部分部分が熱いことに歯噛みした。
そしてこの華奢な身体を蝕むように黒い怨念がつきまとっている。
悔しさに力が籠もるがまずは彼女の治療が先だと、源氏の薬師であり参謀の弁慶の元へと足を進めた。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
綺麗なお題だとあえて真逆に走りたくなる性格の悪さ。
[0回]
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触れたら壊れてしまう。そんな気がした。
だから、そっと奥底に大切にしまい込んだもの。
いつも、遠くから見ていた。
自分よりも遙かにうまく立ち回る、そして人に気を使うことのできる人。
自分自身が人付き合いが苦手なためか、そういった人は眩しく見えたのだ。
「君は……政子様の」
「……お初にお目もじつかまつります」
「俺は梶原景時」
「篠崎曙未と申します」
柔らかい微笑を浮かべる人だった。
見た者を心の底から安堵させる笑み。
その立場にいながらも微笑を絶やすことがない。心根の強さを羨みもした。
気づくと羨むどころか視線を奪われていた。
「貴方は……心の強い方ですね」
「そんなことないさ。俺は弱虫だから、君の方がよっぽど……」
「心の弱い者はそのような顔はできません」
現に私は弱い。故に、そのような仮面はかぶれない。
穏やかな微笑を眺めるのが好きだった。けれど自分が目の前にたつとその微笑は掻き消え切なげなものへと変わる。だから遠くから眺めるしかできなかった。
初めて会話を交わした数日。それが心の奥底でそっと隠された思い出。
触れたら壊れてしまう、一刹那の夢幻
(不思議な言葉でいくつかのお題)
いつも景時視点ですが、いつもと逆で。
[0回]
星と月がぼんやりと照らす闇夜に浮かぶ桜並木は来た者すべてに感嘆の声を上げさせた。
はしゃぐ神子と白龍を視界の端に留めながら曙未はぼんやりと桜を見上げている九郎の隣に立った。
「九郎殿、今宵は素晴らしいものをありがとうございます」
「……いや、俺も最近皆に会っていなかったからな。つきあってくれてこちらこそ感謝の言葉もない」
そして二人は自然な動作で月を見上げた。
望月になれぬ、十六夜月。
柔らかな風に桜が少しずつ散る様を重ねると、一枚の写し絵のような美しさ。
「曙未。義姉上から何か使いはきたか?」
「……いえ。ですがそろそろ戻ろうと思っております」
「そうか」
「えっ?!曙未さん帰っちゃうんですか?!」
真後ろから聞こえた声に二人とも驚かずに振り返る。気配はもともと分かっていたからそこで望美が聞き耳をたてていたとしても支障はなかったからだ。
無愛想だと自覚している自分になぜここまで構ってもらいたがるのかわからない。
「まだ一緒にやりたいことがたくさんあるんですっ!!」
不思議なほど望美は曙未になついていた。
「手合わせだって、お買い物だってお散歩も……! まだ帰らないでください!」
「それは完全にお前の勝手ではないか」
「でも戻る日は決まってないんですよね?だったら、曙未さんを呼び戻す必要がでてきたら手紙が来ますよ」
「……確かにそうだが…」
九郎が望美に丸め込まれている。
もう少しとどまらないかと言い出すのは時間の問題だろう。
仲がよい二人の様子に曙未は笑みをこぼした。
[0回]
精霊は恋をしちゃいけないの?
恋は人間だけのものではないわ。
そう、万象に宿る精霊だって時には恋に落ちることもある。
神は恋をしてはいけないの?
神だって同じ。
神だって、精霊だって。同じように恋をするの。
「神子、見て」
「ん? なーに、白龍」
「ここには精霊がたくさんいるよ。神子を祝福してくれている」
熊野へと向かう途中白龍は、林で足を止めて私に満面の笑みを向けた。
その声に足を止めたみんなもつられて林に目をやる。
耳を澄ませば、風が葉を揺らして美しい音色をたてていた。
その次の日、新たな林に足を踏み入れると白龍は前日の笑顔はどこに行ってしまったのか、悲しそうにしていた。
「…木が死んでるな」
「わかるの?ヒノエ君」
「なんとなくだけどね」
「長が、死んでしまっているよ。……残ったひとつも危ないよ」
そう言って一本の細い木に触れると白龍はじっと私を見上げた。
は、白龍の神子にそんなことが?!
「神子、力。私に貸して?」
「な、どうするんだ白龍」
「神子の力借りて五行を整える。……この土地の神がいないから、長くないけど、ひとつは助かるかもしれない」
たどたどしく話す白龍に促されるままにその木に触れた。
よくわからないけど白龍は満足そうに笑っていた。
その数日後のことだった。
「わ、わたくしもお連れください……」
過細い体をした女の子が現れたのは。
*
やっぱり続かなかった。
[0回]
デフォルト名:篠崎曙未(しのさき あけみ)
……桜を、見に来ました。
……京に、美しく可憐な桜が咲いていると聞きましたので。
舞い降りた一人の白龍の神子。その手には白銀の剣。
東の方、異国の神降ろしたる女は一つの駒を放つ。
駒を見張る駒を。
「傷の舐め合いはもうたくさんです!!……もう、踏み込まないで下さい」
決して交わることのなかった二人の道が、時空を駆ける少女の手によって今、交わろうとしている。
「私の先の見えない道にあなたは迷い込んでしまっただけ。はじめから道は分かれていました。――あなたはこの暗闇から出るときが来たんです」
けれど、なによりも二人が歩み寄ることを畏れていた。
血塗れた手では何も触れやしないのだと、互いに己を戒める。
「君が幸せに笑ってくれるのなら、俺はかまわない」
誰よりも臆病で、誰よりも身勝手な心優しき一人の陰陽師。
「私は、暖かい日を得る資格はない。けれどあの方にはどうか柔らかな日が射し込んで欲しい」
ねじ曲げられた人生を悩み、愛し生き続ける一人の元・情報屋。
「困ってしまいますわ。あなたたちが繋がってしまうと糸が拗れてしまうもの」
少女が賢明に繋げた絹のようにか細い糸を、一人の女が指に絡めとる。
「さあ、龍神の神子舞いなさい」
……わ、たし、は、……――
「あなたは今誰の犠牲の上に立っているのかお忘れのようね。わたくし、今とても気分がよいの。特別に思い出させて差し上げてもよろしくてよ?」
決して重なり合うことはないのだろうか。
哀しい螺旋は続くのか。
「神子、二人の願いは通う点がない。二つをかなえることは私には難しいよ」
「なんで?!」
「曙未は景時だけの、景時は曙未だけの幸福のみ願っている。相反する二つはかなえられない」
臆病者は一歩踏み出るけれど、拗け者は三歩退く。
「君は、どうしてそんな……!!」
広がる赤。失われていく熱。
「…景……梶原、殿にはっ…も、もっとよい方が……」
不条理な運命に少女が奔走される。
「私はもう、曙未さんの体が冷たくなる姿は見たくないんです」
どうあっても幸せになって貰いたいのに。
どの運命に進んでもどちらかが必ず……。
「神子の望むままに……」
「……のぞみはかなうのかな」
ただ、ただ一つを望むだけなのに……。
「ここには私が残ります」
「曙未ちゃん!? 危険すぎる。ここは俺が……」
「いいえ。私が残るのが一番だと思いますので」
“この運命では片方が生き残れない”
「……だめですよ。残るのならみんな一緒です」
何度も見てきた幸せになれない二人。
寂しそうに、切なそうに、戸惑いながら伸ばした手を己で振り払う二人。
冷たく横たわる姿は今度こそ見たくない。
「生き残るのは全員です。一人も欠けるのはイヤなの」
「それが、神子の希み?」
「うん。だから協力して?」
「それが神子ののぞみなら」
この運命はどの道に繋がっているのか。
「あなたには、もっとあかるくてまっしろで、うつくしいひとが……」
針の穴に紐を通すほど難しいというのなら通してみせる。
「私、梶原景時が望むことは……」
「神子殿……いえ、望美。貴女に会えてよかった」
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前野よりもちょい長めのダイジェストです。
かーきーたーい
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