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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

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突発忍人夢?

忍人夢(?)

忍人ルートEDネタバレです。イコール……。

ダイジェストですらない、勢いのみです。

デフォルト名:レウル
常世の軍人でアシュヴィン部下




 始めは敵同士。相手をいかに出し抜くかで、合間見えたことはなかった。


 状況は一変し、共に肩を並べ時には背中を守りあい。
 芽生えたのは戦友へ対する信頼の情。

 何度も言葉交わし、更に芽生えたのは果たしてどちらが先か。


「二つの国の桜を見比べるのもいいかもしれないな」
「でも、即位式が終わるまではそんな時間は取れないわね。お互いに」
「先のことよりも目先のことだな。明日は」
「禍日神との戦いだ。だけど、魂を削られて体調が調わない弧浪将軍は早めに休まれた方がいいのでは?」
「フ。なら、後の雑務は常世が誇る孤高将軍にでも任せるとしよう」



「生太刀となっていても、今までの業を背負わねばならないというの…?!」
「…す、まないな。きみと、…や…、そく…」
「……ううん、ほら、ここからも桜が見えるよ。千尋を祝うかのように、淡い花が満開だ」
「…そ、だな……っは…。す、まっ…」
「私は、君とともに背を合わせて剣をとれたことを光栄に思う。例え、相容れない道を歩いて率いていたとしても。泡沫のような時だったとしても、私は幸福だった」
「…俺も、君と……肩を並べられたことを…誇りに思う……」
「忍人……」
「……(目が、霞む…君の声が)とおのく…」
「忍人……見えないのか」
「…レウル……君、が」
「私は忍人が好きだ。君も同じ気持ちで居てくれたと自惚れても良いのかい?」
「…君は…いつもそうだったな」
虚ろな眼差しで淡く微笑んだ忍人の頬に悪戯な桜が舞い降りた。



**

勢いだけでした。

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遙か4 青い翼の蝙蝠

デフォルト名:朔夜

※ネタバレ注意?




 光の加減で青く見える黒い瞳が嫌いだった。

 蒼目、金髪は初代神子の証。
 豊葦原を救った初代神子の話は王族の間では禁忌である。


 傍目には分からない態度でも、朔夜にとってはあからさまによそよそしく、見ていると胸に重いものをもたらす。


「あら、私は朔夜の眸が好きよ」
「わたしも、朔夜姉さまの目の色好き」

 ただ二人だけが真っ正面から肯定していた。

「わたしとちょっぴりおそろいね」
「そう…ですね。二ノ姫とお揃いです」

 目線を合わせて笑めば、幼い従妹はきゃらきゃらと声を上げて笑った。

「私は二ノ姫の空のような眸の色も、花の蜜のように淡い黄金色の髪も好きですよ」

 はにかむ従妹は贔屓目なしに可愛らしく、日々大人を相手にして疲れていた心に優しさを染み込ませる。




 この二人だけだと思っていたのに、政略的に婚姻を結んだ相手から似た言葉を受けたとき朔夜は呆然とした。

「お前の瞳に比べればどんな宝玉も霞んでしまうな。稀に見る美しい色だ。……朔夜? お、おい、何故泣く」

 頬をそっと指で拭われて、呆然としながら涙を流していたことに気づいた。

 どうしてこの人は、ただ形だけの妻である自分にこうも優しくしてくれるのか。

 故郷の豊葦原にも連れて行ってくれて、妃殿下としての扱い、何よりも。

「おいっ、泣くな朔夜」

 目を見て、『朔夜』の名を呼んでくれる。あの人がこの世にいたことを、共にいたことを肯定してくれる。

「俺は思ったことを言っただけだぞ? 一体どこに涙を流す要因があったのか俺にはさっぱり分からん」
「…なんでもないの」
「訳もなく涙を流すわけないだろう。ほら、さっさと白状しろ」

 慰めているつもりなのか、ぶっきらぼうながらに言葉の節々に優しさを滲ませるアシュヴィンに、目尻に涙を浮かべながら笑う。

「嬉しかった。ただ、それだけなの」
「なんだ、美しいと思うものを美しいと言っただけだぞ? …今までお前の周りにいた奴らは見る目がなかったのだな」



(不思議な言葉でいくつかのお題2)


アシュヴィン夢の話でした。

シリーズ名をつけたいのですが、いいのを思いつけません。

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遙か4 アシュヴィン夢3

前回に引き続き
デフォルト名:朔夜




※ネタバレするかも




 常世の国に中つ国が攻め滅ぼされ、朔夜が常世に身を置いて暫く。
 朔夜は第二皇子黒雷アシュヴィンの第一妃の座に収まることが決まり、気づけば正式にアシュヴィンに嫁ぎ終わった。


 夕焼けのように赤く燃える橿原宮を見てから、あっと言う間に色々な出来事が過ぎ去っていた。


「なんだ、深いため息なんかついて」
「……特には何もないわ」

 岩牢の様に思えてしまう造りの窓から外を眺め知らないうちについたため息をアシュヴィンに聞かれ、朔夜は微苦笑を浮かべた。

「ただ、この国は恵が少ないのね」
「そうだ。限られた恵を、多くの者達で奪い合うから昔から諍いが絶えない」

 朔夜一人で寄りかかるには広かった窓にアシュヴィンも隣あってもたれかかる。
 深い紅の髪が風に揺られるのを見て朔夜は隣をじっくりと眺めた。
 朔夜の隣に立ちアシュヴィンは窓の外遠くを眺めていた。その顔は、普段あまり見ない真剣なもので。その横顔に中つ国の同い年で、双刀を振るう友――最早彼は友とは思っていないかもしれないが――を思い出した。

「だが、よく分かったな。まだおまえには常世の現状など話した覚えは…。どうした?」
「え…? 何が」

 不意に朔夜を振り向いたアシュヴィンが困ったような顔をするが、どうしたと問われても答えを持たない朔夜は困惑するしかなかった。
 答えようとしない朔夜に苦笑いをこぼすと、アシュヴィンは手袋に包まれていない右手を朔夜の頬に添えた。

 じんわりと伝わる人肌の温もりにゆっくりと目を閉じると、笑われた声がした。

「泣きそうな顔をしていたが、何を思ってのことだ?」
「……、何でもないわ。ただ……」
「ただ、何だ。言ってみろ」

 閉じられた瞼をあけることなく朔夜は頬に添えられた手に己の手のひらをあてた。

「ここは豊葦原ではないのだと思って」
「そうだな。ここは常世。おまえの愛する豊葦原ではない」

 少し温度の低い声に、思わずどきりとする。

「…だから、この常世も豊葦原と同じくらい愛せるようになるわ」
「豊葦原に比べれば恵も少なく、民は貧困に喘ぎ、暗い陰謀が渦巻くこの国をか?」

 自嘲とは違う笑いが込められた声に内心首を傾げながら、朔夜はゆっくりと目を開けてアシュヴィンを見た。

 彼は真剣な面もちで朔夜を見ていた。
 だから、朔夜は笑いかける。

「中つ国にも、薄暗闇はあったわ。私は、たくさん教えられてきたもの」

 そっとアシュヴィンの手を離すと、もう一度窓の外を見る。
 恵は少なく、龍脈は途絶えかけ。けれど、必死に生きる常世の民。それは豊葦原でも同じ事。


「一度は散ることを覚悟した私は、中つ国ではなくて常世の王族に組み込まれたのだから。王族は、民を搾取して贅沢をすることが仕事ではないもの。民を愛し、民を守るのが仕事。だから、その責務を全うしたいだけ」
「……朔夜、おまえは直系ではないと聞いたはずだったが」
「傍系も同じ事よ。……でも私は、中つ国の民に報いることはできなかったわ」

 一ノ姫を護ることができず、中つ国が滅びることも止められなかった。

 風に髪を遊ばせ、口を閉ざした朔夜を見てアシュヴィンはそっと指に髪を絡ませる。


「そういえば先ほどの問いに答えてもらっていなかったな」
「問い…? ああ、龍脈のこと?」
「ああ。中つ国の姫は全員巫(かんなぎ)ということか?」
「まさか。私は正式に巫の修行は受けていないし神子ではないもの。ただ、私はたまたま少しだけ霊力が高くて……、龍脈の流れを感じ取れるだけ」

 軽く世間話的なつもりで笑うが、アシュヴィンの指には未だ朔夜の髪が引っかけられていて、その彼は怖いくらいに真剣な顔をしていた。

「アシュヴィン?」
「アシュでいい。そうか…、俺は興味でとんでもない女を捕まえたようだな」

 最後の方が小さな声で聞き取り難いが正確に聞き取った朔夜は眉を顰めた。

「失礼ね」
「そう怒るな。言葉が悪かった。誉めてるんだこれでも、な」

 少し驚いたようなアシュヴィンを半目で睨み付けるが、急にため息をつくと表情を一転して曇らせる。

「……ねえ、どうしてアシュヴィンは私に優しくしてくれるの」
「だから、アシュでいい。……優しく、か。答えが必要か?」
「……」
「悪いが、俺にも分からない。優しくしたいからする、ではいけないか?」

 柔らかく笑う、夫となった人に朔夜は首を横に振って答えた。



**

一番グダグダだぁ。
にしても私にしては甘いですが、世間では微糖にも引っかからないですよね。
アシュヴィンは勝手にしゃべり続けるからダメだ!!

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遙か4 アシュヴィン夢

デフォルト名:朔夜(さくや)
中つ国の傍系王族


※がっつりネタバレになる予定です。

~前回からの続き~




 葦の生い茂る畦道で無邪気に遊んだ幼い頃。
 なにも考えず、ただあの方の傍にいて共に学び、共に叱られ、共に遊んだ日々。
 次第に公務が増え、易々とは抜け出せなくなった時に連れ出してくれたのは羽張彦と柊だった。


 行った場所は、幼い頃に一ノ姫と二ノ姫と共に行った葦の草原。
 黄金に輝く、葦原を見て、八百万の神に守られた豊葦原を愛しく思ったあの場所。

 幼い子供を隠すほどの葦も、成長すると腰までの高さで。

『成長しないって怒られてばかりいた私たちも大きくなったわね』

 そう言って笑いあった。

『ほら、朔夜。皆が呼んでるわ』

 白い繊手に手を重ねようとして、突然足場が崩れ落ちた。



「――――っ!!」

 驚愕に目を瞠り、意識が覚醒した。
 鼓動が強く胸を打ち、息が荒い。混乱しそうな意識を取り戻すために目を閉じ、胸に手を当てて深く息を吸い込んだ。

 どのくらいの時間が経ったのか。ほんの僅かかもしれないし、数刻も経ったのか。
 ようやく呼吸が落ち着いた朔夜は、自分が見知らぬ部屋の寝台に寝かされていることに気づいた。

 冷たい岩で作られた室内。
 燃えるように赤い、毛織物の敷物。
 どこか牢獄を思わせる造りは、中つ国とは似ても似つかぬ造りをしていた。

 心細さに襟元を握るが、手触りに覚えがない。
 慌てて己の格好を見ると部屋同様、中つ国にはない服の型。

 萌葱色を貴重とした服は、記憶にある常世の国の人間が来ていた服に似ていた。


「……常世」

 ようやく朔夜に意識を失う前の出来事が甦ってきた。
 橿原宮の炎上、宮の人間を逃がし、二ノ姫を風早に頼み、ナーサティアに拘束され……。

 改めて自分の格好を見直した。
 見慣れぬ服は、とても肌触りがよい生地で、とても高価なものだろう。
 中つ国では傍系とはいえ王家に名を連ね、一ノ姫の補佐として位を持っていた朔夜の服は上質な仕立てだった。
 突然連れてこられた常世の国で、亡国の姫に着せるものではないだろう。


「……皇に謁見、かしら」

 若しくは、見せしめに殺すか。だとしたら常世の服を着せる理由がわからない。

 とりあえず、背中に流れる髪をせめて束ねたい。何かないかと部屋を見渡す。


「目が覚めたようだな」

 突然聞こえた声に動きを止め、ゆっくりと振り向く。

 意識を失う前に聞いた声とは違い、聞き覚えのない青年の声。

 扉に見えないが、岩壁にもたれるように常世の青年が一人いた。

 浅黒い肌の精悍な彫りの深い顔立ちはどこか自由に駆け回る獣を思い浮かばせる。
 赤茶色の癖のある髪を後ろで編み込み、不敵な笑みを浮かべる立ち姿は、何の理由もなく朔夜を身構えさせた。

 ゆっくりと目を合わせると、青年は薄く笑いもたれかかっていた扉から身を起こし、朔夜へと近づく。

「お前が、中つ国の姫か」
「……失礼ですがあなたは」
「これは失礼した。常世の第二皇子、アシュヴィンだ」

 よろしく頼む。慇懃に笑う彼を思わずじっと眺める。


「…あなたが、火雷殿の弟御の黒雷」
「ああ、サティとは面識があるのだったな」
「サティ? ……ああ。可愛らしい愛称」
「だろう?」

 思わず小さく笑うと、耳にかけていた髪が、顔に落ちてくる。
 そのまま指を滑らせて髪を手で纏めると、先ほど見渡そうとした室内をぐるりと見渡す。

「元結を探しているのか?」
「ええ……でもないなら、仕方ないわ」
「……多分そこにあると思うが…。ちょっと待て」

 ふい、と朔夜の横を通り過ぎアシュヴィンは壁際においてあった棚を漁り始めた。
 少しといわずに警戒していた朔夜は呆気にとられてその後ろ姿を見る。
 棚を漁りながらも「ここにあったと思ったが…」などと呟いているのは本当に常世の皇子なのだろうか。

 そういえば今、何刻なのだろう。気になっても、窓はなく時刻を訪ねるにはアシュヴィンに聞くしかないだろうが、彼に今声をかけるのは悪いだろう。

「ああ、あった。ほら、使え」
「ありがとう」

 渡されたのは、真紅の細い編み紐。これほど見事な色に染めるのは難しいだろうと思うほど美しい色をしていた。
 手早く髪を纏めて元結で縛る。型もなにもない簡単な結い方をする朔夜をアシュヴィンは面白そうに眺めていた。



「アシュ、いつまでかかっている」

 低い靴音ともにナーサティアの声が室内に響いた。

「ああ、元結を捜していたのさ」
「元結……まあいい。悪いが、来てもらおうか」

 呆れたようにアシュヴィンを見たナーサティアは真面目なものになり朔夜を見た。
 小さく顎を引くと、踵を返したナーサティアの後ろをついていった。





 連れて行かれたのはやはり謁見の間だった。
 玉座に腰掛ける皇(ラージャ)その横を固めるように朔夜と共に入ってきたナーサティアとアシュヴィンが座る。
 見せもののようなものだった。

 恐らくは常世の重臣たちなのだろう。謁見の間の壁際に朔夜を真ん中にして人々が座っていた。


 顔を上げよとの声に素直に前を向く。

 周囲から痛いほどの視線が刺さり、正面からの威圧に泣きたくなった。

 けれどそれらを一切表に出さず、顔は前を向いたまま。

「中つ国の、春ノ姫か」
「はい」

 皇から確認され、言葉を返すとそのまま審議が始まった。
 朔夜には口を出す権利など始めから持たされておらずただ聞くのみ。

 正直、こんなところまで連れてこられて処遇をどうするかと話し合われるとは思っていなかった。
 叔母や、母。他の親戚のように問答無用で斬られ、そこで息絶えると思っていたのだ。

 だが、それも明日までだろう。常世の国の王宮、根宮は薄暗い陰謀が渦巻いていると聞いたことがある。
 特に昨今は暗殺騒動が絶えないとも。
 よくて誰かの妾に収まったとしても誰かに刃を向けられる。
 自分が生き残ったところで、滅びた中つ国の民たちにできることはない。ならば、潔く一ノ姫の元に向かうのもいいだろう。

 審議の内容など耳に入っていなかった朔夜はそこで考えを纏めあげた。思考が終了した頭にナーサティアの抑揚のない静かな声が響く。


「いくら亡国の傍系の姫とはいえ、貴様とは釣り合いがとれん」

 いったい何の話だろうか。彼の言葉と共に部屋の隅から嘲笑が漏れる。誰かが下賜でも願い出たのだろう。

 あくまで、亡国の姫という扱いを崩さないのであれば朔夜の処遇は決まったも同然だ。
 皇の妾、よくて側室だろう。

 無意識のうちにずっと前を見据えていた瞳に疲れを感じそっと瞼を下ろす。
 自害、という形と暗殺、どちらが民に絶望を与えずにすむだろうか。そんなことを考えたとき、審議の声が急に止んだ。


「では俺が妃(みめ)に迎えてもいいか」

 かつんと、石畳に靴音が響く。
 かつかつと間隔を狭め、足音は次第に朔夜の元に近づく。
 視界に入ったのは黒い外套と靴。

 再び目を開くと、目の前にアシュヴィンが立っていた。

 何故、彼が。
 今、何と言った?

「本来ならば、功労者の父上かムドガラかサティに権利があるはずだが、二人とも申し出ない。ならば、私が申し出ても許されますか、父上?」
「……好きにしなさい」

 あちこちから皇の名前を叫ぶ声が聞こえる。


「それではお言葉に甘えて。ほら」

 最後は小声で朔夜に告げると同時に、黒い手袋に包まれた手を挿し伸ばされる。
 突然の展開についていけず、呆然と彼を見上げるが、反射的に右手が彼の差し出された手の上に乗る。
 すかさず引き立たされ、そのまま手を引かれていく。


「…よろしいのですか」
「好きにさせればよい。これでこの件は終わりだ」

 背中の方で聞こえる会話にまた驚きながら朔夜はアシュヴィンに手を引かれて退室した。





 なすがままに連れてこられた朔夜は、どこかの部屋に入ったときようやくアシュヴィンの手を振り解いた。

「まるで手負いの雌鹿だな」
「どうして私を妃(みめ)にすると仰いましたか」
「……まあ座らないか」

 手をひらひらと振り、楽しげに笑いながらアシュヴィンは机を挟んだ椅子に腰掛け向かいの椅子を指さした。

「なぜ」
「何故お前を娶ると言ったか、か? それよりお前、さっきはもっと砕けた話し方だっただろうそっちの方がいい」
「っだから」

 思わず怒気があがりそうになった朔夜の言葉を遮りアシュヴィンは言葉を続けた。

「その方が利害関係が一致すると思わないか?」
「利害関係?……どちらにしろ私は生まれ育ち、慈しむ豊葦原の地を踏むことは二度とできないわ」

 胸中の不安を思わず言葉にすると、葦原が脳裏をよぎり目尻が熱くなる。
 こんなところで泣きたくなどないのにと唇を強く噛むが、視界は涙でぼやけた。けれどそのまま俯くのは何故か癪に障りアシュヴィンを睨む。
 睨まれた彼は面食らっていたようだが、すぐに苦笑を浮かべると腕を伸ばし、その指で涙を拭った。
 突然の予想外の優しさに朔夜は思わず戸惑いを覚えた。

「察しがいいのか悪いのか。俺が向こうに出向くときは連れていってやるさ。正室ならば誰も文句は言わないからな」
「(だったら側室でもいいような)……え?」
「何か不満でも?」

 彼の行動以上に予想外の言葉に思わず言葉が詰まる。

「……正室…?」
「ああ、そっちか。妻など一人で十分だろう?」
「私は中つ国の、傍系よ?」

 第二皇子とは言え中つ国から娶るとしたら直系でなくば吊り合わないだろう。

「俺は構わんさ」
「あなたが構わなくても周りは構うわ」
「構わん。言いたい奴には言わせておけばいい。…興味があったからな、お前に」

 先ほどの「何故」に対する答えだろうか。

「きょうみ?」

 それな対し、自分はは見せ物でも物でもないと睨みつけるがアシュヴィンは楽しげに口元を緩めると、頬杖を突いた。

「年は16と聞いた。残る王家筋は全員自害もしくは殺されている。なのに、先頭に立ち民を逃がし、捕らえられても、敵国の目に晒されてもなお気丈に前を見る娘に、な」

 震える体でなお敵に屈しようとしない気高さに目を惹かれた。

「それに存外お前とならば退屈せんですみそうでもある」

 それに、とさらに続けた。

「黄泉へ下るのは簡単だ。けれどな、亡国の王族に名を連ねるものとして天命を全うしてお前の故国を滅ぼした常世に抗ってみせろ」

 朔夜、と優しく名前を呼ばれ、何故かまた頬を涙が伝う。

 朔夜、と彼女の名を呼ぶ者は少ない。
 公には春ノ姫と呼ばれていて、朔夜の名を呼べる者は少なかった。
 それは朔夜の名を付けたのは、一ノ姫だった為、そして朔夜が呼ぶことを許した者のみがその名前を紡げたからで。

 彼女が付けてくれた名前を、彼女がいたという証を紡いでくれる人はもういないのだと無意識のうちに諦めていた朔夜の心に暖かさをもたらしてくれたのだ。

「あー、もう何故泣く?」
「……桜」
「さくら?桜がなんだ?」
「豊葦原で桜が見たいわ。歩きながら桜を見上げるの。夏には森を縫って歩いて夜には蛍の光を見て、秋は紅葉と月。冬は雪の積もった道を歩いたの」

 姫と抜け出して、臣下に怒られて。そんなことを告げると、困りきった顔をしていたアシュヴィンは、「わがままな奴だ」そういいながら笑った。

「ひととせにすべては無理でも順を追って叶えてやる。まずは、妻問いの宝に髪飾りでも贈ってやろう」
「歌垣の時期じゃないわ」
「構わんさ」


 亡き中つ国ノ姫が、常世の国の第二皇子に娶られたと、常世と豊葦原に知れ渡ったのは七日後のことだった。





前半はサティが出張る予定だったのに気づけばアシュヴィンが勝手に出張ってました。なぜ。
もっと人物を生き生きと書きたいです。描写が単調だ。

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遙か4 アシュヴィン夢

デフォルト名:朔夜(さくや)
忍人と一ノ姫と同じ年
中つ国の女王(千尋母)の妹の一人娘。傍系王族。
黒髪に青みがかった灰色の瞳。
春に生まれたため春ノ姫と呼ばれる。鬼道使い。


※ガッツリネタバレになる可能性ありです。








 深い闇の帳が降りた頃、朔夜は突然の訪問者に戸惑いを隠せなかった。訪問者にというよりは、訪問者の告げた言葉にではあるが。


「今、何と仰いました……?」
「前から言っていた暗き未来(さき)を変えるために出掛けます。でも、あなたは連れていきません」

 ぬばたまをはめ込んだようにつやつやと光る双眸を緩めることなく、朔夜の仕える主――一ノ姫は言った。
 だが、たとえ主とはいえ聞けないものは聞けない。


「何故ですか?!柊と羽張彦はお連れになるのでしょう!何故、姫の従者でもある私をお連れ下さらないのですか?!」

 この世に生を受けたときから、朔夜は中つ国の姫の為に生きてきた。王家の傍流に肩を並べるものとして陰で支え、助けるため。
 そんな朔夜を、今から運命に立ち向かいにいく一ノ姫はつれては行かないと言う。
 悔しさと悲しさで朔夜は奥歯を噛みしめた。

「ごめんなさい、朔夜。でも、あなたまで連れていってしまうと二ノ姫には風早しかいなくなってしまう。あの子を、助けてあげて欲しいの」

 黄金の髪と蒼眼を寂しげに揺らす、二ノ姫が思い浮かぶ。
 龍の声が聞こえぬと、偽りなく言った二番目の異形の姫。

 親しげに朔夜の名を呼びかけてくる姫を思い、朔夜は顔を俯かせた。
 堅く握りしめられた彼女の手を掬いとると、一ノ姫は額をつけ合いそっと目を伏せた。

「お願い。あなたにわがままばかり言ってきた私の最期のわがままです」
「姫様…」
「私が帰ってこれなければ、二ノ姫は渦中に飲まれます。どうか、それを助けてあげて。あなたならできると信じているから」

 この姫の斜め後ろで己は生涯を終えるのだろうとずっと思っていた。
 だがそれは叶わぬ未来だと目の前の姫は告げる。
 規定伝承は覆せないのか。

 じっと見つめてくる瞳に逆らえる己を朔夜は持っていなかった。

「…っ……拝命、仕りました。お気をつけて、いってらっしゃいませ」
「ありがとう、朔夜」

 今までありがとう。それと、ごめんなさい。


 今までに見たことがないほど優しく微笑み、一ノ姫は橿原宮を去った。その背中を見送れないことに朔夜は絶望を覚え、部屋で嗚咽をこらえていた。


 何度陽が沈み、昇っても、三人は戻ってはこなかった。




 そして、怒号と共に橿原宮は常世の軍勢に急襲された。
 中つ国が誇る四道将軍は早々に保身に走り、守りは何もないに等しく、中つ国を統べる巫たる女王は常世の将軍の手に掛かり息絶えた。他の王族たる者達も次々と常世の手に掛かった。

 火の周りが早く、視界が炎と煙で遮られながらも朔夜は宮の中を走り回っていた。黄金色の髪を持つ、最後の姫を。


「二ノ姫?! 二ノ姫はどこに?!」
「姫様、危のうございます!ここは私たちにお任せ下さいまして早くお逃げ下さい!」
「いいからあなた達は逃げなさい!! 宮と共に殉じるのは許しません! っ風早!!」

 二ノ姫付きの青年を見つけると、朔夜は縋りつくように彼の白と蒼の衣の裾を握った。

「二ノ姫を安全なところまでお連れして。あなたなら姫を守り抜いてくれる」
「ですが春ノ姫はどうなさるのですか?」
「わたしにはわたしのすべきことがあります。さあ、早く」

 近くで柱が崩れ落ちる音がする。
 走り抜けていく女官と風早を見送り、朔夜は残された人がいないかを炎の中走り回り見た。

 残っていた采女を連れ、火の回りが遅い場所を選んで走る。
 仕立てのよい服が煤まみれになっても構わなかった。
 いつか来るだろうと思っていた日を迎えても悔いはない。

 しかし、心残りがあるとすれば『約束』が護れないこと。

 揺らめく炎に、在りし日を思いうっすらと笑った。



 垣根沿いにでるとそこは不思議と炎にまかれてはいなかった。これ幸いと足早に采女達を急かし、遠くに聞こえる剣戟を避けるように逃げる。
 時折響く咆哮に四道将軍が逃げだし、守りはガタガタだと報告を受けたそこには未だ常世勢に抗うもの達もいるのだと知る。

 混乱に乗じて二ノ姫も重臣も落ち延びたはず。

 二ノ姫が落ち延び、この豊葦原に帰還するならば再興の機会はいつか来るだろう。それまで、中つ国の民には生き残っていて貰わなければならない。

 否、中つ国が再興しようと常世の国に蹂躙されようと民には生きる権利があり、中つ国に殉じる必要などないのだ。

 垣根を抜け、膝を突く采女達を労っていた朔夜は、逃げ延びた際に崩れた髪を手早く結い直し、裾を荒く払った。
 煤は落ちてはいないが、気を引き締めるためだ。

 そんな朔夜の突然の行動に彼女らは目を瞬かせた。


「春ノ姫……?」
「あなた達はこのまま忍坂を越えて逃げなさい」
「姫様?」
「私は共には行けないから。後から他の者も追わせます。誇りは捨てず、命も捨てず生き延びなさい」

 畳みかけるように言い継ぐ朔夜に何かを感じたのか采女を束ねる者が朔夜の足下に額付く。

「姫様なしにどのようにして中つ国を取り戻せましょう。共に」
「いいえ、二ノ姫がいらっしゃいます。神の恩恵を受けし二ノ姫は従者と共にお逃げになられました。いつになるかはわかりません。ですが、二ノ姫がお戻りになるその時まで必死に生き延びるのです。あなたは皆を率いてあげて」
「姫様っ」
「……これが私の最後にすべきことだから」

 自然と笑みを浮かべると、踵を返し剣戟の方へと向ける。
 さめざめと啜り泣きが聞こえるが振り返っている暇はない。
 急がなければ尊い命が減っていくばかりだ。




「中つ国の者達よ! 王家最後の二ノ姫は宮から逃れられた!!今は退き耐える時です。私に続け!!」

 戸惑いを覚える声と共に「春ノ姫様!」と朔夜を認識している声も聞こえた。


 このようなときに、一ノ姫と共に宮の外に降りていたことが役に立つとは夢にも思わなかった。

「よく持ちこたえてくれました。ですが次にあなた方がすべきことは、あなたがた中つ国の民を残すことです。姫が戻られた際に民がいなければ中つ国は戻りません。宮を守る必要はない今、生き延びることを優先して下さい」
「……我が常世の兵を目の前に演説とは、よほど余裕があるのか…」
「っ!!」

 まだ後込みする兵達を説得するために足を止めていた朔夜は、突然背後から腕をとられ捻りあげられた。

 低く、抑揚のない声が耳に響く。それは、聞き覚えのある声で。

 振り向かなくとも相手がわかってしまうほど耳に馴染んでいた。

「火雷殿……っ早く行きなさい!!」
「ですが姫様!!」
「民あっての中つ国だ!二ノ姫がお戻りになられたときに民が一人もいなければ意味がないのがわからぬのか!!疾く去ね!!」

  狼狽える者達を怒鳴りつけると、普段命令されなれている彼らは迷いつつもまっすぐに駆け抜けていった。

 火雷ナーサティアがここにいるため彼が率いる兵達が追いかけるかと危惧していたが、背後にいた彼は「追う必要はない」と一言告げて、他の指示を言い渡していた。
 その間も腕を抜き取ろうとごそごそと身動きするが、走り回った疲れが出始めていた体では力が入らず、強く握られると諦めたように抵抗をやめた。

 真の目的。最後にすべきことを終えたのだ。

 問答無用で切り捨てられなかったのだから、何か話すこともあるのだろうし今すぐは黄泉路には用はない。


 ならばその時まで、愛する豊葦原の景色でも眺めるかと、足下から視線をあげ、遠くに見える香具山を見つめた。


「失礼する」
「……拘束しなくとも逃げませんよ」

 短い言葉と共に紐のようなもので手を拘束されたが、今更逃げようなどとは思わなかった。

「民がいなければ国などない、ですか。あなたは、二ノ姫が戻ってこられるとお思いで?」

 ナーサティアとは違う低い声と共に思い鎧の音がした。

 声を見なくともやはりわかる。常世の皇の盾であり剣となる将軍、ムドガラだ。

「……どこか平和なところで、健やかに暮らしていただければ」
「中つ国に舞い戻らなくともよいと?」
「民には生きる希望が必要です。例え、隠匿されるように過ごされていても二ノ姫は二ノ姫。私などよりも余程生きる気力になるはず」

 例え自分が囚われ、惨めな思いをしても一向にかまわない。むしろ国と殉じようとさえ思っているのだ。

 傍らで黙っていたナーサティアは土蜘蛛が傍に現れると、目していた瞳で朔夜をじっと見た。

「その潔さはよいものだろう。…けれど、民に広く慕われている傍系の姫である君にはこれから役立って貰わねばならない。……エイカ」
「御意」

 深く闇の底にいる者を照らし出すような瞳の炎に魅入られていると、音もなく近づいてきた土蜘蛛の奏でる不思議な音に気づくのが遅れた。


 ゆっくりと焦点が合わなくなり、閉じられていく瞳の向こうでムドガラとナーサティアが何かを言い交わしているのが見えたが、徐々に意識が飲まれていく朔夜にはなにも聞こえず、瞼が降りた瞬間に身体が崩れ落ちた。誰かに抱き止められるのを意識の遠くで感じ、朔夜の意識は暗転した。



 崩れ落ちた朔夜を抱き止めたナーサティアは、無言で腕を彼女の身体に回し抱き上げる。

「ナーサティア様、姫は私がお連れしましょう」
「構わぬ」
「……姫には、お辛いことかもしれませぬな」

 かつては中つ国に従っていた常世の国の皇子と将軍。幾度と橿原に足を運ぶ機会があり、ナーサティアの腕の中で意識を失っている朔夜とも面識はあった。
 分け隔てなどなく接する朔夜に好印象を抱いていた故にムドガラには、この姫を斬らずにすめばという武人らしからぬ思いがあった。

 だがそれ故にいっそう、これから選択させられるだろう朔夜の歩く道のりに同情を禁じ得ない。

「…すべては皇の決定に従うまで。……行くか」
「追っ手は差し向けますかな」
「向かわせる。…だが、深追いはしなくともいいだろう」

 翻り立ち去る白い外套を見て、ムドガラは思わず目を伏せた。

 深く息を吸い込むと、いつの間に鎮火したのか灰の臭いが鼻につく。
 先ほどまで朔夜が見つめていた先を眺め、軽く黙祷をした。




 豊葦原に盛大な勢力を誇った中つ国はここに滅びた。



**

字数の都合のため、いったんストップです。

だるい意識で書くとやつぱりまとまらない……。携帯で書くときはいつも情景描写が適当ですね。だからといってパソコンで書く際はいいのかと問われても答えは否ですが。

肝心のアシュヴィンがでてこなかった……。

橿原炎上の際の話はもちろん捏造です。
ナーサティアの話し方がわからないです。どうしても忍人さんみたいになるのは何故だ。

そしてせりふに勢いと生気が宿らない……。むー。

あとタイトルも決まりません。

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