TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。
感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。
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ほんのりと幸せを運ぶ。
気づいたのは偶然だった。
鼻につくほのかな甘い香り。連想されるのは定番の甘いもの。
決裁待ちの書類を腕に抱えたままマルクト皇帝の資質を訪ねたラシュディは無意識のうちに眉間に力が入った。
それに気づいた部屋の主は面白そうに顔をにやつかせる。
「どうした? ラシュディ。年頃の娘がそんな顔をしてるとじいさんみたいになっちまうぜ?」
「……年頃と言うほどの年でもありませんが、失礼しました」
ピオニーは揶揄ったようだったが、いつもの彼女ならば軽口に乗るというのに今はまじめに切り替えされてしまった。そのことに違和感を感じしばし考え込むが、すぐさま原因に思い至った。
「さっきまでここにガイラルディアが居たんだ」
「ガイが、ですか?」
ラシュディは反復しながら呆れたような視線を向けた。彼も忙しいのだからそう呼びつけないであげてください。蒼い目がそう言っていた。
「まあそう言うな。あいつも見習いみたいなもんだしな」
「……見習いという名の下っ端のような扱いだと思うのですが…」
「まあ、それはどうでもいいだろう? でだ、俺に土産だといっていくつかの焼き菓子をだな」
「……おそれ多いことながら遠慮させて」
「ガイラルディアが丹誠込めて焼いた菓子だぞ? 断るのか?」
意地悪い笑みを浮かべているピオニーはラシュディが焼き菓子を断る理由を知っている。なのにあえて勧めるのは嫌がらせ以外になんの意図があるのかとラシュディは思案してみた。
嫌がらせ以外思いつかない。
「ガイラルディアは『よければラシュディにも』と言っていたが?」
「………一つだけ頂戴いたします」
満足顔なピオニーにマフィンを手渡され、手のひらにかわいらしく乗ったそれを見てラシュディはため息をついた。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
久しぶりのラシュディさんです。冗談抜きで強化期間やりたいです。
[0回]
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大広間には、冷たい沈黙が降りた。
「この国は好きか?」
後戻りできない、大きな一歩。
皆、一様に顔を伏せ、今上帝の言葉を待つ。
「今の立ち位置から移動する気はないか?」
逃げられない卑怯な質問に嘘偽りなく答えればもう罠にはまったも同然で。
「ええ、マルクト帝国が好きよ。……愛しているわ」
静かな声は、水音に沁み入ることなく彼女の胸に静かに浸透した。
「俺の隣に居て欲しい」
ふざけないでと叫びたいのか、逃げてしまいたいのかわからない。
ただ心だけが正直に叫んでいた。
私に、隣に立つ資格があるのなら。
椅子に腰掛けた皇帝は不敵に笑った。
「妃を迎えようと思う。皆の意見が聞きたい」
外堀からじわじわと埋めていく卑怯さ。
けれども、太陽のようにきらきらと輝く金の髪も、いたずらに光る青い瞳も、痩身に見えながらもたくましく力強い腕も、傲慢なほどに自信がある強気なところも。そんな卑怯なところも。
「私に、その資格があるかしら」
「……ある」
――この国を愛している者なら、大丈夫だ。
**
途中で力つきました。
[0回]
久しぶりに店にきた幼なじみは噂ではもう帰らぬ人のはずだった。
「お久しぶりです、エミリア」
にこやかに笑みジェイドは特に驚いた様子のない幼なじみに手を振った。
「あらジェイド、元気そうで何よりだわ」
「いえいえ」
「そちらの後ろで驚いている方々は?」
ジェイドは肩を竦めると入り口であんぐりと口を開けている旅の道連れたちを振り返った。
「しょうがない方たちですね。あなた方は、そこが入り口だとお気づきですか?」
「申し訳ありません、ジェイド」
いち早く我に返ったイオンが呆然と立ち尽くす皆を入り口から退くように促す。それに乗じて我に返ったアニスはジェイドにびしり!と指を突きつける。
「た、大佐が……。大佐が、女の子のあこがれのお店が行き着けぇ?!」
だがアニスの叫びも介さないのかジェイドははははと笑いながらエミリアに言った。
「だ、そうですよ。よかったですねぇ、エミリア」
「しかもなんか親しげですよイオン様~!!」
納得がいかないのかアニスがイオンの腕をぶんぶん振り回すがイオンは苦笑を浮かべるだけだった。
「お、落ち着けアニス。いくらジェイドだって親しげな女性の一人や二人や」
「さすがに大勢はおりませんけどね」
「ほ、ほらな?」
「ガイだって動揺しているくせに」
漫才でもしているかのような彼らの会話にきょとんとしていたエミリアだが、不意に目元を和ませて小さく優雅に礼をした。それに合わせてかジェイドはエミリアをさしてにこやかに笑った。
「幼なじみのエミリアですよ。エミリア、こちらはまあ愉快な仲間たちといった感じです」
「ずいぶんな紹介の仕方ですこと、失礼ですわよ大佐」
「おや、これは失礼」
にこにことジェイドたちのやりとりを見ているエミリアは、時計を見てはっと驚いた。
「ねぇジェイド」
「なんですか?」
「私、あなたが死んだと聞いたのだけど」
「ええ、まあこの通り五体満足ですけど」
「それは見ればわかるわ」
肩を竦めるジェイドと会話の内容の割に特に不思議な顔をしていないエミリアを見てルークは首を傾げた。
「なんか、ケテルブルクのジェイドの妹の反応がふつうじゃない気がしてきたんだけど」
「……いや、あの人の反応がふつうだと思うぞ」
次第に驚きではない焦りを顔ににじませてエミリアはジェイドを見て、不意にティアやアニス、ナタリアを見た。
三人はジェイドとエミリアのやりとりに既に興味をなくしたのか店内に陳列している棚を物色していた。
楽しそうに笑い合う姿を見て、徐々に落ち着きを取り戻すとエミリアはゆっくりと笑みを浮かべた。
そんなエミリアを見てジェイドもあからさまなため息をつく。
「何に焦ったかと思えばもう店主の顔ですね」
「……陛下には顔をお見せしたの?」
「ま、一応は」
「鬼籍入りしてなかった?」
そんなことを心配していたのかとジェイドは肩を竦めて笑う。
「陛下があなたと同じように信じていてくださったようなのでまだ大丈夫でしたよ」
「そう……無事でよかったわ」
ふわりと微笑むとエミリアは三人のそばへと静かに移動した。
「……でもアンタにも笑いかける相手がいたんだな」
「ただの“おさななじみ”ですよ。彼女はね」
「……ってことはあのディストとも……?」
ジェイドは目を細めると勝手知たたる店内と言わんばかりに備え付けのいすに座った。
「あなたならこの色の方が似合うわよ」
「え……っ?」
おいてあったネックレスを眺めていた三人の邪魔にならない位置から一つずつ手に取るとひらりと見せて笑った。
「興味あるお年頃ってやつでしょ?」
「え、えと……で、でも旅では邪魔になるだけだし…」
「こうやって街に来たときくらいおしゃれしたくない?」
「そ、その……」
黙り込んでしまったティアに微笑みを浮かべているとアニスが勢いよく手をあげた。
「はーい、お姉さん大佐とどんな関係ですか?」
その質問に思わず首を傾げるとエミリアは正直に答えた。
「おさななじみよ?」
「……あやしい関係?」
「違うわよ?」
「……そういえば、大佐の行きつけだからと言ってこんなに大勢でお邪魔してもよろしいのでしょうか」
ナタリアが不安げに店の奥につながる扉を見るとエミリアは楽しそうに小さく笑った。
「あら、気にしないわ。ジェイドにつき合える人たちは貴重だもの。こんな店でよければ歓迎するわ」
なぜかティアとアニスとナタリアとガイの四人が驚いたようにエミリアを見た。
四人がなぜ驚いているのかわからないルークはイオンと顔を見合わせた。
「おや、エミリアもずいぶんと有名になりましたね」
「まあ、庶民は両国をよく行き来するしな……」
「大佐自体有名ですが、大佐のお知り合いの方々も名が通った方が多いのですわね……」
よけいに訳が分からないルークは困ったように笑うエミリアをじっと見つめた。
「改めまして『胡蝶』の店長兼デザイナーのエミリアです。ジェイドをよろしくお願いしますね」
(不思議な言葉でいくつかのお題)
思ったように書けないのがアゲハ蝶とアビス本編を絡めること。
前から別場所でチャレンジしているんですけどうまくいきません……
[0回]
夕日が光る金色の髪が振り返ったのを見てルニアは口元に笑みをはいた。
見慣れた夕暮れもグランコクマとバチカルでは全く違う。陽の光も、当たり方も、周りの景色も。
こちらで過ごしてどれくらいになるのだろうか。
まだ馴染めることができたと言えるほど馴染んではいないが、けれどもこの景色をいとおしいと思えるようになってきたのも事実だ。
それはやはり、愛おしいと思えるようになる存在がいるからかもしれない。
「ねえ、ガイ」
「ん?」
青い綺麗に澄んでいる青い湖面がルニアをのぞき込む。青い中に朱色の髪が浮かび上がるのがうれしくて顔がほころぶ。
「私、グランコクマが好きよ」
「バチカルの次に。だろ?」
言うことぐらい分かるさとでも言うようにガイはいたずらに笑うが、ルニアはしかし穏やかに微笑んだ。
その微笑みを見る度にガイははっと息をのむ。
彼女は遠縁だろうと、キムラスカ王族に連なるものなのだと。ナタリアが国を慈しむ際に浮かべる微笑とよく似ている。
「いいえ。バチカルと同じくらいに、ね。私が言うべき立場ではないと分かっているけど」
「そんなことはないさ」
肩を並べて、二人して夕陽を眺める。
ガイの手がルニアの肩を抱こうと持ち上がるが、数分宙をさまよった後体の横に下ろされる。
ルニアは笑いながらガイの手を取り、優しく握った。
燃え上がる夕陽を背に屋敷へと向かう。
グランコクマの白い石畳は茜色に色づき、二人の足下には黒い人影がついてくる。
人影の二人は仲睦まじく手を繋いでいる。
「…いつ、戻るんだい?」
「うーん……明後日、かな?」
「明後日?! 聞いてないぞ?!」
心底驚いているガイに思わず吹き出すとルニアは繋いでいない手を振った。
「言ってないもの」
「……その動作は否定するときに使うものだろ」
「細かいことは気にしない」
はぐらかすとガイは深くため息をついた。
「陛下に最終報告、かな」
「…ナタリアにはしなくてもいいのかい?」
「うーん…置き手紙かな」
「その心は」
「バチカルを出られなくなりそう」
易々と想像できるのかガイは黙り込み、視線を明後日へと向けた。
不意に握っている手が強く握られ視線をルニアに戻す。
「さっきの、冗談だからね?」
「どれのことだい」
「…明後日帰るっていうやつ」
じゃあいつだというのかと尋ねようとすると彼女は唇に人差し指を当てていたずらっぽく笑った。
(素直ないかさま)
傍系主は何気にお気に入りですがルニアの口調がうまく統一できません。ガイとのED後の関係がどうなるかは決まってますし、ED後がきちんと決まっているのはルニアとエミリアぐらいですね。
いかさまって何ですかー
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愛しい笑顔を胸に
初めの印象は『変わった子』
調った顔立ちをしているのに何もかもに興味を持っていないような、受け入れないようなそんな表情。
けれどどこか落ち着いていて優美な所作。年に似合わぬ落ち着いた言動。
それら全てを以てして『変わった子』だと思っていた。
ふとした瞬間に浮かべる人形めいた無機質な顔。陽に光る朱色の髪はきらきらと輝き、内緒話をする時は色の違う双眸がいたずらに輝く。
ルニアは退屈になるといつも窮屈な屋敷を抜けだし、市井に降りていた。
いつものように退屈を紛らわす為に屋敷を抜けだし、小さな公園に来ていた。そこで同い年ほどの子どもが走り回って遊んでいるのをベンチに腰掛けてみるのが好きだったのである。
ある日、ルニアの真っ正面のベンチにルニアと同じ様に腰掛け、子ども達を見ている少年が居ることに気付いた。
毎日同じ時間帯に同じような服装で、同じような顔をして座っていた。
落ち着いた色合いの金髪に澄んだ青色の双眸。それら全てに覇気を感じない。
どうしてだろうか。
けれど理由を知りたいと思う前にルニアは少年に話し掛けていた。
「ねえ、名前聞いてもいい?」
突然のことに少年は僅かに目をみはり、けれど小さく微笑んだ。
「……ガイだよ」
教えてもらえるとは思っていなかったルニアは嬉しく、鍛え抜かれた笑顔とは違う心からの嬉しさを口元に刷けて微笑んだ。
それは彼女にしては珍しいことだった。ルニアは周囲の大人や子どもに対しては一線を引いていたのだ。
「ガイっていうんだ。わたしはルニア。よろしくね、ガイ」
ガイはルニアから目を反らすように伏せたが、ルニアは感じた。
ガイとは仲良くなれる気がする、と。
手を出すと申し訳なさそうに断られ、彼はルニアに触れないことを告げられるがそんなことはどうでもよかった。
互いに打ち解けあうのに僅かに時間をかけたがすぐに仲良くなった。
竹馬の友とまでも呼べるようになった二人。
互いに会える一時は大切な時間で、そして幸福。
崩れ去ったあの日までは。
さよならの挨拶も告げずに別れたあの日からルニアの生活は一変した。
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傍系主で考え中の中編の内容の序章っぽく
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