愛しい笑顔を胸に
初めの印象は『変わった子』
調った顔立ちをしているのに何もかもに興味を持っていないような、受け入れないようなそんな表情。
けれどどこか落ち着いていて優美な所作。年に似合わぬ落ち着いた言動。
それら全てを以てして『変わった子』だと思っていた。
ふとした瞬間に浮かべる人形めいた無機質な顔。陽に光る朱色の髪はきらきらと輝き、内緒話をする時は色の違う双眸がいたずらに輝く。
ルニアは退屈になるといつも窮屈な屋敷を抜けだし、市井に降りていた。
いつものように退屈を紛らわす為に屋敷を抜けだし、小さな公園に来ていた。そこで同い年ほどの子どもが走り回って遊んでいるのをベンチに腰掛けてみるのが好きだったのである。
ある日、ルニアの真っ正面のベンチにルニアと同じ様に腰掛け、子ども達を見ている少年が居ることに気付いた。
毎日同じ時間帯に同じような服装で、同じような顔をして座っていた。
落ち着いた色合いの金髪に澄んだ青色の双眸。それら全てに覇気を感じない。
どうしてだろうか。
けれど理由を知りたいと思う前にルニアは少年に話し掛けていた。
「ねえ、名前聞いてもいい?」
突然のことに少年は僅かに目をみはり、けれど小さく微笑んだ。
「……ガイだよ」
教えてもらえるとは思っていなかったルニアは嬉しく、鍛え抜かれた笑顔とは違う心からの嬉しさを口元に刷けて微笑んだ。
それは彼女にしては珍しいことだった。ルニアは周囲の大人や子どもに対しては一線を引いていたのだ。
「ガイっていうんだ。わたしはルニア。よろしくね、ガイ」
ガイはルニアから目を反らすように伏せたが、ルニアは感じた。
ガイとは仲良くなれる気がする、と。
手を出すと申し訳なさそうに断られ、彼はルニアに触れないことを告げられるがそんなことはどうでもよかった。
互いに打ち解けあうのに僅かに時間をかけたがすぐに仲良くなった。
竹馬の友とまでも呼べるようになった二人。
互いに会える一時は大切な時間で、そして幸福。
崩れ去ったあの日までは。
さよならの挨拶も告げずに別れたあの日からルニアの生活は一変した。
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傍系主で考え中の中編の内容の序章っぽく
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