遙か3×ゴーストハントの主人公
修学旅行先で言葉を話す猫と出くわした。
まるで招き猫のような体型のなんとも愛嬌ある顔をしていて、けれど醸し出すのは妖気で猫とは違うもののように感じた。
「猫……?」
「にゃー」(なんだこの小娘)
「猫なのに……狐?」
しゃがみ込んでのぞき込むと猫からガンつけられてしまった華織は動くに動けずじっと見つめ返していた。
(今、狐と言ったかこの小娘)
(狐? 狐かなぁ? 狐のような猫のような……。どっちにしても化けてるのかな)
「ニャンコ先生ー!!」
「ニャンコ先生?」
呼び声に猫が反応したところを見ると、この猫が『ニャンコ先生』なのだろう。走ってきた少年は華織より一つ二つ年下のようだった。
「君の猫?」
「あ、……はい」
「可愛いね」
「あ、ありがとうございます」
走ってきた少年は制服を着ていて、白皙な頬は走ったからか赤みが走っていた。
『夏目、こいつただ者じゃないぞ。離れろ』
「……喋った」
「え……?」
ニャンコ先生は嫌そうに華織と距離を取るが、夏目と呼ばれた彼は呆然として華織とニャンコ先生を見比べていた。頭が落ちてしまうのではと危惧してしまう。
「猫は……喋りませんよ」
「……そう、だね」
そういいつつも華織と距離を取ろうとする猫に視線がいく。
あやかし、と一言で言っても彼らには階級があるらしい。階級が高いあやかしほど知能が高く、利害なしと判断されれば襲ってくることはない。危険なのは下級のあやかしたちである。彼らは見境なしに襲う危険性があるが祓うのは簡単である。
恐らくあの猫はかなり格が上なのだろう。
じっと見続けていると、遠くから華織を呼ぶ声が聞こえた。
「華織~?」
「望美! こっちこっち!」
程なくして駆けてきたのは望美と将臣であった。二人も突然増えたために、目の前の少年は完全に気圧されていた。
「突然居なくなるんだもん。神隠しにでもあったのかと思ったよ」
「おいおい、こいつの場合は洒落にならねぇって」
「……そうかも。で、何かいた?」
「うん。たくさん、うちの周りにはあまり居ないのが」
「ふうん。……やっぱりもう私には見えないなぁ」
ぴくり、と少年の肩が揺れる。その反応を見て、華織はなんとなく察した。彼も華織と『同じ』なのだろう。
周りと視界が違って、誰にも受け入れてもらえない。
「君は、優しい子なんだね」
「え……?」
「とても強い力を感じる。私とは反対の力。でも負の力は感じない。優しくて心地よい陰の力。……君は、とても優しい子なんだなって思った」
華織が身につけつつある力とは相反する力だろう。自身が神力としたら彼のは妖力と呼ばれるもの。けれど纏う空気は暖かく優しい。
「私たち修学旅行で来てるの。もしかしたらまた会うかもね。それじゃあ」
困惑する少年に手を振ってその場を後にした。
「変わった猫が居たね」
「そうだな。なんつーか招き猫みたいな」
「んー、あれは多分猫じゃないよ」
「え?! じゃあ狸?」
「ちげーだろ。なら妖怪か?」
「多分。喋ってたし」
『おい、夏目。さっさと帰るぞ』
「なあ、ニャンコ先生。……さっきの人たち、見えるのかな」
彼らが立ち去った先を見続ける夏目の肩に飛び乗るとニャンコ先生は太い尻尾で夏目の背中を叩いた。
『最初の小娘は確実に見えていたぞ。私のことを見抜いていたからな。……あとから来た奴らは見えないだろう』
「そっか……。反対の力って?」
ニャンコ先生は嫌そうに顔をしかめると早く歩けと言わんばかりに夏目の肩を叩く。
「あれは神社の者が持つ力だ。数体の神に愛されているな。もう一人の娘と男もほかの神の加護を受けておった。桃色の娘は下級の奴が近づいたら消されるぞ」
「そんなに強いんだ……。俺の妖力とは別のもの……」
考え込むが、夏目が知る他の『見える者』とは考え方が違うような気がした。どのような人なのか、少し気になる。
「明日……。ここに来れば会えるだろうか」
『会うのか?』
「……会ったほうがいい気がする」
**
最近はまりました
[2回]
PR