例えるなら輝かしい笑顔は夏に咲いたひまわりのようで、みていて笑顔になれるとてもすてきな。
柔らかな笑みと共にそう告げると彼は困ったように微笑んだ。
そして誤魔化すように頬の十時傷を指でひっかく。
「んなこと言われたのは初めてなもんだから、なんて言えばいいのかわかんないだけどさ」
「うん?」
「えーと、その……」
口ごもる若き州牧を遠くからなま暖かい目で見守る州官達はさらににこにこと見守っている鄭州伊を見た。
「ありがとな?」
言葉に詰まり照れながら言った燕青を見て有紀は首を傾げた。
「なんでお礼を言われるかわかんないけどどういたしまして?」
微笑む有紀の姿を見て、燕青は先ほど狼狽えた自分に思わずあきれてしまっていた。
「なんつーか、悠舜の知り合いだっつーからどんな子かと思ったら普通の子なんだな」
交渉に訪れていた紫姉弟と楽しそうに会話をする有紀を見ながら燕青は手元の書類に適当に州牧印を押した。
そんな燕青に次々と書類を手渡しながら悠舜は先ほどの様子を思い出して小さく笑った。
「ええ、あなたから見れば普通の子になりますね」
「え?普通じゃないの?」
「なかなか個性的な私の友人と和やかに世間話をする子ですから、他の方から見れば変わった子と見られやすいですね」
適当に相槌を打つ燕青は有紀が悠舜を訪ねてきた時を思い出した。
面会を求める女性がいる。
そう聞いたとき彼は首を傾げたのだ。だが、官がすでにお手紙を差し上げたと言っていると告げると血相を変えてすぐに女性を通した。
現れた女性はまだ女性と呼ぶには早い、だが少女ではない女の子だった。
見事な礼をしてみせた彼女に悠舜は、突然説教を始めたのだ。
燕青によくするちくちくと嫌みが刺さる説教ではなくて、本当に怒っているのを隠さない穏やかな彼には珍しい語気荒い説教だった。
突然の悠舜の説教に呆然となっていた官吏達が仕事を再開して間もなくようやく彼の説教も終わったらしい。
ようやく終わったかと思い、二人の様子を覗くと彼女はうれしそうに笑っていた。
『黎深様がうれしそうだった理由がわかりました』
と嬉しそうに。
複雑そうに笑う悠舜を見て、燕青も思わず興味が沸いた。
話をしてみると、冒頭のことを言われ思わず押されてしまった。
だが、普通なのだ。
『黄』の名を持っているのに普通なのだ。
それがとてもおもしろかった。
「なー悠舜、あの子いつまでいるんだ?」
「有紀さんですか? どうでしょう私も知りませんし」
彼女は名前で呼ばないと怒りますよ?と忠告する悠舜に頷いて燕青は、『すてきな笑顔』と評された笑みを浮かべた。
「もうちょっと話してみたい」
「変なことは教えないでくださいね? 貴陽で心配している保護者に私が文句を言われるので」
今頃彼は麗しい顔を仮面の下に隠して大いに心配しているだろう。
だが悠舜は何故有紀が貴陽を飛び出してきたのか理由を詳しくは知らなかった。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
思いの外長くなりました。
燕青大好きなんですけど口調を忘れました……。
ちなみに有紀が今現在持っている木簡には桐竹鳳麟がかかれていたりします。
[2回]
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