彩りと華やかさを添える。
一本一本丁寧に、色合いを考えて美しく仕上げる。
「……紅貴妃様、よくお似合いです」
そっと手をはなすと彼女は静かに瞼をあげた。
その瞳はいたずらに輝く。頬を幼子のように膨らませて有紀をじっと睨んだ。
「もう、誰もいないときはいつもの有紀姉さまでいてって言ったのに」
「でも本当に貴妃様らしいから思わずそう言ってしまっただけ」
困ったように笑うと秀麗は一瞬言葉に詰まり、ごまかすように鏡を見た。
毎朝秀麗の髪に簪を挿すのがここ最近の有紀の日課だった。
あまり自分の髪に頓着しない有紀が手がけているのになぜかとても秀麗に似合う。
それはとても不思議なことではあったが、秀麗は嬉しく思っていたので疑問の欠片も抱いていなかった。
「今日も可愛いわよ、秀麗ちゃん」
「……っもう、からかわないでよ」
怒ったフリをする秀麗を見て有紀はとても幸せそうに微笑む。
籠の中の鳥は秀麗にはまるで似合わないけれど、こんな風に楽しく笑い会える日が一時でもあるのはとても嬉しい。
幸せだとにじみ出る有紀の微笑を見て秀麗は言葉にまたも詰まり、有紀の帯飾りを見ながらそっと口を開いた。
「……有紀姉さまは、後宮は楽しい?」
「そうだね、目的があるととても心が満たされるかな」
「……もしも、もしもよ?」
帯飾りから顔を上げた秀麗は、なんともいえない微笑を浮かべた有紀を見た。
思わず言葉を飲み込んだ秀麗はじっと有紀の目を見続けた。
「なあに?」
「…、ううん、なんでもないわ」
たとえばの話は好きではない。
(ふしぎな言葉でいくつかのお題)
リハビリです。原作沿いとかは始めると首を絞めそうです。書きたいけど
[1回]
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