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小ネタ日記

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薄桜鬼22

デフォルト名:立花眞里



 原田率いる隊に加わった眞里は何か言いたげな原田の視線に気づかない振りをして隊士と共に公家御門を目指した。
 辿り着いた公家御門では諦めずに、後退しながらも御門を目指す長州と所司代との小競り合いが続いていた。
 原田率いる十番組は惑うことなく前線へと躍り出る。

「御所へ討ち入るつもりなら、まず俺を倒してから行くんだな!」

 淡い微笑を浮かべて槍を構える原田は槍を一閃させて何人かをなぎ倒す。

「くそっ! 新選組か!?」
「死にたい人から前に出て下さい」

 眞里も槍を左手で振るい、聞き覚えのある懐かしい台詞をなぞる。
 隊服を着ない眞里に所司代も長州も困惑したようだったが、向かってきた長州兵を一人斬り捨てるのを見ると、眞里の立ち位置を正確に理解したようだった。

「おのれええっ!!」

 怒声が響き、乱戦が始まった。しかし数で劣る長州側に対し、防衛側に新選組が加わったことにより、続かず。長州兵達は血を吐くような声で唸り撤退を開始した。

「逃がすな、追えっ!」

 所司代の役人達が声を張り上げる。すると、長州勢の殿を務めていた男が、不意に振り返り足を止める。長い青黒髪に浅黒の肌で、長州兵と比べて身軽な格好であった。眞里は彼の手元に目をやり、刀を引き抜くと後ろ足に重心を置いた。

「ヘイ、雑魚ども! 光栄に思うんだな、てめえらとはこのオレ様が遊んでやるぜ!」

 酷薄な笑みを浮かべると、手元の銀色の何かを掲げた。
 直後、甲高い音が公家御門の前に響き渡ると同時に、小さな高い音が響いた。

「ほぉ……」

 男は楽しげに口元を歪めて笑った。視線の先には、悲鳴を上げて腰を抜かした役人と抜き身の刀を構えた眞里が居た。

「眞里?!」

 原田の悲鳴じみた声が聞こえていないのか、眞里は挑戦的な笑みを浮かべると槍の穂先を男へと向けた。

「てめぇ……見切ったな」
「やはり蛤御門の銃痕は貴方の短筒ですね。厄介なものを使われる」
「よく知ってるな。これは拳銃って言うんだが、厄介だなんて顔してねえぞ」

 にやりと笑い会う二人に周りの兵は誰一人として入り込めなかった。
 二人のやりとりを飲み込めない周囲とは違い、原田は目を見張りつつも状況を確認した。
 長州の男は腰を抜かしている役人に向かって砲したが、眞里がそれを刀身で弾いたか斬ったのだろう。

「てめぇ以外の奴らは銃声一発で腰が抜けみてえだな」

 彼は銃口を眞里に向けたまま、凍り付いたように動かない防衛側を見て皮肉な口調で笑った。
 眞里や原田以外の者たちは、二人のやりとりに飲み込まれていた。多勢に無勢の状態で余裕の姿勢を崩さない男と、槍と刀を構えた奇妙な剣士。

 眞里は原田を一瞥すると、左手の槍を回転させ構えた。
 対峙する男も油断なく拳銃を構える。
 原田が眞里の視線の意味の答えを考えるより先に、眞里が足を蹴って踏み出した。

 間合いをつめても素早い動作で避けられる。数発撃ち込まれるが、時に避け、時に斬って全て回避した。
 互いの攻撃が外れても悔しがるでもなくただ愉快そうに歪んだ笑みを浮かべるのみ。長い遣り取りに感じるが、二人の手が早いために、経過したのは幾許もない。
 半ば呆然と見ていた原田だが、眞里が再び原田を一瞥した。
 振り返った彼女の目と口元の笑みから何かを推測し、納得した原田は槍を握り直すとにっと口角を上げた。

 男が眞里との手合いに夢中になり出来る一瞬の隙に間合いを詰め。

「遊んでくれるのは結構だが……、おまえだけ飛び道具を使うのは卑怯だな」

 男が振り向く前に槍の切っ先を突き刺す。しかし、男は悠然と交わした。振り返ると、挑戦的な笑みを浮かべる。

「卑怯じゃねぇって。てめぇだって長物持ってんだろうが」

 男が原田に意識をやってる最中に眞里が再び間合いを詰め刀を振るうが男は避ける間がなかったのか拳銃で刀を受け止める。
 そこを突くように再び原田が槍を振るうと男は驚くべき跳躍で跳び、回避する。着地と同時に発砲するが眞里は再び刀で弾く。

「ほぉ、おまえらやるな。……てめえらは骨がありそうだな。にしても、真正面から来るか、普通?」
「小手先で誤魔化すなんざ、戦士としても男としても二流だろ?」

 淡い笑みと共に返された原田の言葉と眞里の無言の肯定に、ひゅう、と彼は面白がるような口笛を吹いた。

「……オレは不知火匡様だ。おまえらの名乗り、聞いてやるよ」
「新選組十番組組長、原田左之助」

 不知火は拳銃を納めると眞里を目を細めて眺める。

「で、そっちがあいつが言ってた立花って奴か」
「お察しの通り立花眞里だ。訳あって新選組に身をおいている」
「覚えていてやるよ。面白い奴らに会えて今日のオレ様はゴキゲンだ」

 獰猛な笑みを浮かべて肩を揺らす男。彼は拳銃を納めているが、眞里も原田も構えを解いていない。
 しかし、眞里は刀を納めると目を細めて不知火を見据えた。

「所で長州の方々は既に引かれています。殿の貴方が我々を足止めする必要はなくなったのではないですか?」

 原田は諫めるように眞里の名を呼ぶが、不知火は眞里を見据えて目を細めただけであった。

「ほぉ?」
「ここは一つ引いていただけませんか? 我々の目的は追討ではなく、警護。貴方とやりあうにこの場は相応しくない」

 ちらりと後ろを見る。その視線は足手まといが居る場では遣りづらいと如実に語っていた。

「お、おい眞里」
「土方殿の指示は残党を追い返すこと。追討も討伐も申し渡されていません」
「だがよ……」
「いいぜ」

 原田の困惑を余所に不知火は楽しげに言い放った。

「いいぜ。肝の座った奴は好きだからな。さっきも言っただろ。面白いやつらに会えて今日のオレ様はゴキゲンだ。――だが、いい気になるなよ。おまえも原田も次があれば容赦しねぇぞ」

 剣呑な光を宿した目線に眞里は不適な笑みを返すが、肩を原田に掴まれその背中に庇われる。

「俺たちも長州となれ合うつもりはないさ。ま、お楽しみは素直に取っておくんだな」
「あー、おまえとは相容れねぇな。俺は【好きなものは最初に食う】派だ」
「奇遇ですね、私も先に食べる派です」

 気が合うな!とけたけた笑いながら不知火は原田から十分な距離を取ると、ひらりと手を振って踵を返した。
 その姿が見えなくなると、原田は槍を抱え直して振り返り際に眞里の肩を掴んだ。

「無茶するな!!」

 大声ではない短い言葉から心配していることが伝わってくる。しかし眞里は心配される意味が分からず眉をしかめて原田を見返す。身長の差から大分見上げなければならないのが腹立たしかった。

「あのような至近距離ならば見切れます。連射式でも両手でもなかったですし、そうでなくとも難しいですが手がないわけでもない」
「そういう問題じゃねえだろ?!」

 しかし、そこで言葉を切ると肩をつかむ手をそのままに顔を逸らした。眞里が見上げる横顔は苦悶に満ちた表情を浮かべていた。

「……いや、おまえの判断は正しかったと思う。こっちも余計な怪我人を出さずに済んだ。副長の指示は長州を追い返すことだしな。確かに、……奴らの追討は、俺らの仕事じゃない」

 少し後悔の色が浮かぶ。横顔を眺めながら、眞里は幼なじみの真田幸村付き真田十勇士の二人を思い出した。
 戦場で無茶をした幸村と眞里を、心配混じりの説教をしてきた猿飛佐助と霧隠才蔵も今の原田のような顔をよくした。

 毎度怒られるわけではなく、極たまに起こることであった為、何故だったのか思い出せない。
 二人して難しい顔をして黙っていたが、御門の警護を再開する音が聞こえた眞里は、肩に置かれた原田の手に上から手を重ねた。

「原田殿、隊士に指示を」
「……ああ」

 重ねられた手に驚いているようだったが、原田は目元を和らげて重ねられた眞里の手を握った。
 眞里の手よりも大きく、節くれだった手は槍に生きてきた男の手で、懐かしさを思わせる。
 ふっと和らいだ眞里の顔を見て原田は一瞬表情をなくすが、名残惜しそうに手を放すと指示を待つ隊士へと指示を出しに歩き出した。



 破壊された御門の破片の片付けや負傷者の手当等を手伝いそのまま原田の隊に従って働いていた。
 眞里の隣で動いていた原田はふと作業の手を止めると長州が去った先を見つめた。眞里も原田の様子を伺うと、彼は瞳に寂しげな色を浮かべていた。

「……今更逃げたって、ただ辛くなるだけなんだろうけどな」
「……そう、ですね。御所に弓引いたことは紛れもないこと……。長州に帰るのは容易ではないでしょう」
「不知火の奴とは、また会うことになるかもな。……そんな気がする。ま、お前の槍も俺の槍も避けられたしな。あいつの相手は、ちと骨が折れそうだが」
「ですが、相手が誰であれ立ちふさがるならば戦うのみです。次は後れをとりません」

 不敵な笑みを浮かべながらも揺らぎない覚悟を滲ませる眞里を見て原田は逡巡するとその頭を何度か優しく叩く。

「おまえの昔話、楽しみにしてるぜ?」

 笑顔であるのに剣呑な雰囲気漂うそれに眞里はこくりと小さく頷いた。



***

原田のターンと見せかけて不知火のターン!
アニメ見てからずっと書きたかったので駆けて満足であります。
違和感残るところとかはまたいつか修正します。
次はちーさまとふくちょーのターン!

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