天才。
天つ才に恵まれ、愛された存在。
天は人に二物を与えずと言うが二物どころかたくさん与えていることもある。やはり天つ才に恵まれていても恵まれない才も同時に持っているものだった。
「…聞いてもいいかな?」
「……却下だ」
馴染みの法律事務所の室内にて繰り広げられている光景に稔莉は?%E:648%#ホましさと同時に目眩を覚えた。
「まだ鶴も折れないの?」
ぴしりと何かが凍る音がした気がした。
陰謀が幾重にも絡まり、同時に悲しさと思惑とその他諸々が複雑に絡み合った事件に終止符を打つと、稔莉の幼なじみである成歩堂龍一は重度の風邪がぶり返し、強制入院と相成った。
それならば今居る場所である成歩堂法律事務所は休業中にあるはずだが、家主に縁のある者が集まり千羽鶴を折っていた。
『千羽鶴を折るとなるほどくんの風邪が治るんだよはみちゃん!』
『ま、真宵さま。つるさんを千羽も手折ってしまうのですか?!』
こんな変わった会話が切片であった。千羽鶴を知らない春美の為となるほど治癒祈願のために急遽千羽鶴作成委員会が作られ、稔莉と御剣が収集されたのである。
折り始めると図画工作が苦手という春美も手慣れた様子で折り始めるがただ一人、真剣な表情で手を震わせながら慎重に鶴を折る大人が居た。
不格好ながらにも愛嬌を感じさせる鶴をゆっくりと折り続ける御剣の様子が懐かしくなり、ついついからかいの言葉がでた。
「昔も苦手だったけどぶきっちょさは変わらないね、みっちゃん」
「ム。そ、その言い方には異議あり!」
「……昔よりは愛嬌のあるものを作れるようになったみたいだけどね」
「……グ」
法廷にて成歩堂に矛盾を突きつけられたときのような反応を示す御剣だが哀れなことにいつもならばそこで慰め役になっている成歩堂は病院に。真宵と春美は鶴を折るのに夢中である。
「だ、だが! 今なら5ミリの狂いもなくおれるのだ!」
「すごいねー」
無感動に言った稔莉はすでに御剣から視線をはずし、鶴を折り始めていた。ふるふると震えている御剣と違い、綺麗に素早く折っていく。
「この小さな鶴で5ミリは大きいわよ」
「……」
そう言っている間に稔莉は一羽を折り終えて御剣の作った鶴の隣に並べた。
確かに自分のものは白い部分が目立ちあちこちにしわが目立つ。
どこか敗北感を味わいながら御剣は視線を手元に落とし無言で折り始めた。
「……でも」
「…?」
「こういうのは綺麗か、じゃなくて気持ちの問題だからね。ぶきっちょな怜侍君ががんばって折ってるんだから龍一君も早く良くなるでしょ」
「……君はけなしたいのか持ち上げたいのかどちらなんだ」
ジト目で睨まれた稔莉はニヤリと笑い、御剣は訊かなかったふりをすることにした。
(詩的20お題)
鎧には必ず欠点がある。そういうニュアンスで。3終了後。
[0回]
PR