デフォルト名:天河華織(あまかわ かおり)
世間一般ではクリスマスが近いその日。天河華織は一人渡り廊下を歩いていた。幼なじみ二人とはただ一人だけクラスが別れた彼女は移動教室の帰り道、まだ止まない雨の降る曇天の空を見上げてため息をついた。
「華織ーっ!」
雨の日は気が滅入るのだと思うときに明るい馴染みのある声がかけられた。
幼なじみである春日望美の声であった。
声につられ見上げていた声をそちらに向けると渡り廊下の先に幼なじみが大集合していた。
「まーた、ため息ついてたのか?」
ほっとしたような顔をして望美の近くへ駆け寄った華織に、長身に明るく鮮やかな青い髪を持つ有川将臣はしょうがないなと言ったように笑った。
「どうしたの?譲まで揃って」
「たまたまですよ。華織さんは?」
同じく長身の、兄とは違い穏やかな緑の髪を持ち、知的な雰囲気を醸し出す眼鏡を指でいじると有川譲は気まずそうに言った。
「華織は体育の後だよね?」
「は?なんでお前が知ってんだ?」
「華織の時間割は隅々まで知ってるよ」
「先輩…他のことを覚えた方がいいと思いますけど…」
拗ねたように頬を膨らませる望美に華織はたしなめるように桃色の髪に手をおいて軽くなでた。
「望美たちはこれから移動教室でしょ?いいの?こんなところで油を売っていて」
「あ、そうだった! 将臣君、早く……あ、れ?」
くるりと将臣の居る方へと方向転換した望美は、急に中庭を見つめて動きを止めた。
つられて譲と将臣も見るがそこには雨に打たれる泥しかない。
「望美? どうした?」
「華織さんまで……」
譲の言葉に華織を見ると彼女も驚きに目を見張り望美と同じ場所を見ていた。
そのうち望美が一歩足を踏み出し少し屈みこんだ。
「ボク、どうしたの?」
「は? 望美、どうしたんだ?」
「華織さん、そこに何か居るんですか?」
譲に肩を揺すられて華織は弾かれたように譲を見て目を瞬いた。
「えと……今までに見たこともないような小さな……子供?」
『あなたが……私の神子』
華織が答えたのと子供が望美に笑いかけたのはほぼ同時だった。
その瞬間空間が歪み、幼なじみ達は突如現れた川の流れに飲み込まれた。
(始まりの35題)追憶の苑
短編主人公です。実は元・別館巻遙か3連載主人公です。
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