戦神(ダラ)。それは武術を極め戦術を極めし者に贈られる称号。
問題は誰がもらうかであった。
「称号って選べるものだっけ?」
「普通は選べないはずなんだけどな」
「ですがこの称号に限りこちらに選択権があるようですね」
突然目の前に現れた『戦神』の称号を拾ってきたジェイド。
どうすべきかと考える中真剣に頭をひねって考えていたルークはティアとイオンとナタリアと真剣に論議を始めていた。
「なんつーか俺らの仲間って種類が多いよな」
「多い、というより多様性に富んでいるわね」
「そうですね。ルークとガイは剣術に優れていますがお二人とも流派が違いますし、ティアは第七音素譜術士です。ジェイドは譜術士であると同時に槍使いですし、アニスは人形使いです。ナタリアは弓使いであると同時にティアと同じく第七音素譜術士です」
「イオンとルーニャ姉上は体術でも種類が違うもんな」
「そうですわね。ルーニャの体術は王家に伝わる秘術でもありますし」
ある意味物騒な集団だろう。
「うーんじゃあ一番物騒な人に贈ればいいのか?」
「……そんな基準で贈られてもうれしくないと思うけど」
「物騒、というとやはり刃物を持った方々ということになりますわね」
「……人として一番危ないのはジェイドとアニスだと思うけど」
ぽつりと呟いたルーク5言葉にイオンが苦笑すると同時に少し離れた位置から「ルーク、何か言いましたか?」「ルーク、なんか言った~?」と言う声が聞こえ彼は即座に首を振った。
「物騒、といえばルーニャは体術使いと聞く割にいつも薙刀を使うようだけどなぜ?」
心底不思議そうなティアにイオンも同調するように頷く。けれど答えを知っているナタリアとルークは答えていいものかと遠くにいるルニアを見て難しい顔をした。
二人の困惑に気づいたルニアは微苦笑を浮かべながら近くにより座り込んだ。
「別に今更隠さなくてもいいよ」
「ですが一応秘術、という扱いですし」
「旦那は言わなくてもわかってるみたいだけどな」
後ろからついてきたガイは遠くでアニスと会話をしているジェイドを顎でしゃくった。
「城には武器は持ち込めないからみんな丸腰でしょ?」
「ええ」
「一応王家の末端に居た私は城に出入りできたから身を守る術を身につける必要があったの」
「……傍系だから護衛はつかない。そういうことかしら」
「そう。まあ、傍系王族なんて昔は珍しくなかったから代々傍系に伝わるものがあってねそれの一つが丸腰でも身を守る術、体術」
「ですがただの体術ではないのですよね?」
ただの体術ならばルークとナタリアが口ごもるわけがない。
ルニアはあっさりと頷いた。
「傍系には直系を護る使命もあるからね。暗殺者を体術で伸す?そんな生ぬるいことをやっていたら血が途絶えてしまうわ」
「噂のキムラスカ傍系王族の殺人体術ですか?」
笑いを含んだジェイドの声にルニアはまたもあっさりと頷く。
「たぶん一番物騒なのは私じゃないかしら?」
「じゃ、じゃあこの称号は……」
「ガイですね♪」
言いにくそうなティアの言葉に被せてジェイドとアニスがにこやかに言い切った。
「は? だって称号は『戦神』…」
「いえいえよく見て下さい。隣にはっきりと『戦神の花嫁候補』と書いてあるじゃないですか」
言われてみれば確かにそう書いてある。
「ガイが嫁なのか?」
「ですが、確かにガイは炊事洗濯など家事全てをこなしますわね。なにも問題ないのではないのですか?」
「それもそうか」
「ならばこの称号はガイに差し上げましょうか」
解決したと言わんばかりに先ほどまでの重苦しい空気は払拭され称号をガイの手に押しつけるとルニアとガイをおいて皆は立ち上がり行ってしまった。
残されたガイは笑いをこらえた様子のルニアを見てうなだれた。
「ガイが花嫁さんなら私が花婿さんかー」
「普通逆じゃないのか?」
立ち直れないガイの顔をのぞき込んでルニアは微笑んだ。滅多に見ることのない爽やかな笑みだった。
「心配しなくてもちゃんと養ってあげますよ。ガルディオス伯爵」
「ところであの二人は自分たちが冷やかされたことに気づいているんでしょうかね?」
「気づいてないですって。あーあ、ガイで玉の輿は諦めなきゃー」
(不思議な言葉でいくつかのお題)
ガイとの関係がよくわかりません。(だめじゃん)
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