風の気持ちのよい日は室内でじっとしているよりも外に出て日にあたり風に吹かれたい。
そんなことを思うのは雪国で生まれ育ったからだろうか。
「まあ、ふつう貴女と同じ年代の方は外出の際は日傘を挿して日焼け対策を万全になさるでしょうね」
「やっぱりそう思う?」
眼鏡を押し上げて読めない笑みを浮かべるのは幼なじみでもあり他国に名高いジェイド・カーティス大佐である。
穴場とも言える住宅街と外部解放区域の間の木陰。
肌寒くなってきたとは言えまだまだ日差しは眩しい。
二人そろってぼんやりと座るのはいつ以来だろうか。
幼なじみの出奔。
ホド戦争の終結。
絶えない国境線の小競り合い。
エミリアには心休まる時間があまりなかった。いや、エミリアだけではないだろう。この地を踏みしめて生きる国民全員が同じ気持ちであった。
「そういえば私の元に貴女の兄上からの手紙が届きましたが」
「丁寧に送り返していいわよ。私が言うことを聞かないからジェイドに送っただけなのだから」
いくつになっても心配性な兄だ。
自分にはもう跡取りを育てなければならないために余裕などないというのに。
「……まだ、成し遂げていないから帰るつもりはないわ」
「そんなことを言っていると嫁ぎ遅れますよ?」
「あら、結婚しなくても生きていけるわよ。ジェイドが友達としていてくれればね」
「私も一応軍人なのですけどね」
近況報告をすませると他愛のない世間話に花が咲く。もっぱらエミリアが話し手でジェイドが聞き役であるがそれがこの二人の変わらぬ距離感であった。
どこにいても水の気配漂う水の都。
美しい無機質な街にまた暗い影が差し込まんとしていたが、それこの木漏れ日の前ではすぐに霧散してしまうものだった。
(不思議な言葉でいくつかのお題)
ジェイド片恋編を書きたいです。 ジェイドは報われない方が好きですv
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