※『虹の向こうに』の設定です。
デフォルト名:春日綾音(かすが あやね)
冷たい空気によって頬に小さく痛みが走る。
何でもない振りをするには少し痛いそれに対して、同じように冷えた手のひらで頬を包み込む。
一瞬ヒヤリとした冷たさに襲われるも、徐々に肌同士の接触によりぬくもりが生まれる。
「綾音殿、こちらの方が風が当たらない」
寒空の下で星月夜を見上げる綾音に、低く落ち着いた声がかけられた。
声の主がすぐにわかった綾音はすぐさま振り返り、大きな笑顔を浮かべた。
「敦盛さんもこっちにこない?」
「……私がそちらに行ったら貴女はこちらに来てくれるだろうか」
「うん」
二つ返事につられたのか、霜の降りた地面を踏みわけて同じ星空の下に敦盛が姿を表した。
好きな空を敦盛と眺められることが嬉しいのか、綾音は喜びを隠さずに冷えた手を差し出した。けれど敦盛はそっと首を振った。
「…私が触れると貴女がよけいに冷えてしまうから」
「関係ないよ」
もう一度力強く差し出すが、やはり敦盛は手を出さない。それをじれったく思ったのか綾音は問答無用とばかりに敦盛の右手を握り、引いた。
「今日は特に寒いから星が綺麗だね」
「そうだな……」
「あんな風に光る物が手元にあれば毎晩便利なのにね」
懐中電灯などを思い浮かべながら呟いた綾音の言葉に敦盛がクスリと笑う。
何か面白いことを言っただろうかと首を傾げる綾音に笑いを納めた敦盛は笑みを浮かべて言った。
「よく将臣殿が申されていた。星は勝手に燃えているから燃料はいらなくて経済的だと」
「…マサ君と同じ発想ってイヤだなぁ」
一般常識と少しずれたことを面白がって行動する幼なじみの笑い顔を思い浮かべ綾音はいやそうな顔をする。けれどその中にも優しげな色を見つけた敦盛もつられ、優しく笑う。
「こちらの世界にも綾音殿の世界にも、同じ星があるとお聞きした」
「うん。同じ星座もあるし、やっぱり北極星はあるみたい」
空を見上げ、見覚えのある星座を指でなぞる。
「……もし、」
「もし?」
もし、私も貴女と同じ……。
「…いや……。そろそろ風が冷たくなってきた。戻らないか」
「うーん、でも……クシュ!!」
「身体も冷えきってしまう前に」
そう言って笑い、自分の打ち掛けを綾音に被せると淡く微笑み、打ち掛けを押さえていない方の綾音の手を取ると、先ほど呼び寄せようとした場所へと誘う。
先ほどは渋られたことを率先してされ、そして滅多に見られない微笑を目の前で目撃した綾音は驚きに固まったまま敦盛の先導に従った。
もし、私も貴女と同じ世界に行けたなら。輝きは変わらない貴女の光をたどって必ず逢えるのに。
けれど、紛い物のこの身体ではそう願うことすら罪だろう。
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
あっつんが好きです。
敦盛→←綾音ちっくに。
遙か3は→←の組み合わせが好きです。明烏も実は→←の設定……あまり生かされていませんが。
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