キラキラと輝くのは夜空に浮かぶ宝石達。それらを見守る暖かな月にゆったりと弓を弾き、月夜の曲を奏でる。
さわさわと木々の葉を揺らす風の調べを邪魔しないように、静かに自然に。
「秀麗殿の二胡も見事だけれど、有紀殿もよい音を持っていらっしゃる」
「当たり前だ。こいつも長いこと弾いてきているからな」
「秀麗~……」
自分の奏でる音を肴に三人が酒を酌み交わすのを聞き、思わずクスリと笑いがこぼれる。
「分かっていないなぁ絳攸。自分の音を持つというのはとても難しいことなんだよ」
秀麗な目元を細め、指を目の前で振る藍楸瑛をちらりと一瞥し、そして笑いながら二胡を奏でる有紀を見て絳攸は杯をぐい呷った。その飲みっぷりに楸瑛から拍手が贈られるが絳攸は気づかないフリをして杯に酒を足した。
「有紀が弾けばそれは有紀の二胡だ。秀麗が弾けば秀麗の音。この二人はこれが当たり前なんだ。有紀、こっちに来て呑まないか」
「うん、有紀殿の酌で飲めるなんて私は幸せものだな」
「馬鹿が。明日どうなってもいいのならやらせてみろ」
「……やっぱり共に呑み交わしませんか?」
なにを想像したのか少し青くなった楸瑛が、自分の隣の席に空の杯を置いた。それを見て黙礼で礼を述べると最後の音をきっちりと弾いた。
「うーん有紀もう終わりなのかぁ?」
「まあまあ主上。有紀殿と呑み交わす機会などあまりありませんよ?」
「うぅむ。確かにそうだな」
頬を酒で染めた端正な顔をだらしなくゆるめ劉輝は己の隣の席(絳攸と劉輝の間の席)を叩き、座るように促した。
その誘いを断れず二胡を置き、腰掛けるとあからさまなため息が楸瑛から聞こえたが、三人は無視をし、絳攸は何もなかったかのように有紀の杯に酒を注いだ。
「次!次は余からだぞ」
「はい。絳攸にしては珍しく甘いのを飲んでいるのね」
「べっ、べっ別に! たまには甘い物も呑みたいときはある!」
「有紀、さあ余からの酒だぞ! 心して呑むのだ!」
「はい。それでは失礼して…」
一介の女官がこんなことをして許される訳ではないのに、自身とて理解しているのに、この優しい王の誘いを断れない自分がいる。
それが将来彼のためにならないと分かっていながら。
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
うーん、うまくいかないです。
[1回]
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