デフォルト名:朔夜
※ネタバレ注意?
光の加減で青く見える黒い瞳が嫌いだった。
蒼目、金髪は初代神子の証。
豊葦原を救った初代神子の話は王族の間では禁忌である。
傍目には分からない態度でも、朔夜にとってはあからさまによそよそしく、見ていると胸に重いものをもたらす。
「あら、私は朔夜の眸が好きよ」
「わたしも、朔夜姉さまの目の色好き」
ただ二人だけが真っ正面から肯定していた。
「わたしとちょっぴりおそろいね」
「そう…ですね。二ノ姫とお揃いです」
目線を合わせて笑めば、幼い従妹はきゃらきゃらと声を上げて笑った。
「私は二ノ姫の空のような眸の色も、花の蜜のように淡い黄金色の髪も好きですよ」
はにかむ従妹は贔屓目なしに可愛らしく、日々大人を相手にして疲れていた心に優しさを染み込ませる。
この二人だけだと思っていたのに、政略的に婚姻を結んだ相手から似た言葉を受けたとき朔夜は呆然とした。
「お前の瞳に比べればどんな宝玉も霞んでしまうな。稀に見る美しい色だ。……朔夜? お、おい、何故泣く」
頬をそっと指で拭われて、呆然としながら涙を流していたことに気づいた。
どうしてこの人は、ただ形だけの妻である自分にこうも優しくしてくれるのか。
故郷の豊葦原にも連れて行ってくれて、妃殿下としての扱い、何よりも。
「おいっ、泣くな朔夜」
目を見て、『朔夜』の名を呼んでくれる。あの人がこの世にいたことを、共にいたことを肯定してくれる。
「俺は思ったことを言っただけだぞ? 一体どこに涙を流す要因があったのか俺にはさっぱり分からん」
「…なんでもないの」
「訳もなく涙を流すわけないだろう。ほら、さっさと白状しろ」
慰めているつもりなのか、ぶっきらぼうながらに言葉の節々に優しさを滲ませるアシュヴィンに、目尻に涙を浮かべながら笑う。
「嬉しかった。ただ、それだけなの」
「なんだ、美しいと思うものを美しいと言っただけだぞ? …今までお前の周りにいた奴らは見る目がなかったのだな」
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
アシュヴィン夢の話でした。
シリーズ名をつけたいのですが、いいのを思いつけません。
[1回]
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