本編ネタバレです。
だから、君が大切なのに。
両世界の精霊と契約すれば、ミトスとの契約が破棄され、楔が抜ける。
そう信じるレネゲードの言葉通りに契約を進めるロイド達に、不満は抱かなかったが一抹の不安を覚えたアトラスはここ数週間の間クルシスのメインコンピュータを操作し、ありとあらゆる計算をしていた。
ようやく答えが出た時、クラトスから「ロイド達がルナとアスカとと契約をしそうだ」との連絡を受けた。
「…あの、バカがっ!!」
寝不足とは別の意味での目眩を感じながら、アトラスはその場から姿を消した。
「ユアン、人の話を聞け」
「誰が聞くものか。貴様こそ年貢の納め時ではないか」
鍔迫り合いを繰り返しながら、クラトスはまるで話を聞かないかつての戦友に軽い苛立ちを覚えていた。
陰で進める計画を全て台無しにするかのようなこの男の行動にため息をつきたいのをこらえて、剣を握る手に力を込めてはじき飛ばす。
「聞けユアン。貴様の計画は、マーテルを解放するどころか、この世界を崩壊させかねん」
「フッ、そのような戯れ言誰が信じるか!」
吠えるように叫ぶと、タブルセイバーを構え直す。
互いに頭に血が上っていた二人だが、クラトスは不意にユアンの背後に現れた気配に安堵のため息をついた。ようやく、平行線を辿る剣戟が終わりを迎えるのだと。
昔から、平行線をたどる二人の言い合いに終着を付けてきたのはアトラスだけだ。
「信じないとマーテルが消滅するけど?」
言葉とともに気配を露わにし、背後からユアンの背中に剣先を突きつける。
「なっ、アトラス貴様!! クルシスにはつかないとっ」
「ついた覚えはないよ。ただ、使用させてもらうときはある。……っ、マナが変わった。走れクラトス!!」
ユアンに説明するまもなく、階段上から感じるマナの変化に剣を鞘に収めて走り出すアトラスについてクラトスも後に続く。
ユアンは、突然現れた戦友に説明もなく置いて行かれたことに少し憤慨しつつも、二人の慌てようから計画通りに事が進んだことを知り口元に笑みを浮かべた。
全ての楔は抜け落ちて、支えを失った大樹は暴走を始めた。
元々封印されていた精霊が目覚めて活発化していたマナにつられた大樹はシルヴァラントの大地を蹂躙した。
大樹に吸収されかけ、苦しむマーテルの姿を見たアトラスは、呆然としているユアンの肩を突き押した。
「だから昔から言ったはずだ! 貴様は考えが足りないのだから、きちんと計画を立てて行動しろと!!」
「ならば、貴様は考えあっての行動だったのか?! あのとき! 我々を」
ユアンの言葉にアトラスは顔色を変え、右手を強く握った。色が変わるほどに強く、何かを堪えるように。
そんな二人に先ほどとはまるで立場が逆だと思いながら、クラトスはアトラスの肩を叩く。
「ユアン、アトラス。今は現状打破を探るのが先だ」
「……そうだね。言い合っていても時間は戻らない」
ようやく口を挟めると思ったのか、ロイド達がユアンとクラトスに現状説明を求める。
その声を背中で聞きながらアトラスは空を仰いだ。
『あのとき! 我々を』
ユアンの言葉の先は容易に想像がついた。
「最低だな、……私は」
ぽつりとつぶやいた言葉は、ロイド達の言い合いの声にかき消された。
「君が居れば、私たちはバラバラになることなどなかったのに」
今言っても詮無いこと。無意味なこと、ただ虚しさを伴うと知りつつも、言葉にせずにはいられなかった。
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グダグダです。
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
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