何気なく100のお題
016 落書き(旅主・幼なじみ組)
太陽が高く昇っている。さわやかな潮風を頬に感じ心地よさに瞳を閉じる。
今日は海岸で一休み。
「なにをやってるの?」
海岸線に集まってきゃらきゃら騒いでいたロイド、コレット、ジーニアス、しいなの四人にそっと近づく。
「あ、アトラスさん! 見てください!」
「これ、俺が描いたんだぜ! そっくりだろ?」
そういってロイドは木の枝で砂浜を指した。
そこには妙に力作である砂に描かれた似顔絵。
「コリンとあたしらしいんだ」
照れ臭そうに笑うしいな。アトラスは微笑ましい光景に目尻が下がる。
ザザァン……。
「あ~っ」
その似顔絵が波に掠われて、たった一瞬で消える。
先程まで描かれていたところを名残惜し気に見ると、ロイドは笑顔で腕まくりをして言った。
「よーしっ! 次はノイシュとクラトスを描くぞ!!」
「よーし、じゃあ私はノイシュを連れてくるね!行こっ、ジーニアス!」
「うん!」
次に描かれた絵も瞬く間に波に掠われる。けれどその瞬間を迎えるまでが、とても楽しい時間。
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017 はちみつ(企画主・ゼロス)
「わっはちみつだ~!」
「はちみつなんて普通だろぉ?」
ティータイムのお供にどうぞと出されたパンケーキに塗られているはちみつ。
それを見て喜んだ数分前の自分を恥じるとゼロスから顔を背ける。
「……シルヴァラントでは滅多に食べられなかったのっ」
無言の追求からのがれるように言い捨てると、セフィアはパンケーキにフォークを伸ばした。
その様子を見ていたゼロスは突然手を叩いて使用人を呼んだ。
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018 目論む(軍人主・上司二人)
「…ラシュディ?」
部屋の主に向かって投げ掛けられた言葉は返事が戻ってくることはなかった。もしやと思ったピオニーは部屋の中にスルリと入り込んだ。
執務室の中にはピオニーしか居なく、彼女の机には綺麗に整えられた数日分の書類。
その日付を見ると本日のみならず数日後の分までこなしてあった。
「ジェイド!」
隣のジェイドの執務室に飛び入ると、彼はラシュディと書類を見て話をしていた。
「どうかされましたか、陛下」
「……ラシュディ、今回は逃がさんぞ」
朗らかな笑顔のラシュディに騙されずにピオニーは二人に詰め寄る。ジェイドはもう仕事はできないと判断して珈琲に手を伸ばした。
「この仕事が片付いたらコッソリ行くつもりだったんだろうか、そうは問屋がおろさないぞ。ラシュディ」
ピオニーに肩を掴まれラシュディは観念したように息を吐いた。
「今回は失敗しましたね、ラシュディ」
本日を持って小旅行(徒歩)に行こうとしていたラシュディ。あえなく御用となった。
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019 落とし穴(アゲハ蝶・ピオニー)
「こんなの普通は体験できないだろうな!」
一体何が楽しいのだろうか。エミリアは深く深く息を吐くと、ジト目でピオニーを見た。
周りは何も見えない。ちらちら降る雪は慣れているのにとても冷たい。
「落とし穴にはまるなんて、滅多にできない経験だぞ?」
エミリアは、自分は泣きそうになっているのに、楽しそうにしているピオニーが恨めしく思えて来た事に気付いた。
「滅多にできない経験でも経験したくなかったわよ…」
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020 最初で最後(教団主・被験者イオン)
「あなたは…被験者と仲が良かったと聞きましたが……」
偶然出会った彼に困り顔で微笑まれた。そしてアディシェスも苦笑するしかない。
「……何故、僕は」
「約束をしたんですよ、導師イオン」
彼の言葉を遮る。アディシェスは彼の前では決して見せない笑みを浮かべた。
「『イオン』と呼ぶのは彼だけだと、彼と約束したんです」
「………」
生きることに対しても無欲であった彼がアディシェスと約束した二つのこと。
対等に扱う。彼以外のイオンを親しく呼ばない。
「きちんと約束させられた彼の最後の願いなんです」
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難産でした。わかんないよー……。
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