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小ネタ日記

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十二国記 元年

「国が欲しいか」

そう問いかけた六太に、尚隆は天を仰ぎながらも、迷いなど何も感じさせぬ声で返す。

「――欲しい」
「やせ細った、何もない国でもか」

人々にも妖魔にも食べるものなど何もない。
ただそこに国があるだけ。そんな雁の国土が六太の脳裏に浮かぶ。
己が無駄に過ごしたこの幾年の間に国土の荒廃はさらに進んでいるだろう。

残った民は三十万。

尚隆は命が削られていくのを感じさせぬ笑みを浮かべ、体を起こした。

「国の大小など関係ない。俺は国を継ぐべく育てられ、親父から国を継いだ。だが、もうその国もない。・・・国のない殿などお笑い種ではないか。それだけだ」
「・・・国土が荒廃すれば人心は惑い、お前の言うことなど聞かなくなる」
「そんなものは俺の甲斐性だろう」

ただ笑う尚隆を六太は感情を抑えた瞳でじっと見た。

「・・・・・・国と民と、城をやろうか」
「お前がか?」
「お前がやる気があるのなら。・・・お前がそれを望むなら、お前は今ある全てに別れを告げなければならない」

じっと見る六太の言葉に尚隆は失笑した。

「俺に別れを告げなければならないものがあるのなら教えてもらいたいものだ」
「二度と瀬戸内の海にも戻れない」
「・・・・・・ほう」
「それでもよければお前に一国をやる。――・・・玉座がほしいか」

舟に打ち寄せる波の音を聞きながら、尚隆は静かに言った。

「――ほしい」

六太は頷き、狭い舟の中を尚隆の傍まで歩み寄る。足元に膝をつき、深く頭を垂れた。

「天命を持って主上にお迎えする。これより後、詔命に背かず、御前を離れず、忠誠を誓うと制約申し上げる」
「・・・六太?」

六太は手をついたまま顔を上げ、尚隆を見上げた。その顔は彼には珍しく困惑していた。

「許すと。国が欲しいと言え。俺を臣下に迎えると。・・・お前が期待を背負っているというのなら、俺が国を背負っている」

尚隆は困惑の表情を一転、静かに六太を見た。その視線はそのまま瀬戸内の海へと向かう。
見えるのは絶え間なく揺れる波だけ。そこに何を見ようとしたのか、六太は知らない。

「―・・・臣に迎える。ただし、必ず一国だぞ。城だけでも土地だけでも許さぬ」

六太は首をたれ、尚隆の足へと額づいた。
王宮と、荒廃しつくした土地、僅か三十万の民を思い。

このときより、尚隆は延州国の王となり、六太は臣となり半身を得た。



その時を同じく。十二国北東。雁州国光州にて、一人の少女が走っていた。



黄旗が上がり数年。今でも延麒の選定を受ける為に蓬山に昇山する者はいるのだろうか。そう心で呟く。

この荒廃した大地でそんなことを出来る人間は極少数。
幼い心で、香寧は嘲笑する。

この国で昇山できる人間が王に選ばれる訳がない。

生き残って、昇山できる余力のある者は天に選ばれるほど、素晴らしい人間など居るはずがない。
自分はまだその頃に生まれていないが、王に選ばれるような素晴らしい人間など前王の時代に殺戮されたらしい。

香寧が生まれたのは王が居なく、大地がこれ異常ないほど荒れ果てているときだった。
前の延麒が王を見つけることができずに斃れ、ようやく新たな延麒が孵り選定を間近に控えているときだった。

僅かな希望が見えるとはいえ、香寧たち力を持たぬ子供にとっては麒麟が選定に入ろうが、王が選ばれようが日々が死と隣り合わせ。
食べるものもない。口減らしのために力のない子供が殺される。
何度、大人に殺されそうななったろうか。

その度に、命からがら抜け出し、子供同士身を寄せ合い眠った。

今も、生きる為に食べ物を命がけで手に入れ、大人に追われている。


何故、ここまでして生き延びなければならないのだろうか。


日々そんな問いを自分に投げかけるが、答えがない。


「香寧、きょうの分は?」
「・・・なんとか人数分」
「さっすが香寧!おーいみんなー!」

子供達の中で一番身軽な香寧ともう一人の少年が主に食料を集めてくる係。
自分がいなくなれば、仲間達も生き残ることができない。
そのために香寧は、そのような問いを持ちながらも毎日を細々と生きていた。


「・・・そういえば、りゅうきがあがったらしいよ?」
「龍旗?」

身を寄せ合って食べ物を食べていると、もう一人の食料係の少年が言った。

「香寧、りゅうきってなに?」
「・・・龍旗は、新王が選ばれたときにあがる旗」

大人たちの合間を縫って食料を手に入れる香寧は、この年頃にしては聡明であった。そのため、子供達はもっぱら難しい話は香寧に尋ねる。

「王様? 王様が選ばれたの?」
「・・・のはずだけど。・・・しばらくしたら即位式で王旗もあがるんじゃない」

王が選ばれても、自分たちの生活は変わりはしない。

何故か漠然とそう思った。
子供達は王が立ったことにはしゃいでいるが、とりあえず確実なことは妖魔が王都周辺ではでなくなる。

国が富むのは大変なことだといわれている。王が短命ならば、すぐに幸せは終わる。

(・・・とりあえず、3年もってくれなさそう皆で南に行こう。奏南国は百年近く続いているっていうし)

未来に夢を馳せる周囲とは関係なしに、香寧はそう考えていた。

(海沿いに行けば奏南国。南は冬も暖かいと聞く)

周りとは違った未来を馳せる香寧の予想を裏切り、雁州国はそれから後
20年は平和な治世が続いた。

その間に子供達の集まりは自然とわかれていき、香寧は剣を覚え冬器を手に傭兵家業などを営み、生活を紡いでいった。


大化元年
延王尚隆即位。香寧は光州で子供達を身を寄せ合っていた。


大化二十一年
元州に乱が起こる。

そこで、香寧は自分の生き方を180度変える者と出会う。



**

十二国記書きたい病です。読みたい病でもあります。
すごく小野主上の書き方がすきなのですが、私には無理です・・・。
書くならできるだけ原作の雰囲気に忠実に行きたいのですが・・・。

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